【環監向け】レジオネラ症対策・消毒で入浴剤の色が消える

【環監の視点】
一般的には、遊離残留塩素濃度が、1mg/Lを超えると、入浴剤の成分が分解して色が消えやすくなるといわれています。
0.4~0.8mg/L程度の濃度を維持していると、色が消えにくくなります。
溶けやすい消毒剤を使うと、急激に塩素濃度が上がり、入浴剤の色が消えてしまうことがあります。

遊離残留塩素濃度を測る(イメージ写真)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『レジオネラ症対策のてびき』著(倉文明監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2024(令和6)年6月中旬に、「レジオネラ症対策を現場で学ぶ、基本とスキル習得講座・実践編2日間コース(公衆浴場施設の現場見学・実習付)」を開催しました。

県保健所、中核市保健所から2名の保健所・環境衛生監視員のかたが受講されました。

公衆浴場の営業者の方から、湯を沸かす釜の構造や、シャワー水をつくる調節箱のしくみ、原水の地下水をくみ上げるときの自動塩素注入のしくみなど、詳細な説明がありました。

そのあと、私から浴槽水の採水方法の注意点の解説後、具体的な採水方法やATP検査法などを現場で実習しました。

現場では、シャワーの衛生指導のポイントにも触れました。

受講者の声

<公衆浴場の現場に行き、貴重な機会で、機械室を見ることができ、さらに、適切な検査の手法を学ぶことができた>

現場見学の際、営業者から、質問がありました。

<入浴剤(浴用剤)を使用する薬湯の浴槽水の消毒に、吊り下げ容器にブロム剤を入れています。

遊離残留塩素濃度をDPD測定すると、ピンク色が薄くしかつきません。

原因は何でしょうか? >

ブロム剤は、薬湯に使用する浴用剤(入浴剤)の色が消えにくいことと、ややアルカリ性の原水の消毒に適していることから使用していると聞きました。

今回は、「レジオネラ症対策・消毒で入浴剤の色が消える」として、ブロム剤使用で、塩素濃度が低くなる原因などを考えてみたいと思います。

以下の説明につきまして、専門家の株式会社ヘルスビューティ・シニアテクニカルアドバイザーの藤井明氏のご意見、藤井氏の「環監未来塾私塾」での講演資料を参考にしました。

【ブロム剤で遊離残留塩素濃度が上がらない理由】

(質問)

入浴剤(浴用剤)を使用する薬湯の浴槽水の消毒に、吊り下げ容器にブロム剤を入れています。

遊離残留塩素濃度をDPD測定すると、ピンク色が薄くしかつきません。

原因は何でしょうか? 

(回答)

ブロム剤が十分に浴槽水に溶けていないために、濃度が低くなっていると考えられます。

吊り下げ容器内のブロム剤が、溶けにくいのかもしれません。

ブロム剤は、他の固形の消毒剤の、さらし粉(次亜塩素酸カルシウム)やトリクロロイソシアヌル酸と比べて、浴槽水に溶けきるまで時間がかかるとされています。

吊り下げ容器のブロム剤使用時、塩素濃度を上げるには、使用説明書を理解したうえで、営業時間の前に入れて十分に溶解させる。浴槽水に接する表面積を増やすため、錠剤を増やすなどが考えられます。

pH値が7~8程度であれば、ブロム剤とは別の消毒剤を選ぶのも選択肢のひとつです。

【ブロム剤とは】

・成分名:ブロモクロロジメチルヒダントイン

 五角形の結合に、塩素基(Cl)とブロム基(Br)がついています。

・水に溶けると、殺菌力をもつ、次亜塩素酸と次亜臭素酸ができます。

・次亜臭素酸について、湯に溶けた、次亜臭素酸と次亜臭素酸イオンの割合を見ると、pH値8程度で、次亜臭素酸が高い割合で存在します。

・したがって、ブロム剤は、アルカリ側で、次亜塩素酸ナトリウムより時間あたりの殺菌力があるといえるでしょう。

【ブロム剤を選んだ理由】

質問があった公衆浴場の原水は、地下水です。

pH値は、8前後です。

それまで使用していた次亜塩素酸ナトリウムが、pH値8の水中で、殺菌力のつよい次亜塩素酸(HOCl)の割合が下がるため、時間あたりの殺菌力を保つ目的でブロム剤を採用しました。

ブロム剤は、pH値8でも、殺菌力を維持することができる消毒剤です。

また、ブロム剤は、比較的ゆっくり溶けるので、急激に入浴剤の色が消えることがないといわれています。

【消毒で入浴剤の色が消える】

一般的には、遊離残留塩素濃度が、1mg/Lを超えると、入浴剤の成分が分解して色が消えやすくなるといわれています。

0.4~0.8mg/L程度の濃度を維持していると、色が消えにくくなります。

溶けやすい消毒剤を使うと、急激に塩素濃度が上がり、入浴剤の色が消えてしまうことがあります。

【消毒の塩素剤の主な種類】

・次亜塩素酸ナトリウム(液体)

 液体、有効塩素濃度6~12%、揮発性(塩素臭)高い

・次亜塩素酸カルシウム(固体、通称:さらし粉)

 錠剤・顆粒、有効塩素濃度60~70%、揮発性(塩素臭)高い

・塩素化イソシアヌル酸(固体)

 錠剤・顆粒、有効塩素濃度60~90%、揮発性(塩素臭)低い

【消毒剤の溶けやすさ】

同じ量を使ったとしたら、目安は次のようになります。

・次亜塩素酸カルシウム(さらし粉)は、1時間で溶ける。

・トリクロロイソシアヌル酸は、4~5時間で溶ける。

・ブロム剤は、6~7時間で溶ける。

このように、ブロム剤はゆっくり溶けると言えるでしょう。

【ブロム剤とDPD測定】

・ブロム剤が湯に溶けたときにできる次亜臭素酸は、次亜塩素酸と同様にDPD試薬に反応します。

・ブロム剤使用時のDPD測定値について、消毒に有効な(遊離残留臭素濃度+遊離残留塩素濃度)として考えていいでしょう。

【環監の視点】

一般的には、遊離残留塩素濃度が、1mg/Lを超えると、入浴剤の成分が分解して色が消えやすくなるといわれています。

0.4~0.8mg/L程度の濃度を維持していると、色が消えにくくなります。

溶けやすい消毒剤を使うと、急激に塩素濃度が上がり、入浴剤の色が消えてしまうことがあります。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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