【注意】地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その22)

【保健師活動】避難所でのペット対応の注意点
①ペット間の感染防止
②ペットによる危害防止
③関係機関・団体との協働

避難所でのペット対応の注意点

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避難所内のペット用ケージ(2019年、令和元年台風19号被災地)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、元神奈川県食品衛生監視員の小池剛氏・赤堀正光氏のご協力を得て、【保健師活動】避難所でのペット対応の注意点について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

※避難所でのペット対応は、ペットについての課題を発見し、その課題をいち早く、避難所の運営者・支援者等で共有することが重要です。

1 ペット間の感染防止

(1)避難所に病気のペットを受け入れない

動物救援本部(2011年、東日本大震災被災地)

感染症にり患したペットが避難所に受け入れると、避難所内で他のペットに感染が広がる可能性が高くなります。

獣医師による診察を行い、健康状態に問題のないペットを受け入れるようにします。

事情があり、病気のペットを受け入れる場合、他のペットと隔離する必要があります。

【保健師の視点】

ペットの受け入れに、獣医師による健康チェックの体制が整っているかを確認します。

体制が整っていない場合、避難所運営者などと連携して体制整備を急ぎましょう。

(2)避難所でペットが発症したとき

ペットの感染症は、人に感染しない疾患であっても、ペット間の感染で重篤な症状を引き起こすことがあります。

ペットが発症したときは、できるだけ早く獣医師の診察を受けましょう。

ペットの感染症が疑われる場合、対応可能な施設へ移すか、避難所内に隔離場所を設けて他のペットと離します。

隔離場所は、人の出入りを制限し、特定の人だけが立ち入りできるようにして、感染拡大を防止します。

【保健師の視点】

避難所巡回では、ペットの同行避難者から、ペットの健康状態について聞き取りします。

ペットが風邪様の呼吸器系症状や下痢様の消化器系症状がある場合、その情報を獣医師へ伝えましょう。

2 ペットによる危害防止

(1)危害・逃走の防止

ペットの受け入れ場所(2019年、令和元年台風19号被災地)
避難所内のペット用ケージ(2019年、令和元年台風19号被災地)

被災したペットは、人と同様に強い心的ストレスを受けて情緒が不安定になっています。

ペットにとって、避難所は初めて訪れた未知の場所であり、不安が増大します。

このため、人や他の動物に攻撃的になったり、パニックを起こしたりしやすくなります。

避難所では、ケージに入れて、人がペットに咬まれる事故やペット間の闘争の発生を防止します。

ケージに入れることは、ペットの逃走防止にも役立ちます。

ケージに入れられないときは、咬む事故を防ぐため、大型犬などは口輪を使用しましょう。

【保健師の視点】

避難所巡回で、ペットの状況を観察します。

飼い主以外の人との距離が近く、咬む事故が起こる可能性を感じたり、引綱だけで逃走のおそれがあると思ったりしたときは、避難所運営者に伝えましょう。

(2)ペットの管理体制

避難所内の受け入れ場所は、工夫が必要です。

たとえば、同じ部屋に犬と猫とを入れるのは、猫にとって大きなストレスになるので、避けましょう。

ペットの管理は、基本的に飼い主が行います。

飼い主が集まって自主管理組織を作ると、飼い主1人ひとりの負担が軽減します。

自主管理組織の活動の一例は、給餌、糞尿・飼育施設の清掃、ペットの健康チェック、運動を分担して、餌や消耗品などの在庫管理を行います。

避難所内でのペットの飼い方(飼養管理)のルールを作り、作業を標準化するといいでしょう。

【保健師の視点】

ペットについての相談を受けたときは、その情報を避難所運営者に伝えましょう。

3 関係機関・団体との協働

(1)獣医師会等との協働

避難所への受け入れ時のペットの健康診断、受け入れ中のペットの病気などの対応は、獣医師の協力を得る必要があります。

近隣の獣医療機関や地元の獣医師会と連携を図り、避難所内のペットの健康診断や診療を行う体制を構築します。

避難所に入りきれないペットの受け入れ先は、公的施設の動物愛護センターや獣医師会などと連携して、確保しておくことが大切です。

(2)動物愛護ボランティア団体との協働

避難所内の飼い主だけで世話することが難しい場合、動物愛護団体などと連携し、協力を得ることも必要です。

(3)餌・消耗品などのペット関連用品

ペットの餌・飲み水、排泄物を処理するための消耗品、ペットを入れるケージなどの物品が必要です。

避難所運営者、獣医師会、動物愛護ボランティア団体などと連携して、物品を確保することが大切です。

【保健師の視点】

避難所巡回で、ペットについての情報を収集し、避難所運営者や関係者と情報共有しましょう。

 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

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【ご案内】

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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