【注意】水害浸水地に残った泥とレジオネラ肺炎
【避難所・介護施設・病院等のレジオネラ症対策】
①入り口の外に、着替えスペースをつくる
②靴箱と靴洗いスペースの屋外設置
③玄関周りの水撒き
④マスクの着用
こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、避難所の衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
2023(令和5)年7月なかば、停滞する前線の影響で、秋田県内などで大雨になりました。
大雨の地域の皆様へお見舞い申しあげます。
浸水が広がり、泥が堆積した地域があります。
水害浸水地に残った泥とレジオネラ症対策について、お話しします。
以下の内容は、私が執筆した、『シルバー新報』2023(令和5)年5月26日号の原稿の一部を基にしています。
【過去の災害とレジオネラ症】
土壌に生息するレジオネラ属菌を原因菌とする病気に、レジオネラ症があります。
レジオネラ症のひとつが、レジオネラ肺炎です。
これまでの東日本大震災に関連するレジオネラ症の報告のうち、がれき撤去作業や浸水建造物清掃が感染経路と考えられるものが4例ありました。
令和元年台風19号被災地では、屋外で仕事をしていた人が、浸水地に残った泥の土ぼこりを吸い込んでレジオネラ肺炎になった例を聞きました。
水害浸水地に残った泥が乾燥して土ぼこりで舞ったときに、土ぼこりを吸い込む可能性があります。
【水害浸水地にいるレジオネラ属菌】
これまで私は、国立感染症研究所が中心のレジオネラ研究班の活動の一環で、水害被災地の泥に、肺炎原因菌の一つのレジオネラ属菌がいるかを調査したことがあります。
前記の令和元年台風19号被災地で、発災2カ月後に、堤防決壊の浸水地域に堆積した泥を調べました。
その結果、生きたレジオネラ属菌が見つかりました。
この調査から、水害被災地にはレジオネラ肺炎発症のリスクがあるのがわかります。
水害被災地では、通常より広い面積で、泥が存在する可能性があることから、レジオネラ肺炎発症のリスクがあると考えられます。
詳細な報告は、IASR(国立感染症研究所、病原微生物検出情報)Vol.41 No.11(2020.11)に掲載されています。
タイトルは、「令和元年台風19号被災地の泥から検出されたレジオネラ属菌について」です。
【避難所・介護施設等のレジオネラ症対策】
レジオネラ肺炎に罹患しやすいのは、高齢者や基礎疾患により免疫力の下がった人です。
避難所・介護施設・病院などで、注意したい点は次のとおりです。
①入り口の外に、着替えスペースをつくる
水害後の片づけ作業で、衣服に土ぼこりや泥が付着します。
衣服の土ぼこりや泥が室内に持ち込まれないように、衣服の着替えをする必要があります。
そのため、たとえば、入り口の外に男女等別のテント状の着替えスペースを設けます。
②靴箱と靴洗いスペースの屋外設置
衣服と同様に、外で使用して土や泥の着いた靴を室内に持ち込まないことが大切です。
履き物を替えるための靴箱を、入り口の外に設置します。
発災当初、靴箱が用意できない場合、屋外用の靴をビニール袋に入
れて屋外に保管します。
汚れた靴を洗うスペースが、靴箱の近くにあると使いやすいでしょう。
③玄関周りの水撒き
玄関の開閉に伴い、風に吹かれて土ぼこりが室内へ入る可能性があります。
玄関周りや玄関前の歩道・道路について、定期的に水撒きをして、土ぼこりが立ちにくいようにします。
④マスクの着用
被災地域のがれき撤去作業や浸水地域の泥の堆積状況をみて、土ぼこりが舞う可能性があるとき、屋外ではマスクを着けましょう。
屋内で、外から土ぼこりが入る可能性があれば、マスク着用が推奨されます。
【私の視点】
①入り口の外に、着替えスペースをつくる
②靴箱と靴洗いスペースの屋外設置
③玄関周りの水撒き
④マスクの着用
いずれも、私が過去の被災地の現場や避難所で目にした内容です。
こうした過去の取り組みが、レジオネラ症対策に活かせると感じています。
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【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。