【環監・保健師入門】人の行動変容はどうして起きるのか

【私の視点】
自分ごととして考えると、行動の変化につながります。
行動変容の本質がここにあり、環監の衛生指導の現場につながるものだと思っています。

理容所店主との会話(イメージ写真)

こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所の衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年7月上旬、国立保健医療科学院の短期研修「建築物衛生」の1コマ「『最近の話題』Group Discussion ~苦慮事例~」に修了生として参加しました。

全国の保健所・環境衛生監視員の皆様、15名が参加していました。

研修終了生の私は、約32年前、「住まいと健康」1カ月コースを受講しました。

私は、研修終了生として、受講生の皆様にご参考になる経験をお話しできればと思い、参加しました。

環監業務に役立つ内容ですので、ディスカッションのなかで、私が気づいた点をお話ししたいと思います。

【改善がみられない】

施設を指導しても改善が見られないという苦慮事例があがりました。

私の経験からも、施設の営業者に指導事項をお伝えしても、1年後にまた同じ指導事項をお伝えすることがありました。

振り返ると、施設の営業者のかたが自分ごととして問題点を感じていなかったからだと思うのです。

今回のディスカッションのなかで、私からグループの5人の皆様へ質問しました。

「2020年4月以降、新型コロナの感染が拡大したとき、ほとんどの人がマスクをつけるようになったのは、なぜだと思いますか?」

「ほかの人がマスクをつけているから」「専門家が言っているから」

他にありますかと呼びかけて、「感染するから」と声がありました。

そうですね。感染すれば、自分が死んでしまうかもしれない。自分が死なないために、マスクをつけようと思った人が多かったのではないでしょうか。

新型コロナ感染を自分ごととして、考えたからですね。

行動変容の本質がここにあり、環監の衛生指導の現場につながるものだと思いました。

ちなみに、私の講座では、環監のための具体的スキルをお伝えしています。

【ベテランがいない】

A自治体では、係の7人中に環監経験者が1人しかいないため、経験者が2人を同行して計3人で衛生監視へ出かけ、教えていると話がありました。

B自治体では、係の3人全員が未経験者のため、過去の報告文書を読んだうえで、現場へ出かけていると話がありました。

それらの話から、現場の経験者不足の深刻さが伝わってきました。

ひとつ、私の頭にうかんだ懸念は、適切な衛生監視指導がおこなわれないと、施設の問題改善につながることが難しくなり、それが市民の健康を守ることを損ねてしまうのではないかです。

担当の先生から、自治体間の協力体制の構築が必要だとありました。

ディスカッションでは、「再任用の人から経験を伝授してもらう」と解決案のひとつが出ました。

私も、困っている自治体の現場で、32年の環監経験を基に支援したいという思いが湧いてきました。

【軸があれば、ぶれない】

建築物衛生法に基づく立入検査のとき、施設側から「省エネを優先してやっていて、これ以上の費用はかけられません」と言われて、困りましたと報告がありました。

費用の点で改善できない。こうした声は、現場で聞くことがありますね。

原点に戻って考えてみましょう。

環監は、誰のため、何のために働いているのでしょうか。

保健所の役割と同じように、市民の命・健康をまもるために、感染症予防・感染症拡大防止の仕事をしているのではないでしょうか。

建築物衛生法であれば、建物のなかにいる人たちの健康をまもることが最大の目的だと思うのです。

その目的すなわち目標を、建物オーナー、建築物環境衛生管理技術者、保健所・環境衛生監視員の3者が共通してもつことが大切だと感じます。

まず、3者が同じ方向を向くことです。

その次に、具体的な改善方法を一緒に考えていくわけです。

その過程で、最初に、オーナーや管理技術者に改善案を考えてもらい、そのあとに共に改善案を評価・検討していくというやり方があるでしょう。

環監の視点・考え方として、「市民の命・健康をまもる」という軸をもっていると、考えがぶれないと思います。

【私の視点】

自分ごととして考えると、行動の変化につながります。

行動変容の本質がここにあり、環監の衛生指導の現場につながるものだと思っています。

<ベテランがいない>から、こう考えました。

市民の命・健康を守るうえでの自治体の格差が、地域の違いであってはならないと思っています。

全国の保健所・環境衛生監視員の力量が、どの地域でも一定の水準以上のものにあり、日常時だけでなく、災害時や感染症拡大時にも市民の命・健康を守ることに生かされなければならないと思います。

全国自治体の環境衛生監視員の皆様のために力を尽くしたいと思います。

【ご案内】

【環監育成講座・オンライン】

保健所・環境衛生監視員対象、現場へ行くのが楽しくなる! 講義とワークショップを通じて、専門性と現場実践力をアップさせる講座を開催します。

【レジオネラ症対策オンライン講座】

保健所・環境衛生監視員対象、衛生指導に自信がもてる! 現場動画解説と講義、ワークショップを通じて、環監視点から現場理解が深まり、衛生指導に自信がもてるようになる講座を開催します。

・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。

・課題の解決につながる講座をご用意しています。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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