【注意】地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その21)

【保健師活動】化学物質過敏症を理解する
①ニオイ(香り)で困る人がいる
②集団生活で芳香剤・殺虫剤等の使用は慎重に検討
③換気・空気清浄機の活用

化学物質過敏症を理解する

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避難所の洗濯機・乾燥機(2019年、令和元年台風19号被災地)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、【保健師活動】化学物質過敏症を理解するについて、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

【化学物質過敏症とは】

東京都保健医療局のホームページでは、化学物質過敏症がこう説明されています。

<厚生省(当時)の厚生科学研究「化学物質過敏症に関する研究(主任研究者:石川哲北里大学医学部長(当時))」(平成8年度)において、

「最初にある程度の量の化学物質に曝露されるか、あるいは低濃度の化学物質に長期間反復曝露されて、一旦過敏状態になると、その後極めて微量の同系統の化学物質に対しても過敏症状を来たす者があり、化学物質過敏症と呼ばれている。

化学物質との因果関係や発生機序については未解明な部分が多く、今後の研究の進展が期待される。」との見解が示されています。>

私は、記述にある石川哲氏のご講演を聞いたことがあります。

石川氏は、人の体をコップにたとえて、化学物質が体の中に入りコップがあふれたとき、頭痛、めまい、呼吸困難など様々な症状が出ると説明されていました。

いったん症状が出ると、そのあと微量の化学物質にも反応してしまう可能性があると理解しました。

別の機会に、坂部貢先生(千葉大学特任教授)の話をお聞きしました。

話を理解すると、最近の研究報告では、日本国内の化学物質過敏症の有病率が7.5%で、自覚症状がない人も含めて約13人に1人になります。

誰でもなりうるとされています。

【化学物質過敏症の症状】

東京都北区のホームページでは、こう紹介されています。

この症状は一例です。このほかにも、さまざまな症状があります。

・頭痛、吐き気

・鼻炎

・疲労感、不眠

・皮膚のかゆみ、湿疹

・動悸、けいれん

【避難所の事例】

①整髪料に反応

熊本地震のとき、被災地の熊本市保健所に協力して避難所の衛生対策活動で巡回しました。

そのとき、保健所の環監がこう話してくれました。

「ある避難所で、整髪料に反応して体調がわるくなり、救急搬送されたかたがいました」

化学物質過敏症は、外見上、症状が明らかに見えるわけではありません。

避難所のなかに一定の人数の化学物質過敏症のかたがいると考えるのが自然だと思っています。

②虫よけプレート

2年前の夏に、私が防災衛生アドバイザーをしている自治体の避難所宿泊訓練を見学したときでした。

体育館の床近くの窓に、虫よけプレートが掛けられていました。

成分は、ピレスロイド剤です。

私が顔を近づけると、目の粘膜に刺激がありました。

虫の忌避成分の化学物質が揮発しているからです。

避難所訓練の担当部長に、「参加者のなかに症状が出る可能性もあります。虫よけには、防虫網を貼る対処法があります」と説明しました。

担当部長から、「確かに、そのとおりです」と返事がありました。

③空間殺菌剤

前記の熊本地震被災地の避難所で、目薬をひとまわり大きくしたくらいの、空中殺菌のための二酸化塩素剤を見ました。

顔を近づけると、目の粘膜に刺激がありました。

令和元年台風19号被災地の避難所では、卓上型の空間殺菌用の装置が置かれていました。

2021年の厚生労働省の事務連絡で、新型コロナウイルスに対する消毒について、こう記述があります。

< 世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスに対する消毒に関する見解の中で、「室内空間で日常的に物品等の表面に対する消毒剤の(空間)噴霧や燻蒸をすることは推奨されない」としており、このような国際的な知見に基づき、健康影響のおそれのある消毒剤や、その他ウイルスの量を減少させる物質について、人の眼や皮膚に付着したり、吸い込むおそれのある場所での空間噴霧をおすすめしない >

1 ニオイ(香り)で困る人がいる

ポスター類を避難所内に掲示して、避難者の皆様に理解をしていただくことが大切だと思います。

上の画像をクリックすると、pdfが開きます。

国の、消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省の連名のポスターで「知ってください その香り困っている人もいます」が発行されています。

ポスターには、こう記述があります。

<柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がするという相談があります。自分にとって快適な香りでも、困っている人もいることをご理解ください。>

<香り付き製品の使用に当たっては、周囲の方にもご配慮下さい。>

最近の事例で、保健所・環境衛生監視員から、こんな相談がありました。

<小学校のお母さんからの相談です。子どもが給食当番で白衣を来たら、白衣から甘いニオイがして気分がわるくなったって言うのです。どうも、柔軟剤のニオイらしいです。そんなことは、あるのでしょうか?>

ニオイの問題は、ニオイの化学物質の問題と言ってもいいでしょう。

2 集団生活で芳香剤・殺虫剤等の使用は慎重に検討

避難所のなかには、化学物質過敏症のかたがいると考えるのが自然だと思います。

芳香剤・殺虫剤など化学物質が揮発・蒸発する可能性のあるものは、集団生活での使用を慎重に検討するのが大切だと思います。

学校体育館の窓に置かれた虫よけプレート

たとえば、これから気温が上がり、虫の発生が見られる時期になると、室内での殺虫剤や蚊取り線香を使う前に、虫の侵入を防ぐための網戸や網戸カーテンの設置、物理的に捕虫するトラップや装置の設置などを検討することが大切だと思います。

化学物質過敏症のかたが、体育館・公民館の和室などの共用スペースで生活することで健康影響が出る場合があります。

石油ストーブの使用では、化石燃料の灯油そのもの、または灯油が燃焼することで空気中に多種類の化学物質が放出される可能性があり、化学物質過敏症のかたの症状に影響するかもしれません。

暖房にエアコンを使用する専用のスペースを確保することが選択肢のひとつです。

そのとき、移動先の場所に、化学物質の影響がないかを確認する必要があります。

たとえば、学校の教室であれば、絵の具、習字の墨、床のワックス塗装などの影響があるかもしれません。

教室が化学物質過敏症のかたの使用が可能かは、事前に、使用予定者のかたに在室してもらい、体の変調がないかを確認してもらうことが必要です。

3 換気・空気清浄機の活用 

1~2時間に1回程度、5~10分間程度の対面の窓開け換気をすることで、室内の化学物質濃度を下げることができます。

空気清浄機は、化学物質を吸着するための活性炭フィルターをもつタイプが、室内の化学物質低減に有効です。

サーキュレーターと空気清浄機(イメージ写真)

ただし、新品は、使いはじめにプラスチックの可塑剤が揮発することがありますので、箱から出して1~2週間以上、経過した製品を使うのが望ましいでしょう。

 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

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【ご案内】

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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