【注意】地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その23)

【保健師活動】避難所の衛生対策の疑問点に答える
①殺菌剤の空間噴霧の可否
②段ボールベッドの耐久性
③炊き出し等食品の保管時間

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段ボールベッドの一例(イメージ写真)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、【保健師活動】避難所の衛生対策の疑問点に答えるについて、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

食品衛生関係の回答は、元神奈川県食品衛生監視員の小池剛氏のご協力を得ました。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

今回と次回の2回に分けて、全国保健師長会からお問い合わせがありました、能登半島地震関連の避難所の衛生対策の疑問点について、ご回答します。

1 殺菌剤の空間噴霧の可否

【質問】

次亜塩素酸の空間噴霧の可否をお聞きします。

トイレや支援物資を保管する廊下に加湿器のような形で噴霧していて、床が滑りやすい状況でした。
 
これまで巡回した医療チームからの指示との話でした。

トイレや食品、衛生用品のある場所は、カビ防止の観点からも湿度を上げないよう提案しました。

【回答】

個人的には、人がいる空間、人が使用する空間での殺菌剤の空間噴霧は推奨しません。

参考の別ページは、次のとおりです。

【保健師活動】化学物質過敏症を理解する

【避難所の事例】③空間殺菌剤 でふれています。

<別ページの掲載内容>

熊本地震被災地の避難所で、目薬をひとまわり大きくしたくらいの、空中殺菌のための二酸化塩素剤を見ました。

顔を近づけると、目の粘膜に刺激がありました。

令和元年台風19号被災地の避難所では、卓上型の空間殺菌用の装置が置かれていました。

2021年の厚生労働省の事務連絡で、新型コロナウイルスに対する消毒について、こう記述があります。

< 世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに対する消毒に関する見解の中で、「室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されない」としており、このような国際的な知見に基づき、健康影響のおそれのある消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしない >

2 段ボールベッドの耐久性 
段ボールベッド(イメージ写真)

【質問】

石川県内の避難所で、2カ月以上使用している段ボールベッドが崩れて、使用者が骨折した事例があったと情報がありました。

巡回先で確認しても、崩れるほどの劣化は見られませんでしたが、衣類や調味料等生活用品がベッド上に置いて使用している様子もあり、今後の耐久性が気になりました。

巡回した避難所の一部で、段ボールベッドの部品が固定されておらず、何度か使用するうちに、土台の段ボール箱がずれてしまう様子がありました。

転倒や転落のリスクもあると思うので、部品同士を固定する等ができるといいと思いました。

段ボールベットの種類によっては、土台ごとに固定されておらず、ずれてしまっている方がいました。

高齢者等は、一人で直すことが難しいと思われます。

【回答】

今回の被災地で見られた段ボールベッドは、12種類以上あったといわれています。

製造会社により段ボールの材質や形状が異なり、形状の維持や耐久性が違ってくると想像されます。

強固な形状の種類がある一方、使用状況により接合部のずれが生じる種類があるのかもしれません。

湿気により、強度がさがってくる可能性もあると思います。

段ボールベッドの弱点は、湿気をもつと強度がさがり、変形しやすくなることです。

実際に、2016年の熊本地震被災地の熊本市の避難所で使われていた段ボール仕切りが、梅雨に湿気をもって、変形して傾いている光景を見ました。

2018年の西日本豪雨被災地の避難所では、避難所運営者が「段ボールベッドを2カ月使うと、段ボールがかなり傷むので、退出時に段ボールベッド希望の人には新しい物を渡している」と話していました。

段ボールベッドの種類によっては、経時的に耐久性が下がるものがあるようですね。

2カ月程度以上の経過時に、段ボールベッドの傷み具合を点検してもいいかもしれません。

一定強度・適切なサイズ等が保証される段ボールベッドの標準化・規格化の浸透が今後の課題だと思います。

3 炊き出し等食品の保管時間
食品類の保管場所の一例

【質問】

避難所内の個人スペースに炊き出しの汁物やおにぎりを保存している方がいて、食中毒防止の声かけをしていました。

被災自治体の地域で、調理施設に飲食業の方を集めて食事を作り避難所に配送する「セントラルキッチン」方式を採用し、各避難所で行う炊き出しを、集約化する動きがありました。

これまで、各避難所で自主的に行ってきた炊き出しと比較して、調理から食べるまでの時間が長くなると思います。

食中毒防止の観点から、どのくらいの時間で食べきるのが安全なのか、目安の時間が示せれば、住民の方に説得力のある提案ができて良いと思いました。

【回答】

調理完了後、2時間以内に食べるのが目安です。

調理完了後すぐに避難所に搬入された場合、2時間以内に食べるのが目安になります。

食品類の搬入後の保管方法は、たとえば、10℃以下もしくは60℃以上で保管するとし、2時間以上経過したものは廃棄するのが望ましいとされています。

市販品以外で、具体的に、昼食用として避難所以外の場所で調理され、正確な調理時刻がわからない食品については、昼に搬入後すぐに食べるのが原則です。

なお、コンビニ弁当は、自主検査により、保管方法などを守ったときの消費期限が設定され、いつまでに食べるかがはっきりしていると考えられます。

参考となる別ページは、次のとおりです。

【避難所・避難生活の衛生面の注意】

①食事(食べ残しは捨てる)

【台湾東部の地震】

2024(令和6)年4月3日に、台湾東部で震度6強の地震がありました。

お見舞い申しあげます。

日本と同様な体育館の避難所では、テーブルに青菜の野菜が入っている弁当が積まれていました。

半袖で過ごせるくらいの気温のなかで、食中毒予防のために、できるかぎり早く食べることが大切だと感じました。

 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

上の画像をクリックすると、pdfが開きます。

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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