環監・保健師のための環境衛生【入門】水道蛇口の整流器(泡沫キャップ)に注目する

【私の視点】
保健所・環境衛生監視員の経験から、保育園調理場の食器洗い場所の混合水栓蛇口の水について、水質検査で大腸菌検出になった事例があります。
原因の一つと考えられたのが、蛇口整流器(泡沫キャップ)のメッシュ部分の汚れでした。

第4回HWH(Hospital Water Hygiene)研究会学術集会の会場にて

2022(令和4)年11月下旬、都内で開催された、病院レジオネラ関係の第4回HWH(Hospital Water Hygiene)研究会学術集会に参加しました。

会場では約30人が出席し、多くの人がオンライン参加しました。

特別講演のあと、シンポジウムがあり、次のとおり国内の事例、設備・管理・対策の報告がありました。

1 水道蛇口整流器が関与したと考えられた Mycobacterium paragordonae の Peudo-outbreak とその対策
高城 一郎氏(宮崎大学医学部附属病院 感染制御部 部長)

2 医療施設における水環境に関連した微生物伝播のオーバービュー
中村 造氏(東京医科大学病院 感染制御部・感染症科 准教授 / 副部長)

3 感染防止対策加算 I 施設における、浴室・シャワーヘッドの衛生管理に関する実態調査
橋本 明子氏(特定医療法人新生病院)

4 各種水系のレジオネラ対策
縣 邦雄氏(アクアス株式会社 技術顧問)

5 CDC tool kit の紹介
黒木 俊郎氏(岡山理科大学 獣医学部獣医学科 医動物学講座 教授)

私が関心を寄せたひとつが、水道蛇口整流器(泡沫キャップ)の報告です。

【ご講演から私の理解した点】

・整流器(泡沫キャップ)とは、水道蛇口の先端に装着される、流れを整えて水はねを抑えるメッシュ状の物である。

・整流器の素材は、ステンレスか樹脂が多い。

・注目したのは、非結核性抗酸菌(NTM)症である。結核と違い、人感染はない。

・最近の水質問題事例① 2019年11月22日、羽田空港のしょっぱい水。塩化物イオンが基準30倍となった。

・最近の水質問題事例② 2021年12月17日、群馬大学医学部付属病院、空調用水の混入で窒素化合物などが検出され、水質基準を超えた。乳児10人、メトヘモグロビン血症を発症した。

・今回の高城氏の病院施設調査からわかったこと
 
・整流器のメッシュ点検:工事した箇所の材料破片が別の箇所へ流れていた。

・蛇口の数が増えた。416→759個
 
・使っていない蛇口が増えた。

・菌が8カ所で検出された。

・患者飲用水はペットボトルを使用した。

・患者の検査前には、水道水でうがいしない。

※NTMの多くは水中の低い残留塩素濃度、0.1mg/Lで抵抗性があり、生菌となる。

・整流器の写真約20枚を見ると、構造、色、付着物、さまざまである。

・家庭の整流器からも菌検出があった。

・再装着で2週間後に再び菌が検出されたので、整流器をはずした状態にしている。

【私の視点】

ご報告後に、私から情報共有と、高城氏へご質問をしました。

◎私からの情報共有

保健所・環境衛生監視員の経験から、保育園調理場の食器洗い場所の混合水栓蛇口の水について、水質検査で大腸菌検出になった事例があります。

原因の一つと考えられたのが、蛇口整流器(泡沫キャップ)のメッシュ部分の汚れです。

メッシュ部分のATP拭き取り検査で、3万RLU超の値でした。

同時におこなった拭き取りの大腸菌簡易検査で、陽性となりました。

食器洗浄時に湯を使用するため、比較的温度の高い湯が蛇口使用後に末端付近に微量に残ることが頻繁にあったと考えました。

保育園の話では、10年間、同じ状態で使っていたそうです。

徐々に微生物が繁殖した可能性があると感じたのです。

水質の再検査では、泡沫キャップを外し、蛇口を火炎殺菌してから、採水がされました。

検査結果は、大腸菌不検出になりました。

施設では、保健所からのアドバイスのとおり、泡沫キャップを新品と交換しました。

加えて、蛇口の使いおわりに、消毒の塩素が含まれる水道水を流すようになりました。

こうして保育園では、安心して水を使えるようになったのです。

◎質疑応答

質問
今回の報告事例で、整流器を再装着して2週間後に、再び菌が検出されたとあります。再装着前に、どのような洗浄・消毒をしたのでしょうか。

回答
新品と交換しました。整流器の洗浄・消毒の方法については検討中です。意見交換したいと思います。

◎考えたこと
整流器の衛生管理について、環監の視点から取り組むことができると思いました。

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【実績】

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

・2022年、かながわ疫学勉強会(主催:元神奈川県食品衛生監視員・小池剛氏)で「感染症と空気環境」(オンライン)の講師をつとめました。

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