【注意】地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その25)

【保健師活動】避難所での食中毒予防(生活者編)
①食中毒菌をつけない
②食中毒菌を増やさない
③食中毒菌を殺菌する

避難所での食中毒予防の注意点(生活者編)

上の画像をクリックすると、pdfが開き、印刷可能です。ご活用ください。

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避難所に置かれた消毒剤とウェットティッシュ(イメージ写真)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、【保健師活動】避難所での食中毒予防(生活者編)について、元神奈川県食品衛生監視員の小池剛氏・赤堀正光氏のご協力を得て、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

4月なかばに私は、能登半島地震被災地を訪れました。

そのひとつの自治体では、セントラルキッチン方式と呼ばれる調理場所がありました。

避難所や在宅避難者向けの夕食用に、1,000食を超える数を朝7時前からつくっていました。

気温が上がってくる5月以降、食中毒予防への注意が大切になります。

避難所の生活者の視点で、食中毒予防を考えてみます。

1 食中毒菌をつけない
避難所に置かれた消毒剤とウェットティッシュ(イメージ写真)

食べる前に、手指をよく洗浄・消毒しましょう。

手指からの汚染に注意が必要です。

手指についた食中毒菌が食品を汚染し、食中毒を起こす事例は、平時でも多く発生しています。

避難所や避難生活で食事をするときは、自分の手指に食中毒菌がついているかもしれないと考え、行動することが大切です。

断水で流水による手洗いができない場合、最初にキッチンペーパーなどをペットボトル水で濡らして、手の汚れを拭き取ります。

手指を拭き取るときは、手の甲、指の間、指先も丁寧に拭き取りましょう。

そのあと、消毒用エタノールやベンザルコニウム塩化物液、除菌用ウェットティッシュなどを使い、手指を消毒します。 

特に、ノロウイルスなど消化器系の感染症が発生している避難所では、除菌用ウェットティッシュを持ち歩き、出入り口やトイレのドアの開閉のときに、ウェットティッシュの上からドアノブや手すりを触るようにすると、感染症予防につながります。

また、共用部に触れたあと、除菌用ウェットティッシュで手指を拭き取る習慣にしてもいいでしょう。

2 食中毒菌を増やさない
避難所に貼られた「食べ残しは放置しない」(イメージ写真)

避難所で配られた弁当やおにぎりなど、できるだけ早く食べましょう。

弁当やおにぎりなどを避難所内で保管できる目安は、概ね2時間です。

配られてから2時間が過ぎた弁当類は、食中毒のリスクが高まります。

冷蔵庫があれば、冷蔵保管を心がけましょう。

食品中で細菌が増えていても、その食品は、見た目や味、ニオイに変化がないかもしれません。

人の五感では判断ができません。

配られた加工食品に賞味期限・消費期限の表示がある場合、期限の過ぎた食品は廃棄しましょう。

(ウェルシュ菌による食中毒例)

ウェルシュ菌は、人や動物の腸管、土壌、水中など自然界に広くいて、酸素が少ない環境を好む細菌です。

肉類、魚介類、野菜、煮物、煮物を使用した弁当や、給食のカレー・シチュー・スープ・麺つゆなど、大量調理後の室温での放冷の際に増えるのが、ウェルシュ菌です。

過去に、公的施設の給食を原因とする、ウェルシュ菌による集団食中毒事例がありました。

かぼちゃのそぼろ煮が原因と考えられました。

調理終了後、2時間20分後に食べた400人以上が、下痢、腹痛、悪寒などの症状になりました。

※厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、「調理後の食品は、調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい」とあります。

3 食中毒菌を殺菌する

大量調理して翌日も食べる場合、残った調理品を急速に冷やして10℃以下で保管し、翌日は十分に加熱してから食べましょう。

大鍋でつくったカレー・シチューなどは、大鍋で保管しないで、小さな容器に小分けにして保管します。

大鍋でそのまま保管すると、ウェルシュ菌が増えて食中毒が起こる可能性が高くなります。

 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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