環監・保健師のためのレジオネラ症対策【入門】入浴剤使用浴槽水の塩素測定法
【私の視点】
入浴剤を入れる前、浴槽水に十分な殺菌のための塩素濃度が確保されることが大切です。
循環ろ過の場合、営業開始前、浴槽水の遊離残留塩素濃度が0.4~1.0mg/Lに調整されてから、浴槽が1回転するまで循環をするのが一つのやり方です。
2022(令和4)年12月はじめ、A県保健所からレジオネラ症対策の関係で、次のとおりご質問をうけました。
◎質問
(入浴剤使用浴槽水の塩素濃度の確認)
介護施設から問い合わせがありました。
「浴槽(循環ろ過式)水の塩素濃度を測定するにあたり、入浴剤により浴槽水に色がついている場合、DPD法による比色が難しくなると思います。どうしたらいいのでしょうか?」
厚生労働省の「循環式浴槽におけるレジオネラ症防止対策マニュアル」のなかに記載があります。
「発色した色を比色版と比較し測定する残留塩素測定器(DPD 法)では、着色や白濁している浴槽水(薬湯や温泉など)では、測定できない場合があります」
何か対処方法がありますでしょうか。
環監業務に大切な内容ですので、参考までに回答をご紹介します。
◎回答
入浴剤メーカー研究員にお聞きしました。
お聞きして私が理解した内容をもとに、ご回答します。
(DPD法残留塩素測定器の使い方)
セルに湯・水を入れ、試薬を加えるタイプのDPD測定器について、浴槽水を調べるとき、次のとおりの手順が望ましいと思われます。
例えば、SIBATA(柴田科学)の残留塩素測定器であれば、透明なプラスチックのセルが3本あります。
試薬を入れるセルが真ん中で、両脇の2本のセルが比色板の後ろ側にあります。
試料の湯を、両脇の2本のセルの8分目くらいまで入れます。
次に、試料の湯を、真ん中のセルのラインの10mLまで入れて、試薬を加えて混和します。
混和後、ピンク色に発色し、その色の濃淡を比色板の色と比べて、濃度を出します。
こうして比色板で濃度を確認すると、入浴剤で色がついた試料の湯がバックグラウンドになって、より正確に測定ができると考えられます。
研究員の話では「適切な入浴剤の濃度の色であれば、DPD法で測定可能だと思います」とのことです。
(その他の測定法)
比色式のDPD法のほか、電流法、吸光光度法の測定法があります。
電流法、吸光光度法の測定器は比較的高額になります。
ちなみに、循環ろ過設備の自動塩素注入方式に組み込まれた残留塩素濃度計(センサー)には、ポーラログラフ(電極)式が多く採用されています。
(入浴剤の色)
消毒剤の塩素剤使用により、入浴剤の色が薄くなる傾向があります。
研究員の話では「遊離残留塩素濃度が0.4~0.6mg/Lで、色がやや薄くなり、2.0mg/Lで色が消失することがあります」ということです。
【私の視点】
入浴剤を入れる前、浴槽水に十分な殺菌のための塩素濃度が確保されることが大切だと思います。
循環ろ過の場合、営業開始前、浴槽水の遊離残留塩素濃度が0.4~1.0mg/Lに調整されてから、浴槽が1回転するまで循環をするのが一つのやり方です。
循環ろ過は、通常、浴槽水が1時間あたり2~3回転する能力があると考えられます。
したがって、30分に1回は浴槽水が入れ換わっていると考えていいでしょう。
30分間、循環させて配管中の湯を十分に殺菌したあとに、入浴剤を入れます。
こうすれば、入浴剤を入れる前の段階では、浴槽の配管系統の湯が殺菌されていることになります。
私の保健所・環境衛生監視員の経験から感じているのは、入浴剤を使う浴槽の毎日換水、定期的な水質検査によるレジオネラ属菌不検出の確認、年に1回の配管洗浄をするのが望ましいということです。
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【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。