【環監・保健師向け】避難所の熱中症対策その1
【酷暑期の避難所の熱中症対策】
①水シャワーで体を冷やす
②スポーツドリンクの備蓄
③発災48時間以内にTKB整備
トイレ、キッチン、ベッド
元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著(根本昌宏監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
2024(令和6)年9月中旬、第29回環監未来塾私塾・講演会をオンライン開催しました。
テーマは、「災害時の衛生、夏季災害時の避難所・避難生活の熱中症対策」です。
講師は、中京大学スポーツ科学部教授・松本孝朗氏です。
全国の保健所・保健師・環境衛生監視員等、77名の皆様が参加しました。
講演会後の参加者の声では、「熱中症の対策について、しっかりと学べました」とある一方、「ライフラインが止まってしまうと対策は厳しいのだと改めて知った」とありました。
私も、酷暑期の災害でライフラインが止まると、残念ながら、熱中症対策に効果的な手段を失ってしまうと感じました。
ご講演の内容は、災害時の避難所・避難生活の衛生対策に有用ですので、ご講演から、私が理解した点をご紹介します。
能登半島地震関連の【保健師活動】避難所・避難生活の熱中症対策が、別ページにあります。
【酷暑期避難所演習】
2024(令和6)年7月下旬、大阪府八尾市の指定避難所の小学校体育館で、1泊2日の酷暑期避難所演習が実施されました。
松本孝朗氏は、演習時の研修会講師として講演し、また演習では車中泊をしました。
松本氏は、車中泊のときに車の後ろのハッチを全開放して寝たところ、風がやみ寝苦しかった時間帯と、南風が流れて涼しく感じた時間帯とがあったと報告されました。
避難生活では、風の流れ、夏には南風を考えて、窓や扉の開口部をつくるのがポイントになるでしょう。
この演習には、私も参加しました。
私は、体育館への避難は熱中症リスクが高く、夜間には屋外の車中泊やテント泊が選択肢になると感じたのです。
【熱中症対策の資料】
松本孝朗氏が制作に関わった資料は、次のとおりです。
①スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック
日本スポーツ協会
※日本スポーツ協会のホームページで、デジタル版(PDF)がダウンロードできます。
②日常生活における熱中症予防
日本生気象学会
※日本生気象学会のホームページで、熱中症予防研究委員会のページから、デジタル版(PDF)がダウンロードできます。
③熱中症環境保健マニュアル
環境省
※環境省のホームページで、熱中症予防情報サイトの普及啓発資料のページから、デジタル版(PDF)がダウンロードできます。
【暑さ指数】
湿球黒球温度(WBGT)とも呼ばれ、熱中症を予防することを目的に1954年にアメリカで提案された指標です。
測定には、黒い球の中に温度計が入っている湿球黒球温度計を使います。
熱中症計ともいわれています。
測定単位は、気温と同じ摂氏度(℃)で示されます。気温との混同を避けるため、数値のみで表現されることがあります。
日本生気象学会「日常生活に関する指針」で、暑さ指数がレベル分けされています。
危険(31以上)レベルは、高齢者が安静状態でも熱中症になる危険性が高くなります。
涼しい室内に移動することが必要です。厳重警戒(28以上31未満)レベルは、外出時に炎天下を避けることが大切です。室内の温度上昇に注意しましょう。
環境省の熱中症予防情報サイトでは、熱中症警戒アラート・暑さ指数等の配信サービスが案内されています。
暑さ指数の算出式は、屋外と屋内で違います。
(屋外)
WBGT=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度
(屋内)
WBGT=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
【熱中症の症状と対処】
熱中症とは、暑さにより起こる病気の総称です。
熱失神、熱けいれん、熱疲労、熱射病の四つに分類されます。
①熱失神
炎天下にいたり運動をしたりしたとき、めまいや失神などの症状が出ます。
横になることで、血液が体をまわり回復へ向かいます。
②熱けいれん
大量に汗をかき水だけを補給したときに、足などがつる症状です。
塩分を補給することで回復へ向かいます。
③熱疲労
運動中の脱水で、めまい、頭痛、吐き気などの症状が出ます。
運動の休止、水分・塩分の補給、体を冷やすことで回復へ向かいます。
④熱射病
命の危険があるのが熱射病です。
体温が40℃以上になり、脳が熱くなることで脳機能障害が起き、意識レベルが落ちて、体温調整ができなくなります。
救急車を要請して、速やかに体に水をかけるなど冷却措置が必要になります。
【症例】
・熱疲労:40代男性、炎天下のゴルフで頭痛・吐き気
・熱射病:40代男性、炎天下のマラソンで意識昏迷・全身痙攣
・熱射病:10代男性、炎天下のアメフト練習で強直性痙攣・体温42℃以上
・熱射病:80代男性、梅雨明けの急激な暑さで、室内で意識混濁・体温39℃台・脱水
【酷暑期の避難所の熱中症対策】
①水シャワーで体を冷やす
②スポーツドリンクの備蓄
③発災48時間以内にTKB整備
トイレ、キッチン、ベッド
酷暑期、炎天下で復旧作業をするのは危険で、熱中症対策は難しいとされています。
日中の避難所は、高齢者にとって危険と考えられます。
酷暑期、エアコンと電気なしには、熱中症対策は困難でしょう。
夜も暑さで寝苦しく、睡眠不足になると、よけいに体調を崩しやすくなります。
【環監の視点】
電気が止まったときの熱中症対策として、自家用車やバスなどを使い、車内のエアコンで体を冷やす方法が考えられます。
平時から、ガソリンや軽油など燃料の確保、補給方法を考える必要があります。
熱中症対策として、海上の客船などを使う方法も選択肢のひとつでしょう。
電気を局所的に供給できる電源車の活用も選択肢のひとつになるでしょう。
災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください
災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策の講師ご依頼につきまして、お気軽にお問い合わせください
『災害時・避難所の衛生対策のてびき』ご購入をお考えのかたは、こちらから注文ができます。
【ご案内】
【2024(令和6)年度講座】
2024(令和6)年度のオフィス環監未来塾の講座一覧表をご覧いただけます。
【自治体職員対象】無料講演会・熱中症対策 第2弾
「暑さ寒さから身を守る ~AVA血管+衣服による体温調節~」
第30回環監未来塾私塾「災害時の衛生」無料講演会を開催します。
(1) 日時 2024年10月8日(火)18時00分~19時30分
(2) 場所 オンライン(Zoomを使用します)
(3) 対象 自治体職員(保健所・環境衛生監視員ほか)30人
申込多数の場合、枠を広げる可能性があります。
(4) 内容 暑さ寒さから身を守る ~AVA血管+衣服による体温調節~
(5) 講師 平田耕造氏(神戸女子大学名誉教授)
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。
【実績】
(書籍)
・2022年、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター)を出版しました。
・2020年、全国保健師長会・作成『災害時の保健活動推進マニュアル』の生活環境衛生対策の分担執筆をしました。
(活動)
・被災地の地元自治体に協力して避難所の衛生対策活動・調査をしました。
2011年 東日本大震災、気仙沼市
2016年 熊本地震、熊本市
2018年 西日本豪雨、倉敷市
2019年 令和元年台風19号、長野市、いわき市
2024年 能登半島地震、七尾市、珠洲市
(講師)
・2024年、全国保健師長会、能登半島地震関連・緊急オンライン研修会「地震断水時の避難所・避難生活の衛生対策」の講師をつとめました。
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。