【保健師活動】被災地支援の巡回活動で役立つ持ち物
【保健師巡回活動で役立つ持ち物】
①携帯用メジャー
②コンパス(スマホ、方位磁石)
③非接触型体温計(赤外線放射温度計)
上の画像をクリックすると、pdfが開き、印刷可能です。ご活用ください。
被災地支援の保健師チーム・公衆衛生チーム等の皆様へ
活動前後・活動中・活動予定などで「避難所・避難生活の衛生対策」についてご質問、ご相談などありましたら遠慮なくお問い合わせください(無料)。
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元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。
次のとおり、保健師の被災地での巡回健康相談の活動の際、役立つ持ち物について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。
全国保健所長会・全国保健師長会に情報提供しています。
ご活用ください。
内容につきましては、1月下旬にオンライン開催された、全国保健師長会「緊急研修会・能登半島地震関連・避難所・避難生活の衛生対策」、及び、かながわ疫学勉強会「緊急企画・能登半島地震関連・避難所の衛生対策」での講演時に、参加者の皆様の関心のあった点にお答えしたものです。
前者の研修会には、全国の保健師の皆様約100人が参加され、後者の勉強会には全国から保健師をはじめ環境衛生監視員、食品衛生監視員、自治体防災危機管理担当者などの皆様86人が参加されました。
私のオススメのお役立ち持ち物は、次のとおりです。
※次の3点のほか、私の経験から、カメラやスマホのカメラをもっていると、現場の問題点・改善点の確認のとき撮影して、記録として情報共有できると感じています。
写真が、情報共有の大きな力になると思っています。
1 携帯用メジャー
在宅避難で、避難生活の環境整備として段ボールベッド・段ボール仕切りの活用を勧めることがあります。
保健師の皆様が在宅避難の巡回健康相談のとき、室内に段ボールベッドを置くことができるかを確認するため、携帯用メジャーがあると便利です。
段ボールベッドの大きさをメモしておくと、室内に設置可能かを判断できると思います。
(段ボールベッドの一例)
縦(幅)194cm × 横(奥行)90cm × 高さ 35cm
(段ボール仕切りの一例)
高さ 90cm
段ボールベッドのほか、計測する候補は次のとおりです。
・ベッド類の床面からの高さ
・地震被害で生じた室内の段差
・地震被害で生じた玄関の段差
※在宅避難でも、スペースがあれば、段ボールベッドの活用をお勧めします。
在宅避難での段ボールベッドのメリット
①床面からの冷えの防止
高さが約35cmあるので、床面からの冷えを抑えられます。
②床面からの埃の吸込の抑止
床から舞い上がる埃の吸い込みを抑えられます。
細菌・ウイルスを含む可能性のある埃を吸い込まないことで、感染症予防にもつながります。
③低体温症の予防
段ボールは空気層があるので、体からの放熱をうけて温まりやすくなります。
段ボールベッドとともに、ベッドまわりの3方に高さ約90cm程度の段ボール仕切りで囲うと、保温性が高まり、低体温症の予防につながります。
2 コンパス(スマホ、方位磁石)
コンパスは、曇・雨・雪のとき、東西南北を確認することができます。
在宅避難であれば、玄関の方位、寝室の方位などを確認することができます。
たとえば、建物が一部損傷して、玄関が北向きの場合、北風のすき間風が入るときは、扉の修理とともに、内側にカーテンや段ボール類の衝立を置き、冷気の風を抑えることも対処法のひとつです。
避難所では、臭いの発生する仮設トイレ、排泄物の管理場所、生ごみ置き場などの場所と、生活スペースの位置関係をみるのに使うことができます。
冬は北風の影響が大きいので、仮設トイレや排泄物の管理場所、生ごみ置き場が生活スペースの北側に位置すると、臭いの影響をうける可能性があります。
臭いは、避難所周囲の住宅にも配慮する必要があります。
仮設トイレの設置個所や排泄物の管理場所、生ごみ置き場の設置個所を考えるとき、コンパスがあると、役立つと思います。
3 非接触型体温計(赤外線放射温度計)
新型コロナのときに使われた非接触型体温計(赤外線放射温度計)のなかに、物体の表面温度を測ることができるものがあります。
体育館でシート類や畳の上に布団を敷いている場合、床面やシート類表面、畳表面の温度がどのくらいなのかを確認することができます。
経験的に、表面温度が15℃程度以下になると、寒い空間にいる感覚になると思います。
ちなみに、日本薬局方では冷所を1~15℃の場所としています。
表面温度が10℃以下になると、冷蔵庫のなかにいるような感覚になると思います。
ちなみに、食品衛生法では要冷蔵を10℃以下としています。
2019年11月下旬、私は、令和元年台風19号被災地の長野市で、地元保健所に協力して避難所の衛生対策活動で巡回していました。
『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)のP157~P164に、避難所の衛生対策活動の詳しい説明があります。
午後に外気温が11.3℃のとき、避難所になった室内テニスコート場は、冷えを感じました。
とくに、窓の下の壁部分がコンクリートになっていて、赤外線放射温度計で室内側の壁の表面温度を測定すると、9.9℃でした。
ちなみに、コンクリート壁の外側の表面温度は、6.4℃でした。
懸念したのは、壁に接して寝る人がいたことです。
外気温が零度を下回ったとき、蓄熱体のコンクリート壁が冷凍庫と同じような温度を持ちつづけて、冬の登山での遭難時と同様な低体温症にならないのか心配になりました。
担当保健師や避難所運営者に、避難スペースの移動あるいは断熱用の衝立の設置など改善をお願いしました。
※ 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。
画像をクリックすると、pdfが開きます。
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【ご案内】
災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください
災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策の講師ご依頼につきまして、お気軽にお問い合わせください
『災害時・避難所の衛生対策のてびき』ご購入をお考えのかたは、こちらから注文ができます。
【実績】
・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。