環監・保健師のためのレジオネラ症対策【入門】汚れの度合いをみるATP検査法

【私の視点】
ATP検査法の注意点
・原水、源泉のATP値がどのくらいか。ブランクに相当する値を知ることで数値の評価ができます。
・シャワー水は、ATP値が低い場合でも、レジオネラ属菌が検出される可能性があります。

ATP検査測定器

2022(令和4)年11月上旬に、国立保健医療科学院の令和4年度短期研修・環境衛生監視指導研修(オンライン)で講師をつとめました。

テーマは「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ対策」です。

体験型・参加型のワークショップで、全国の保健所・環境衛生監視員39人が参加しました。

【講義の内容】

まず、都内の公衆浴場で撮影した動画を見ながら、実際の公衆浴場でレジオネラ属菌発生のリスクがどこにあるかを考えました。

次に、各参加者へ事前に送付されたATP測定器を使い、ATP検査法を実習しました。

・ATP検査法の原理

生物体のエネルギー代謝に不可欠な物質であるATP(アデノシン三リン酸)を発光させて、その光量からATPの量を測ります。

その原理は、ATPとルシフェリンとを、酵素のルシフェラーゼを触媒として反応させるものです。

発光は、ホタルの光と同じ原理で、光源がなくても光を放ちます。

人やバイオフィルムの堆積など有機物による汚れの度合いを見ることができます。

・測定の実習

水道水と、事前に採水した自宅の浴槽水の数値を比較してもらいました。

水道水は、0~20・RLUでした。

浴槽水の数値は、20~300・RLUと幅がありました。

RLUは、光の量を表す単位です。

数値が大きいほど、汚れがあると考えられます。

実習では、水道水と浴槽水との数値の違いが何を意味しているかを考えてもらいました。

【質疑応答】

質問1:
ATP検査法、塩化物泉で数値が低く出る。
その理由は何。どの程度低くなるのか。

回答:
塩化物泉とATP数値との関連の研究データとして、参考資料が2点あります。

「掛け流し式温泉における適切な衛生管理手法の開発等に関する研究」

「レジオネラ対策におけるATP測定法を用いた温泉水の衛生管理に関する検討」

国立感染症研究所の倉文明先生から、参考ご意見をいただきました。

倉先生のご意見から、私の理解した内容は次のとおりです。

◎ATP/AMPの測定感度に及ぼす要因

•ルシパックワイドは、pH10以上のアルカリで発光強度が140〜200%に増加した。

•NaCl濃度が0.5%、1%、2%で発光強度が
それぞれ83%、51%、26%に低下した。

•遊離ATPの分解について、残留塩素濃度100mg/L中では60分間の接触時間では減少は認められなかったが、1000mg/Lでは10分後に40%、30分後に検出限界まで低下した。

•Pseudomonas fluorescence P17株を用いたら、残留塩素濃度100mg/L中では60分間の接触時間では、時間とともに菌体が破壊されDEAD cell数(LIVE/DEAD BacLight Bacteria Viability Kit染色)の減少が認められたが、ATP/AMPの減少は認められなかった。

(平成18年度厚生労働省科学研究費補助金  地域健康危機研究事業主任研究者 井上博雄氏)

質問2:
ATP検査法の数値
消毒の塩素剤の種類による数値の影響はあるのか

回答:
質問1の回答にあるように、遊離残留塩素濃度100mg/Lくらいまでは、ATP数値への影響はないようです。

通常の浴槽水では、影響がないと考えていいでしょう。

ただし、1000mg/Lの高濃度の遊離残留塩素濃度では、殺菌作用により細菌体より遊離したATPの分解が進み、10分後に40%まで低下、30分後に検出限界まで低下するものと考えられます。

【私の視点】

◎ATP検査法の注意点

・原水、源泉のATP値がどのくらいか。ブランクに相当する値を知ることで数値の評価ができます。

・シャワー水は、ATP値が低い場合でも、レジオネラ属菌が検出される可能性があります。

◎浴槽水のATP数値の高い原因の一例

・換水頻度が低い

・循環ろ過系統にバイオフィルム付着
 ろ材・配管の汚れなど

・ろ過器の処理能力が低い

・気泡発生装置の内部の汚れ

・原水の汚れ

・原水槽の汚れ

・入浴者数の多さ

・薬湯 (漢方生薬の使用)

※他の水質検査結果、遊離残留塩素濃度、調査結果とともに、原因究明をし、改善策を施設と相談することが大切です。

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【実績】

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。