環監のためのレジオネラ症対策【入門】PCR法と培養法の使い方
【私の視点】
PCR法と平板培養法を組み合わせて検査することで、真の状態が見えてきます。
浴槽水で高濃度の遊離残留塩素を検出した場合でも、生菌が出ることがあります。
2022(令和4)年9月下旬、横浜市で5日間、開催された第10回レジオネラ国際会議2022に出席しました。
2日目午後の会場のホールでは海外からを含めて、研究者、行政関係者など約60人が参加し、オンラインでも国内外の参加がありました。
井上浩章氏(アクアス株式会社)から「レジオネラ属菌の検出におけるPCR法と平板培養法の結果の違いの考察」が報告されました。
【私の理解した点】
・検出率は、PCR法 > 平板培養法(生えない種類もある)
・レジオラート:液体培地:簡易に検査できる方法。
・PCR法:次の3つをカバーできる。
平板培養法で生えた種類の菌
平板培養法で生えない種類の菌
死菌
・目的に合わせて、PCR法と平板培養法を使うことが大切。
【私の視点】
PCR法と平板培養法の2種類を、私はこう使い、評価してきました。
(1)PCR法
遺伝子痕跡を見ることから、生きている菌だけではなく、消毒・殺菌により死骸となった菌までを含めての量を測ります。
したがって、十分な消毒がされている場合、平板培養法で菌数が不検出となっていても、PCR法で検出されることがあります。
PCR法検出の場合、どこかに、菌がいる箇所が考えられます。
培養法に相当する数値の ○○CFU/100mL として表されることがあります。
この数値が100以上のとき、どこかに菌の堆積、バイオフィルムの形成が考えられるでしょう。
ろ過器の内部、ヘアキャッチャー付近、回収槽、浴槽の亀裂・付属設備、温度計のさや管、水位計、床面の気泡発生装置などの点検・洗浄、あるいは配管洗浄による対処が必要と考えられます。
(2)平板培養法
レジオネラ属菌の基本の検査です。
生菌を調べることができます。
公衆浴場法、旅館業法に基づく処分の際には、重要な検査法です。
『レジオネラ症防止指針第3版』(公益財団法人日本建築衛生管理教育センター)によると、浴槽水の菌数が 100 CFU/100mL 以上で感染リスクが高まります。
保健所の現場調査の際、高濃度の遊離残留塩素が検出される場合、平板培養法の見た目の菌数が少ないことがあります。
一時的な高濃度消毒のために、菌が少なくなっている可能性があります。
PCR法と平板培養法を組み合わせて検査することで、真の状態が見えてくると思います。
また、高濃度の遊離残留塩素を検出した場合でも、生菌が出ることがあります。
消毒で、瞬間的に菌を殺すことができるわけではないからです。
消毒の種類、濃度、接触時間、浴槽水の水質成分、浴槽水のpH、アメーバの存在などの条件によって、菌を殺すまでの時間に違いが生じるのです。
◎PCR法と平板培養法とを組み合わせての検査が、適切な評価につながります。
【ご案内】
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
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【実績】
・2021年、国立保健医療科学院、令和3年度・環境衛生監視指導研修で「現場での衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。