【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・シャワーの衛生管理

【環監の視点】
公衆浴場施設(銭湯)では、シャワーホースはほとんどなく、浴室内の配管にヘッド部分を接続した構造を多く見かけます。
ヘッド部分は、滞留水が残り、菌検出のリスクがある場所の一つと考えました。
検討の結果、月に1回程度、シャワーヘッドの先端を、プラスドライバーを使って分解し、ブラシでブラッシングしたあと、バケツにつくった遊離残留塩素濃度10~50mg/L程度の液に、約1時間つけ置きする方法を助言しました。

シャワーヘッド

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年12月下旬、6月に開催した「レジオネラ症対策を現場で学ぶ、基本とスキル習得講座・実践編2日間コース(会場開催、公衆浴場施設の現場見学付)」の受講者のかたから質問がありました。

検査法やシャワー水の衛生管理についてのご質問です。

環監業務に役立つ内容ですので、ご紹介いたします。

【培養法による数値】

(質問)

「文京区における公衆浴場等シャワー水のレジオネラ症発生防止対策の成果」の説明で、レジオネラ属菌の検出数値について、公衆浴場から「1 CFU/100mL」という記載がありました。

レジオネラ属菌について、私が所属した自治体では「10 CFU/100mL 未満」であれば「検出されないこと」としています。

「1CFU/100mL」という数値は、どのような検査をしているのでしょうか。

(回答)

2009(平成21)年当時、東京都の健康安全研究センター(旧衛生研究所)に検査依頼しました。

センターの検査方法・検査精度により、1 CFU/100mL まで検出可能と聞きました。

ちなみに、文京区公衆浴場法施行条例の「シャワー水からレジオネラ属菌は、検出されないこと」は、培養法で1 CFU/100mL 以上で検出されたときも不適と考えました。

この考え方は、シャワー使用の際に、必ずエアロゾルの発生があり、菌を含むエアロゾルがあれば、容易に人の口から吸い込まれてしまうこと。

国立感染症研究所の倉文明先生のご意見で、培養法検査結果が出るまで1週間かかり、結果が出るまでに菌が増えて、感染リスクが高まっている可能性があることが背景にあります。

【シャワーヘッドの衛生管理】

(質問)

シャワーヘッドの消毒について、「週1回通常の濃度の5~10倍の塩素でつけ置き消毒をするとよい」というお話がありました。

この通常の濃度というのはどの濃度をさしていたのか教えていただけたらと思います。

厚生労働省のホームページにある「入浴施設の衛生管理の手引き」には、「遊離残留塩素濃度10~50㎎/Lの液に1~3時間つけ置いて消毒」という記載があるので、この濃度になるようにという意味でしたでしょうか。

(回答)

月に1回程度の、シャワーヘッドの分解、内部のブラッシング、消毒液に漬け置きを助言してきました。

私の所属した保健所では、公衆浴場施設(銭湯)が可能な方法を検討しました。

公衆浴場施設(銭湯)では、シャワーホースはほとんどなく、浴室内の配管にヘッド部分を接続した構造を多く見かけます。

ヘッド部分は、滞留水が残り、菌検出のリスクがある場所の一つと考えました。

検討の結果、月に1回程度、シャワーヘッドの先端をプラスドライバーを使って分解し、ブラシでブラッシングしたあと、バケツにつくった遊離残留塩素濃度10~50mg/L程度の液に、約1時間つけ置きする方法を助言しました。

シャワー系統の配管の洗浄について、文京区では調節箱(釜で沸かした湯と地下水を混ぜて40~45℃くらいのシャワー水・蛇口の湯をつくる鋼鉄製・ステンレス製の箱)に自動塩素注入装置があり、常時シャワー末端で 0.4mg/L以上の遊離残留塩素濃度があります。

したがって、月に1~2回の高温消毒や高濃度塩素消毒は、特段、必要がないと考えました。

なお、循環浴槽の配管洗浄と同様に、年に1回程度、シャワー系統の配管洗浄を助言していました。

当初は、60℃以上の高温消毒をする施設がありました。

その後、高温による配管の傷み、配管接合部の接着剤の剥離の可能性があることから、50~100mg/L 程度の高濃度塩素消毒による配管洗浄が適切ではないかと考えて、助言しました。

シャワー系統の配管洗浄について、過酸化水素や過炭酸ナトリウムの洗浄剤を使い実施する場合があります。

生物膜(バイオフィルム)の堆積が顕著だと考えられる場合です。

そのとき、事前に、配管の、材質や使用年数など、発泡系の洗浄剤の使用に耐えられるか、配管の損傷の可能性がないかを、配管洗浄の専門業者と十分に相談する必要があるでしょう。

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【シャワーの衛生管理】

シャワーの衛生管理の詳細な内容は、厚生労働省のレジオネラ対策のページの「衛生管理要領・マニュアル(現行)」の「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」P54に書かれています。

こちらからご覧いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/content/11130500/000961757.pdf

この内容には、私の現場経験から得た提案が入っています。

私が経験した、シャワー水が感染源となったレジオネラ症患者発生事例の対応の詳細は、『レジオネラ症対策のてびき』中臣昌広著、倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)P46~56 にあります。

【給湯系の菌検出時の対応事例】

厚生労働省の平成25年度生活衛生関係技術担当者研修会で、「ホテル給湯系のレジオネラ属菌検出時の対応事例(文京区)」を発表しました。

こちらから資料をご覧いただけます。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/seikatsu-eisei/gijutukensyuukai/dl/h25_08.pdf

【文京区のシャワー水の発表事例】

2012(平成24)年の『第56回生活と環境全国大会』で、「文京区における公衆浴場等シャワー水のレジオネラ症発生防止対策の成果」を発表し、最優秀賞を受賞しました。

こちらから発表抄録をご覧いただけます。

画像をクリックすると、pdfが開きます。

【環監の視点】

公衆浴場施設(銭湯)では、シャワーホースはほとんどなく、浴室内の配管にヘッド部分を接続した構造を多く見かけます。

ヘッド部分は、滞留水が残り、菌検出のリスクがある場所の一つと考えました。

検討の結果、月に1回程度、シャワーヘッドの先端をプラスドライバーを使って分解し、ブラシでブラッシングしたあと、バケツにつくった遊離残留塩素濃度10~50mg/L程度の液に、約1時間つけ置きする方法を助言しました。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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