【環監・保健師入門】災害時の衛生対策・災害ごみの畳の発火

【私の視点】
水害で水に浸かった畳の含水率は、60%以上になるといわれています。
この状態になると、わら床の微生物が増殖し、発酵と表現されるような現象が起こり、発火につながる可能性があります。

災害ごみの仮置き場(イメージ写真)

こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、避難所の衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

次の内容につきましては、秋田市保健所衛生検査課へ情報提供いたしました。

2023(令和5)年7月なかば、停滞する前線の影響で、秋田県内などで大雨になりました。

大雨の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

水害のときに、災害ごみが家の前や道路脇に置かれることがあります。

また、廃棄物の仮置き場で災害ごみが山のようになり、ときには、積まれた畳から発火現象が起きることがあります。

今回は、災害ごみの畳の発火を考えてみたいと思います。

災害廃棄物分野・専門家の一般財団法人日本環境衛生センター・森田昭氏のご意見を参考にしました。

【秋田市の仮置き場】

テレビニュースの映像では、当初、災害ごみが区分されることなく、運搬トラックから災害ごみが仮置き場に捨てられている様子でした。

2023(令和5)年7月24日現在の秋田市のホームページでは、災害ごみ仮置き場として旧空港跡地が案内されています。

仮置き場の図面を見ると、分別された置き場になっています。

市民が持ちこむ災害ごみは、順路として、受付のあと、家電類、畳、布団類、可燃物、コンクリートくず、木くず(家具類)、不燃物、金属くず、危険物の順に分別されて、置かれます。

【過去の災害時の仮置き場】

令和元年台風19号被災地の長野市で、災害ごみの仮置き場の状況を見たことがあります。

河川堤防上の道路脇の仮置き場には、分別がされ、家具、朱色の灯油のポリ容器、断熱材、畳、家電、スプレー缶、薬品瓶などが置かれていました。

公園の仮置き場では、畳、家電、古タイヤがありました。

畳は、10枚以上が重ねられ、合計すると数百枚はあったと思います。一部の畳は、泥をかぶり、約1カ月が経過しても湿気が抜けきっていないように見えました。

【災害ごみの畳の発火現象】

仮置き場に積まれた畳から発火することがあります。

畳の含水率は、JIS規格によると、わら床で15%以下とされています。

水害で水に浸かった畳の含水率は、60%以上になるといわれています。

この状態になると、わら床の微生物が増殖し、発酵と表現されるような現象が起こるのです。

以前に私は、もみ殻と生ごみを混ぜて発酵させ、堆肥をつくる現場を見たことがあります。

攪拌する場所には、発酵の湯気がたっていました。堆肥を手で触ると、熱をもっているのがわかりました。

同じようなことが、水に浸かった畳でも起きているのです。

ただし、最近の化学畳といわれる、ポリスチレンや発泡スチロールなどが使用された畳は、そうした現象が起こりにくいと考えられます。

2011年の国立環境研究所の資料「仮置場の可燃性廃棄物の火災予防(第一報)」には、火災発生のメカニズムが説明されています。

<可燃性廃棄物の積み上げを開始した初期には、微生物による好気性代謝や化学的な水和反応等によって発熱が生じる。その上にさらに廃棄物を積み上げることで蓄熱が起こる。>

また、平成23年9月の環境省からの文書「仮置場における火災発生の防止について(再周知)」では、廃棄物の取扱いが説明されています。

<(畳)水に浸かった畳を分別した後、1カ所に集積した場合、内部のい草が発酵し火災が発生する恐れがある。分別集積する際は、1カ所で大きな山のような集積とならないよう注意する。悪臭の原因となるため、早めに業者に処理を委託することが望ましい。>

過去の災害時の仮置き場で、集積された畳から火災が発生した事例が、複数報告されています。

【災害ごみの畳の対処】

基本的には、発生源対策として、早い段階での処理・処分が大切になります。

地震災害のときは、集積された畳にシートを被せて雨にあたらないようにして、畳の含水率を抑えることが火災予防に有効です。

水害のときは、水に浸かった畳を集積した場合、発火が起こることを想定する必要があります。

発火を前提に、消火用の水の確保や消火器の準備が必要です。

過去の事例では、畳から火災が起きた場所では、次のような措置がとられました。

①仮置き場に警備員を夜間配置する。あるいは、巡回警備する。

②防水タンクの設置

【私の視点】

水害で水に浸かった畳の含水率は、60%以上になるといわれています。

この状態になると、わら床の微生物が増殖し、発酵と表現されるような現象が起こるのです。

以前に私は、もみ殻と生ごみを混ぜて発酵させ、堆肥をつくる現場を見たことがあります。

攪拌する場所には、発酵の湯気がたっていました。堆肥を手で触ると、熱をもっているのがわかりました。

同じようなことが、水に浸かった畳でも起きているのです。

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