環監のための仕事術【入門】現場で信頼関係をつくる方法②
【私の視点】
会話の話題を広げてみましょう。どこかで相手の反応があるかもしれません。
相手の表情を見れば、「うれしい」「楽しい」「よくぞ、聞いてくれたね」の気持ちを読みとることができます。そのときが、信頼関係をつくるチャンスになります。
2022(令和4)年11月下旬に、川崎市衛生関係職員研修会(会場開催)で講師をつとめました。
テーマは「現場の衛生監視指導・助言を生かすコミュニケーション・スキル入門編」です。
体験型・参加型のワークショップで、環境衛生監視員や食品衛生監視員など14人が参加しました。
研修後に、質問がありました。
環監や食監などの業務に大切な内容ですので、ご紹介します。
【質疑応答】
質問1:
対応が難しい営業者への対応、コミュニケーションのとり方を教えてください。
もうひとつ、同じような内容の質問がありました。
気難しい事業者さんとのやりとりの際、どのような対応をすべきかより詳しく知りたいと思いました。
回答:
私の経験を二つ、ご紹介しましょう。
◎営業者①:施設の名前
はじめて訪れた旅館のレジオネラ症対策の調査のときの話です。
60歳代と思われる営業者の旅館の主人は、こちらからの質問に、ほとんど「はい」「いいえ」の最小限の言葉しか返ってきませんでした。
男性の顔は、「検査が早く終わらないかなあ」というように見えたのです。
会話のやり取りが、かみ合わずに、気難しい人なのかなあと思いました。
ひととおり調査を終えて、玄関ロビーに戻ったとき、ほっとした様子の営業者に声をかけました。
「さっきから思っていたのですけど、こちらの旅館の名前は、プロ野球の有名球団の定宿と同じですね。何か、ご関係があるのですか」
男性の顔が、ほぐれました。
「同じ名前ですけど、関係はありません。実は、以前に、球団ゆかりの宿に泊まりたいと電話がありました。どこかでお調べになったのだと思いますけど、うちは違いますよとお断りしました」
この会話のあと、旅館の主人の声が、それまでの重たい口調が滑らかに変わりました。
話は、してみるものですね。
どこで、相手の反応があるかわかりません。
会話のやりとりが、信頼関係を築いていくきっかけになると確信したときでもありました。
◎営業者②:趣味の水槽
美容室の店主は、20歳代の男性でした。
衛生監視指導のとき、入り口の外に置かれたスポーツタイプの自転車が目に入りました。
外の自転車を指さして「おしゃれな自転車ですね」と言いました。
店主は無表情、無反応でした。
正直、気難しい人なのかなあと感じたのです。
検査がひととおり終わり、私は店内に置かれた金魚の水槽に目がいきました。
「きれいな水槽ですね。水槽の上に、植物のポトスがありますけど、水の中で根を伸ばすのですか?」
店主の顔が、やわらかくなるのがわかりました。
「水の中でも根は育ちますよ」
「水槽の中の水草だけではなくて、水槽の上にも緑があると、空間の広がりがありますね」
ニコニコする店主の顔が見えました。
続けて私は、話をしました。
「金魚や水草は、どこで買ったのですか?」
「少し遠くに大型の店があるんです。車に乗って買いに行きます」
「行って見ていると、いろいろ欲しくなりますよね」
店主の顔が、うれしそうに崩れていました。
「そう。だから、必要なとき以外は行かないようにしているんです」
「こうして水槽を見ていると、癒されますね。ずっと見ていても、飽きないですね」
このあと、店主は自ら金魚や水槽のことを話してくれました。
相手の趣味や好きなことにふれたことで、相手が喜んでくれて、二人の距離がいっきに縮まったと感じました。
【私の視点】
・どこかに、お互いの距離を近づけるきっかけがあるかもしれません。
・会話の話題を広げてみましょう。どこかで相手の反応があるかもしれません。
・相手の表情を見れば、「うれしい」「楽しい」「よくぞ、聞いてくれたね」の気持ちを読みとることができます。そのときが、信頼関係をつくるチャンスになります。
【ご案内】
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・課題の解決につながる講座をご用意しています。
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【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京・特別区職員研修所、令和4年度 専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。