【注意】冬季の地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その16)

【保健師活動】避難所での食中毒予防の注意点
①食品期限の確認と保管場所・温度
②食品取扱い専用の場所を確保
③調理作業者の健康チェック

避難所での食中毒予防の注意点

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避難所の食品(弁当)の保管場所(2018年撮影)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、【保健師活動】避難所での食中毒予防の注意点について、元神奈川県食品衛生監視員の小池剛氏・赤堀正光氏のご協力を得て、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

1 食品期限の確認と保管場所・温度
避難所の食品(弁当)の保管場所(2018年撮影)
消費期限と保存温度の表示の一例(イメージ写真)
消費期限と保存方法の表示の一例(イメージ写真)

①食品・食材の受け入れ時の注意点

搬入時に食品・食材の外観などをチェックし、変色や包装の破れによる液漏れなどの異常のあるものは思い切って廃棄します。

②外箱に賞味期限を大きく書いて期限の迫った食品から使用

食品の賞味期限や消費期限を確認し外箱などに大書しておき、使用にあたっては期限の迫った食品から使用します。

消費期限のある食品は必ず期限内に使い切りましょう。

③保管場所は直射日光の当たらない清浄な場所を選択

保管場所は、直射日光が当たらず、塵埃などのない出来るだけ清浄な場所を選びます。

教室を利用する場合は、日の当たらない場所に置き、塵埃による汚染を防ぐためブルーシートなどを掛けるようにします。

④冷蔵食品は10度以下、冷凍食品は-15度以下で保管

冷蔵食品の保管の目安は10度以下、冷凍食品は-15度以下が目安となります。

生の食肉や鮮魚の場合は5度以下での保管が目安になります。

停電などで冷蔵・冷凍設備の使用が出来ない場合は、冷凍・冷蔵用運搬車を利用した保管を検討します。

冷蔵・冷凍施設の利用が困難な場合は、冷蔵や冷凍での保管が必要な食品を優先的に使用して、要冷蔵品や要冷凍食品を避難所内で長時間保管することがないようにしましょう。

⑤期限表示と保管温度・場所は組み合わせて考えます

食品に記載された消費期限・賞味期限と保存温度はセットと考え、保管の期限、保管温度、保管場所に注意しましょう。

2 食品取扱い専用の場所を確保
避難所で提供される食品(イメージ写真)

①弁当・調理パンなどの食品を配布するときの注意点

加工調理品を避難所で配布する場合は、賞味期限・消費期限を確認し、期限の過ぎた食品は廃棄するようにします。

②調理を行う際は専用の調理場所を確保

食品・食材を調理する場合は、調理専用の場所を確保し、外部からの汚染が調理場所へ入ることをできるだけ防止します。

そのため調理場所への立ち入りは調理関係者に限定することが必要です。

③食品・食材の調理場所へ搬入する際の注意点

食品・食材を調理場所に入れる場合は外装の汚れなどをチェックし汚れを除いてから調理場所に入れるようにします。

④調理を始める場合は、まず手洗いから

調理する場合は、手指の洗浄・消毒を十分に行い、食品は清潔な環境で取り扱うようにします。

避難所が断水していて十分な手洗いが出来ない場合は、除菌用ウェットティッシュなどを使って手指をよく拭き、使い捨て手袋などを活用して手指から食品への汚染が生じないよう努めます。

⑤調理後の調理場所の清掃

調理後は調理場所の清掃を十分に行い、食品の残滓などは適切に処分、廃棄し、常に調理場所を清潔に保つようにします。

避難所が断水していて食後の食器類の洗浄が十分行えない場合は、使い捨て容器の使用やラップ等の活用を工夫して行います。

⑥加熱調理品の保管上の注意

加熱食品(カレー、煮物など)は湯煎し60度以上で保管するようにします。

加熱食品を翌日使用する場合は、加熱食品を10度以下に急冷してから保管し喫食前に十分加熱して提供します。

3 調理作業者の健康チェック
□ 下痢をしている者はいない。

□ 発熱、腹痛、嘔吐をしている者はいない。


□ 本人もしくは同居者が法定伝染病に感染している又はその疑いがある者はいない。


□ 本人が法定伝染病の保菌者である者はいない。


□ 食中毒の原因となる疾患(化膿性疾患等)に感染している者はいない。
健康チェック表(例:文部科学省「学校給食従事者健康点検表」)

①調理作業者の健康チェック

食品を取り扱う作業者は、毎日、健康チェックを行い自分の健康状態を把握します。

下痢やおう吐といった消化器症状がある場合や発熱、咳、鼻水などの風邪類似の症状がある場合は、症状がなくなり48時間経過するまでは調理作業は行わないようにします。

ノロウイルスによる症状ではごく軽い胃部の不快感だけの場合もあり、セルフチェックの実施に当たっては、自分の体調のちょっとした変化にも十分気をつけ、少しでも気になった場合は調理作業を外れることが重要です。

②調理作業者の服装

調理作業にあたっては、マスク、手袋、帽子などを着用し食品の異物混入も含めた汚染防止に努めます。

※ 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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