【環監・保健師入門編】レジオネラ症対策・浴槽水の汚れと泡の関係

【私の視点】
浴槽水に汚れがあり、塩素濃度が高いと、水面に泡が残りやすくなります。
私は、実際の現場で、汚れを含んで透明度が下がった浴槽水の水面で、泡が消えにくかったのを見たことがあります。
その背景にある、配管中の生物膜の存在が考えられれば、高濃度塩素消毒や配管洗浄の実施を検討する時期といえるでしょう。

浴槽(イメージ写真)

2023(令和5)年3月なかば、都内A保健所の入浴施設対象のレジオネラ症対策講習会(オンライン開催)で講師をつとめました。

約30人のかたが参加しました。

保健所ご担当者から、ご感想をいただきました。

「95%以上の人が参考になったと回答する等非常に好評でした。写真等で危険個所を探す等で、受講者の理解や意識向上の意見も見られ、我々としても、好評であったと、自信をもって報告できる講習会開催となりました」

ありがとうございます。うれしく思います。

講習会後半で、レジオネラ症対策について質疑応答がありました。

環監業務に参考になると思いますので、ご紹介します。

【質問1】シャワーの衛生管理

シャワーヘッドについて、節水シャワーヘッドと、通常のシャワーヘッドで菌の増殖の差はあるのでしょうか?

回答

菌が増殖するかは、シャワーヘッドやシャワーホースに滞留水が生じるかになります。

節水シャワー、通常のシャワーの種類に関わらず、使い終わったあとに滞留水があれば、菌検出リスクはゼロとは言えないでしょう。

シャワーのレジオネラ症対策について、ふれます。

私も作成作業に携わった、厚生労働省『入浴施設の衛生管理の手引き』のP54の「シャワー、打たせ湯」のシャワーの管理に詳しく説明されています。

なお、『入浴施設の衛生管理の手引き』pdf版は、厚生労働省ホームページのレジオネラ対策のページからダウンロードすることができます。

1日のシャワーの使い終わりに、水道水を20~30秒程度、流すことがレジオネラ属菌の抑止に有効だと考えています。

水道水を流すことは、二つの利点があります。

①水道水に置き換わることで滞留水の水温を下げることができ、菌の抑止につながると考えます。

②水道水中の消毒用の残留塩素の効果で、菌の抑止につながると考えます。

【質問2】酵素による洗浄方法 

近年、関西方面で酵素による洗浄方法がありますがどうなのでしょうか?

回答

調べた範囲でお答えします。

私が調べた範囲では、酵素による配管洗浄法を見つけることができませんでした。

私自身、酵素を使用する配管洗浄を見たことはありません。

ネット上で、配管洗浄関係のページで、「浴槽水に溶解すると活性酸素を放出する酵素系薬剤です」と表現がありました。

こちらは、調べてみると、正確には「浴槽水に溶解すると活性酸素を放出する酸素系薬剤です」のようです。

酵素は、家庭用の洗濯洗剤に含まれているものがあります。

酵素の一例は、洗剤主成分の界面活性剤の作用を補助し、タンパク質の汚れを分解して、汚れを落としやすくしています。

配管洗浄について、他の薬剤と合わせて、酵素を使っている可能性はあるかもしれません。

【質問3】残留塩素の効力

残留塩素の効力についてお聞きしたい。

回答

厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」では、浴槽水の消毒については遊離残留塩素濃度が0.4mg/L程度~1.0mg/Lの範囲となっています。

最低値の0.4mg/L程度は、レジオネラ属菌の殺菌に有効な濃度とされています。

数値の裏づけとして、自著『レジオネラ症対策のてびき』倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター、500円税抜)のP24~25に、東京都の調査結果が載っています。

東京都の調査結果では、0.2mg/L以上の範囲でレジオネラ属菌の検出があったとあります。

レジオネラ属菌の殺菌には、0.4mg/L程度以上が必要になります。

「公衆浴場における衛生等管理要領」では、最大1mg/Lを超えないように努めることと表現されています。

適切な濃度管理の観点と、塩素剤の多量使用による皮膚への刺激など健康影響の観点からと考えられます。

かりに、一時的に、0.1~0.2mg/L程度、超えたとしても、問題にはならないでしょう。

【コラム】浴槽水の汚れと泡の関係

専門家の株式会社ヘルスビューティー・シニアテクニカルアドバイザーの藤井明氏のご意見を参考にしました。

浴槽水の水面に泡が立つと、通常はすぐに自然に消えます。

浴槽水に汚れがあると、泡が残りやすくなる傾向があります。

汚れのタンパク質や多糖類などが作用して、泡が頑丈になり、安定化して消えにくくなるのです。

残留塩素濃度が高くなると、泡が出やすくなるかもしれません。

なぜなら、塩素剤が生物膜(バイオフィルム)に損傷を与えて、タンパク質や多糖類を溶かし出しているからです。

そのために、泡が消えにくくなります。

浴槽水の泡が消えにくい原因は、塩素が効いている証拠ともいえます。

その背景にある、配管中の生物膜の存在が考えられれば、高濃度塩素消毒や配管洗浄の実施を検討する時期といえるでしょう。

以上のように、浴槽水に汚れがあり、塩素濃度が高いと、泡が残りやすくなると考えられます。

【私の視点】

浴槽水に汚れがあり、塩素濃度が高いと、水面に泡が残りやすくなります。

私は、実際の現場で、汚れを含んで透明度が下がった浴槽水の水面で、泡が消えにくかったのを見たことがあります。

その背景にある、配管中の生物膜の存在が考えられれば、高濃度塩素消毒や配管洗浄の実施を検討する時期といえるでしょう。

『てびき』ご購入をお考えのかたは、こちらから注文ができます。

【ご案内】

【講座】保健所・環境衛生監視員対象、レジオネラ症対策を現場で学ぶ、基本とスキル習得講座・実践編2日間コース(会場開催、公衆浴場施設の現場見学付)を開催します。

・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。

・課題の解決につながる講座をご用意しています。

・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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