【注意】地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その26)

【保健師活動】避難所・避難生活の熱中症対策
①温度・湿度測定
②エアコン・空調機のある生活スペースで過ごす
③涼み処の設置
④熱中症の早期発見・対処

避難所・避難生活の熱中症対策

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避難所に置かれた冷房機(2018年、西日本豪雨被災地)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、【保健師活動】避難所・避難生活の熱中症対策について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

4月なかばに私は、能登半島地震被災地を訪れました。

空調機のない体育館の避難所で、温度を測定しました。

約80人の生活者のかたがいました。

外気温が22℃のとき、体育館の中央で24.5℃ありました。

サーモグラフィ画像で確認すると、体育館西側の大部分を占めるガラス面内側で34.5℃、天井内側で30℃の値でした。

太陽が直接あたり、温度の上昇に影響を与えていたと考えました。

今後、25~30℃以上になる5月以降、熱中症対応が急務だと感じました。

【熱中症とは】

高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態をさします。

屋外だけではなく室内で何もしていないときでも発症し、救急搬送されたり、場合によっては死亡したりすることがあります。

1 温度・湿度測定

温度・湿度計を避難所に1カ所以上、設置しましょう。

避難所の温度・湿度計(2019年、令和元年台風19号被災地)

設置する高さは、床上75~150cmです。

能登半島地震被災自治体の避難所運営部署に、次のとおり選択肢としてご提案しました。

①体育館の、入り口近く、中央、体育館の奥の3カ所に温度・湿度計を置くこと。

②午前10時、午後2時の1日2回、避難所内の温度・湿度を測定して、その記録をつけること。

温度28℃超のときは、熱中症要注意である。

温度・湿度計は、壁付け、あるいはテーブルの上に置いてもいいでしょう。

28℃を超えたときは、熱中症への注意を呼びかけるアナウンスをするといいでしょう。

ご提案のあと、各避難所に温度・湿度計(二酸化炭素測定付き)が配置されました。

【建築物衛生法の空気環境基準】

床面積3,000m2以上の事務所や店舗などは、建築物衛生法の特定用途に該当し、空気環境基準が適用されています。

空気環境基準の抜粋は、次のとおりです。

温度 18~28℃

湿度 40~70%

【熱中症予防の暑さ指数】

熱中症予防に使用する「暑さ指数(WBGT)」があります。

写真のような湿球黒球温度計(熱中症計)で測定します。

湿球黒球温度計(熱中症計)イメージ写真

屋外、室内、ともに測定可能です。

単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されます。

その値は、気温とは異なります。

暑さ指数(WBGT)は、人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標です。

人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標になります。

【日常生活での暑さ指数】

危険(31以上)
高齢者は安静状態でも発生する危険性が大きい。涼しい室内に移動する。

厳重警戒(28以上31未満)
外出時は炎天下を避ける。室内で室温の上昇に注意する。

警戒(25以上28未満)
運動や激しい作業をするときは定期的に十分に休息を取り入れる。

注意(25未満)
一般に危険性は少ない。激しい運動や重労働のときには発生する危険性がある。

【環境省のサイト】

熱中症予防情報サイトのページでは、①熱中症警戒アラート等のメール配信サービス(無料)、②暑さ指数メール配信サービス(無料)の案内があります。

2 エアコン・空調機のある生活スペースで過ごす

夏季の高温多湿なときは、可能なかぎり、エアコン・空調機のある生活スペースで過ごしましょう。

避難所に設置された冷房機(2019年、西日本豪雨被災地)

室内温度を下げるには、エアコンや空調機を使う必要があります。

これまでの夏季の避難所の体育館では、配電工事のあと床置きの冷房機が設置されました。

2018年の西日本豪雨被災地の避難所では、体育館の壁の片側に6~7台、計12~14台が置かれて、夏季の冷房がされていました。

体育館では、壁から中央付近まで距離があり、生活スペースの仕切りなどの遮蔽物もあり、冷気が中央付近まで届きにくい状況がありました。

7月下旬の現場測定では、冷房機近くと体育館中央で4℃の温度差がありました。

こうした状況を、温度測定で早期に発見して、①カーテン類の仕切りを昼間に上げる、②扇風機やサーキュレーターで空気の淀みをなくすなどの対処を検討します。

2016年の熊本地震被災地では、5月なかば、気温が上昇する時期に、体育施設の避難スペースにエアコン設置が進められました。

3 涼み処の設置

屋外で活動した人や熱中症ぎみの人が体を冷やすための、冷房機や扇風機を置いた涼み処をつくりましょう。

避難所に設けられた涼み処(2018年、西日本豪雨被災地)

2018年の西日本豪雨被災地の避難所では、35℃以上の猛暑日が多いなか、涼み処が設けられていました。

連日の猛暑のなか、自宅の片づけ作業がつづいていたときです。

体育館を入ってすぐの場所に、涼み処がありました。

テレビに向かい、パイプ椅子が5個並びます。

テレビの脇に床置型エアコンと扇風機が置かれ、外から帰った人は涼をとることができました。

※新型コロナウイルス感染症など、呼吸器系感染症の流行時には、状況により、扇風機やサーキュレーターの風を人に直接あてないことが大切です。

新型コロナの感染拡大時の室内クラスター事例で、ウイルスがサーキュレーターの風にのって、感染が広がったことがありました。

4 熱中症の早期発見・対処

まわりの人と声をかけあい、熱中症の早期発見・対処をすることが大切です。

気化熱を利用すると、涼しさを感じることができます。

濡れタオルを首にまくのが一例です。

【熱中症の症状と対処】

(軽度)
めまい、立ちくらみ、筋肉痛、汗がとまらない

(対処)
①涼しい場所へ:エアコンの効く室内へ
②体を冷やす:首、脇の下、足のつけ根
③水分補給:経口補水液、スポーツドリンク、食塩水

(中度)
頭痛、吐き気、体がだるい(倦怠感)、虚脱感

(対処)
①医師・保健師・看護師のチェック
②涼しい場所へ:エアコンの効く室内へ
③服をゆるめ体を冷やす:首、脇の下、足のつけ根
④水分補給:経口補水液、スポーツドリンク、食塩水

(重度)
意識がない、けいれん、高い体温、呼びかけに対し返事がおかしい、まっすぐに歩けない・走れない

(対処)
①救急車を呼ぶ
②涼しい場所へ:エアコンの効く室内へ
③服をゆるめ体を冷やす:首、脇の下、足のつけ根

【令和元年台風15号の大規模停電時の熱中症】

令和元年9月、台風15号被災地の千葉県で起きた大規模停電のとき、停電1週間を経過した八街市を歩きました。

電気が復旧した地区の落花生販売店の20歳代の女性は、振り返って、祖母と会話をしていて言葉のはっきりしない様子から、祖母の変調に気がついたと話していました。

「祖母が熱中症で意識がもうろうとなったので、家族で祖母の体を濡れタオルで拭きました。すると、意識がはっきり戻りました」

まわりが早く気づいて、対処をすることが大切なのが伝わってきました。

 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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