【環監・保健師入門】災害時の衛生対策・水害浸水地の虫防除

【私の視点】
薬剤の少量使用でも、化学物質過敏症の人にとっては、目や鼻など粘膜への強い刺激、息苦しさなど呼吸器系への影響など様々な症状が出る可能性があります。

災害ごみの山(イメージ写真)

こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、避難所の衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

次の内容につきましては、秋田市保健所衛生検査課へ情報提供いたしました。

2023(令和5)年7月なかば、停滞する前線の影響で、秋田県内などで大雨になりました。

大雨の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

水害のときに、災害ごみや残存した水たまりなどから発生する虫の防除について、保健所に相談が寄せられることがあります。

水害浸水地の虫防除を考えます。

専門家の一般財団法人日本環境衛生センター・環境生物・住環境部長の橋本知幸氏のご意見を参考にしました。

【虫・ネズミ発生までの日数】

夏季の水害の場合、3週間後までにハエ類が、2カ月後までに蚊類が、1年後までにネズミ類の発生が考えられます。

その背景には、がれきの散乱や腐敗、停滞開放水域の増加、空き家の増加などがあります。

【虫・ネズミ発生の場所】

1 ハエ・コバエ類
・生ごみ、トイレ
・魚介類等の死骸
・ヘドロ等
・がれき仮置き場など

2  蚊類
・水溜り、溜まり水
・湿地等の水域
・流れが滞った排水路など
 
3  ネズミ類
・生ごみや動物の死骸
・損壊建築物内やその周辺
・集積されたがれき内部など

【虫・ネズミ発生源の防除】

対策の流れは、次のとおりです。

調査→同定(対策を要する衛生害虫等の把握)→防除の計画策定→防除作業の実施→実施結果の評価

調査は、発生源となりやすい水域、がれき等の集積場所、ヘドロ堆積場所などについて重点的に行い、発生種の確認や発生予測をおこないます。

虫・ネズミの対策の基本は、災害ごみの分別・適切な保管・処理・焼却・処分、水たまりの除去など、発生源対策がもっとも重要だと考えられます。

緊急時には速効的である薬剤(殺虫剤等)による駆除がおこなわれることがあります。

1 ハエ・コバエ類
  
(1)大量発生時などの緊急時対策:成虫・幼虫に対する殺虫剤の使用、網戸の設置などによる侵入防止対策

(2)持続的(環境的)対策:生ごみ等の焼却や埋設、埋め立て、ヘドロの乾燥・除去など

2  蚊類

(1)大量発生時などの緊急時対策:成虫・幼虫に対する殺虫剤の使用、網戸の設置などによる侵入防止対策、屋内での家庭用蚊取り剤の使用

(2)持続的(環境的)対策:水域の埋め立て、排水、水が溜まりやすい空容器などの除去
 
3 ネズミ類

(1)大発生時などの緊急時対策:粘着シート・殺鼠剤の使用

(2)持続的(環境的)対策:餌となる生ごみ等の適正処理、屋内への侵入防止対策

【虫発生源に使用する薬剤】

1 廃棄物仮置き場:ハエ防除

成虫駆除用には、ピレスロイド剤や有機リン剤があります。

私の所属した保健所では、日常業務の作業委託時にスズメバチの巣の撤去等で使用される薬剤として、比較的に健康影響の小さいピレスロイド剤の使用を仕様書に入れていました。

飛来したハエ成虫や有機物の入ったごみ袋の表面から薬剤を散布しても効果は、限定的と考えられます。ほぼ、毎日の対応が必要になります。

ピレスロイド成分を含浸した網で、廃棄物の山を覆うことができれば、産卵を抑制できる可能性があります。

2 水域(雨水マス、側溝など):蚊防除

ボウフラ発生源の停滞水を除去するのが、もっとも優れた方法です。屋外の空き缶、空き瓶、水がたまりやすい古タイヤなどを片づけることが有効です。

除去ができない場合、小範囲の水たまりであれば、IGR(昆虫成長制御粒剤)が使われることがあります。

【災害発生後の虫防除の資料】

岩手県のホームページから閲覧できます。

「東日本大震災津波により発生した災害廃棄物の岩手県における処理の記録」

こちら https://www.pref.iwate.jp/index.html

【その他防除に関する情報】

都道府県のペストコントロール協会に連絡・相談するとよいでしょう。

連絡先は、公益社団法人日本ペストコントロール協会のホームページで調べることができます。

こちら https://www.pestcontrol.or.jp/

【避難所・避難生活の注意点】

過去の避難所・避難生活では、ハエ・蚊対策として、ピレスロイド系殺虫剤や蚊取り線香類が用いられたことがありました。

いずれも、化学物質の成分と考えられます。

化学物質過敏症等の人がいるかもしれない空間での使用は、慎重に考える必要があります。

室内で使用しないのも、選択肢の一つです。

まず、虫の室内への侵入防止のための、網戸・カーテン類の設置、トラップによる虫の捕獲などを考えるのがいいでしょう。

【私の視点】

保健所・環境衛生監視員の視点から、屋外の薬剤使用の場合、その成分・濃度等の確認をすること、

薬剤散布をする場合、化学物質過敏症等の人への健康被害が生じないように、必要最小限の範囲、飛散防止など適切な方法か確認が大切だと思います。

市民自らが防除薬剤を使用する場合も、薬剤使用による健康被害への注意喚起、適切な使用が大切だと思います。

多量使用の暴露により気分がわるくなる。少量使用でも、化学物質過敏症の人にとっては、目や鼻など粘膜への強い刺激、息苦しさなど呼吸器系への影響など様々な症状が出る可能性があります。

化学物質過敏症の人、またはその可能性のある人は、20人に1人いると聞いたことがあります。

【災害時の衛生対策のご相談】

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【実績】

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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