【環監・保健師入門編】レジオネラ症対策・浴槽水を入れ換える理由
【私の視点】
レジオネラ症対策のターゲットは、レジオネラ属菌のほか、もうひとつアメーバがあります。
アメーバがやっかいなのは、通常の塩素消毒や熱消毒が効きにくいことです。
アメーバの対処としては、消毒より、定期的な清掃や配管洗浄で物理的に取り除くことが有効です。
こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
2023(令和5)年5月11日発行の『設備と管理』6月号(オーム社)で、緊急リポート「レジオネラ症対策を再考する」を書きました。
福岡の旅館の一件を受けての内容です。
レジオネラ症対策の再考の一部を、ご紹介します。
◎ なぜ入れ換えないと危ないのか
知人から、「かけ流しで、湯の補給が相当量あれば、浴槽の湯そのものは、入れ換わっているくらいになるかもしれません」とあった。
湯を入れ換える理由は、新しい湯にするためだけではない。入れ換え時に、掃除をすることが重要なのだ。
【アメーバの存在】
私は、過去の経験を思い出した。ある公衆浴場施設の原水の地下水をためる水槽の清掃に立ち会ったときだ。
少なくとも5年くらい掃除をしていなかったコンクリート製水槽は、水を抜くと、壁や底の表面を見ることができた。
黒色に近かった。手でさわると、ねっとりしている。
黒色の原因は、二つ考えられた。
ひとつは、地下水が鉄やマンガンの成分を含んでいることだ。
もうひとつは、地下水に消毒用の塩素剤が加えられていることである。
塩素を入れることで、鉄やマンガンが固体化しやすくなって、壁や底に付着していくのだ。
専門業者の清掃作業の前に、断って私は拭き取り検査をおこなった。
その後の検査結果では、微生物のアメーバが検出された。
【アメーバとは何か】
2023(令和5)3月下旬に、A県の公衆浴場等対象のレジオネラ症対策講習会の講師をつとめた。
その講演から、一部を紹介したい。
「アメーバとは、レジオネラ属菌より一回り大きな微生物です。
アメーバは、レジオネラを体内に取り込みます。食べるようなものです。
しかし、レジオネラはアメーバの体内で死にません。逆に、数を増やしていくのです。
数が1,000~2,000個になったとき、アメーバの体が破裂して、環境中へ出ていきます。
このように、アメーバはレジオネラの培養器なのです」
【清掃・配管洗浄の大切さ】
私は、話をつづけた
「アメーバがやっかいなのは、レジオネラ症対策で用いる通常の塩素消毒や熱消毒が効きにくいことです。
環境中で、しぶとく生きているのです。
アメーバの対処としては、消毒より、清掃や配管洗浄で物理的に取り除くことが有効です」
以上が、私の頭に浮かんできた。
浴槽を空にしないと、浴槽を十分に掃除することができない。
掃除をしなければ、浴槽の壁や底に、レジオネラ属菌を増やしてしまうアメーバが生息、増殖してもおかしくないと思った。
加えて、私が考えたのは、浴槽のどこで、アメーバやレジオネラ属菌など微生物が増えてしまうかだ。
これには、私が以前に調査協力した集団感染事例の現場が参考になる。
ここから先は、『設備と管理』6月号をご覧いただけますと幸いです。
【レジオネラの基礎知識】【浴槽水の換水規定】【浴槽水の換水頻度の低さに気づく方法】【換水頻度は最低どのくらいか】などが掲載されています。
【私の視点】
レジオネラ症対策の言葉から、ターゲットはレジオネラ属菌だというのは当然です。
実は、ターゲットは、もうひとつ、あります。
それが、アメーバです。
アメーバがやっかいなのは、レジオネラ症対策で用いる通常の塩素消毒や熱消毒が効きにくいことです。
環境中で、しぶとく生きているのです。
アメーバの対処としては、消毒より、清掃や配管洗浄で物理的に取り除くことが有効です。
定期的な清掃や配管洗浄が大切な理由が、ここにあります。
『設備と管理』6月号(オーム社)の内容紹介はこちら
ご購入をお考えのかたも、このページからどうぞ
【ご案内】
【講座】保健所・環境衛生監視員対象、レジオネラ症対策を現場で学ぶ、基本とスキル習得講座・実践編2日間コース(会場開催、公衆浴場施設の現場見学付)を開催します。
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。
【実績】
・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。