【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・基礎知識を身につける

レジオネラの基礎知識
①レジオネラ症とは
②レジオネラ症に発症リスクのあるかた
③レジオネラ症の起源
④レジオネラ属菌とは
⑤レジオネラ属菌の種類
⑥生物膜とは
⑦なぜレジオネラ属菌は生物膜内で増殖するのか
⑧エアロゾルとは

次のご説明は、自著『レジオネラ症対策のてびき』倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター、500円税別)の内容を基に、作成しています。

【レジオネラの基礎知識】

①レジオネラ症とは

レジオネラ症は、レジオネラ属菌を原因菌として起こる感染症です。

レジオネラ肺炎とポンティアック熱の二つをさします。

レジオネラ肺炎は、高熱、全身倦怠感、筋肉痛、吐き気、下痢、意識障害などがおもな症状です。

症状が重くなれば死に至る可能性があります。

潜伏期間は2~10 日間です。

ポンティアック熱は、発熱、寒気、頭痛など、インフルエンザに似た症状がみられます。

潜伏期間は1~2日間です。

一般に軽症のままであり、数日経てば治ることが多いとされています。

②レジオネラ症に発症リスクのあるかた

高齢者、糖尿病、慢性呼吸器疾患、悪性腫蕩、血液疾患、喫煙者、大量飲酒者、免疫抑制剤使用者、臓器移植後で自己免疫疾患など感染防御能の低下したかたは、発症のリスクが高いとされています。

③レジオネラ症の起源

1976 年に米国フイラデルフィアのホテルで開催された在郷軍人会に参加していた人たちが肺炎になったことから、在郷軍人病といわれました。

英語では「LegionnairesI disease」であり、ここから「レジオネラ症」 と呼ばれるようになりました。

この集団感染事件について、十分な原因の解明はまだなされていません。

しかし、推定では空調機のエアロゾルが原因とされており、屋上に設置されていた冷却塔の冷却水へ、土ぽこりとともにレジオネラ属菌が入ったものであると考えられています。

④レジオネラ属菌とは

レジオネラ属菌は土壌中や池、沼、水たまりなどの環境中において、どこにでもいる常在菌です。

細菌の仲間であり、大きさは数ミクロン(μ)です。

1 ミクロンは1000 分の1mm です。

増殖に適した温度は36℃前後であり、入浴施設の浴槽水やシャワー水の温度に近い温度です。

アメリカやョーロッパにおいて、レジオネラ属菌は冷却塔などの空調設備から検出されることが多く、一方、日本では、公衆浴場や温泉、旅館、ホテル、介護保険施設などといった入浴施設から多く検出されています。

一般に、環境中に常在するレジオネラ属菌が私たち人間にすぐ悪さをするわけではありません。

問題になるのは、構造設備や衛生管理などの問題により入浴施設のなかで菌が増えてしまうことです。

⑤レジオネラ属菌の種類

レジオネラ属菌は、レジオネラ属として分類される細菌の総称です。

属菌のなかにはいろいろな種を含んでいます。

なかでも肺炎を引き起こすのが、レジオネラ・ニューモフィラです。

ニューモフィラは、血清群によってさらに細分化されています。

これまでに複数の群が報告されており、おもにレジオネラ肺炎の原因菌として多く取り沙汰されるのは、レジオネラ・ニューモフイラ1群です。

過去明らかになった原因菌の過半数がこれだといわれています。

⑥生物膜とは

浴室の壁面や配管などにつく「ぬめり」のことです。

生物膜は、バイオフィルムとも呼ばれています。

微生物が作りだした粘液性の物質で形成されています。

浴場などでは水が温かく、入浴者のア力などといった有機物が豊富なことから、消毒やろ過器及び配管等の清掃が不十分な場合、ぬめりが生成されてしまいます。

ぬめりは、細菌が増えてしまった状態です。

浴槽にぬめりがあるということは、そこに細菌が付着しているというわけです。

ただ、すぐにそれで「危険」 なわけではありません。

注意信号だと思ってください。

問題なのは、目でみて確認することができない配管やろ過器の中です。

手で触ることもできません。

したがって、ぬめりができないよう、たとえば、週に1回の配管中の高濃度塩素消毒、年に1回の薬剤による配管洗浄など、つねに予防措置を怠らないことが大切です。

⑦なぜレジオネラ属菌は生物膜内で増殖するのか

ぬめり(生物膜)は、その名が示すとおり、表面には膜ができています。

バリアといってもいいでしょう。

このバリアはやっかいです。

消毒剤の塩素も殺菌のために流す約60℃の湯も、そのバリアで防がれてしまう可能性があります。

生物膜の内側にいる微生物を守っているのです。

ちょうどカンガルーの赤ちゃんが、お母さんカンガルーのお腹の袋のなかで外敵や寒さなどから保護されて育つ姿と似ています。

生物膜のなかのレジオネラ属菌は、こうして保護された膜の内側で増殖を繰り返し、数を増やしていくのです。

⑧エアロゾルとは

レジオネラ属菌は、肺に侵入して病気を引き起こします。

食中毒のように胃や腸に入りこんで病気になるわけではありません。

ミスト状の細かい水滴であるエアロゾルとともに空気中に舞うため、人がそれを吸い込んでしまうことによって発症の可能性があります。

入浴施設の浴室では、浴槽のバイブラ、ジェット水流、足し湯が流れおちる水面、シャワーなどにおいてエアロゾルが発生しています。

こういった場所にレジオネラ属菌が繁殖していれば、ェアロゾルとともに私たちの肺のなかへ運ばれてしまいかねないのです。

【私の視点】

1日1日の衛生管理の積み重ねが、患者発生を防ぎ、菌検出のリスクをさげることにつながります。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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