環監・保健師のためのレジオネラ症対策【入門】水害被災地の泥とレジオネラ症
【私の視点】
河川氾濫や堤防越水等の水害被災地では、市街地等に広がった浸水に伴い、河川の底や堤防付近等の泥が多量に運ばれた後、乾燥して土埃となって空気中に舞いレジオネラ肺炎を引き起こす可能性があります。
レジオネラ症感染予防のため、マスクの着用が重要です。
2022(令和4)年11月中旬、オンライン報告会「静岡県で家屋浸水8000棟以上、PBVスタッフが見た台風15号被害」(主催:一般社団法人ピースボート災害支援センター)を視聴しました。
80人以上が視聴しました。
報告者は、小林深吾氏、大塩さやか氏、川村勇太氏です。
主な報告内容は、次のとおりです。
1 静岡県の被害状況
2 活動概要
【報告から私が理解した点】
・2022年9月23日(金)夜~24日(土)朝に災害発生
・24時間積算雨量:416.5mm
・静岡市:床上浸水4272棟
・静岡市葵区の山沿いで浸水被害多数
・ビニールハウス内まで土砂が入った
・災害ごみが家の前に並ぶ。家具類。
・畳がはがされ、床下の土が見える家がある。
・活動概要:9/28~、葵区、清水区
・炊き出し:3日間、葵区4カ所、計470食
・家屋被災対応:静岡市清水区、巴川流域
もともと50cmのかさ上げあり。
・被災家屋:床上20~70cm
・カビ発生で、災害ボランティアセンターへ相談あり
床下のアオカビ発生
【私の視点】
災害発生の翌日、2022(令和4)年9月25日(日)に、私は、市街地に浸水被害が広がった静岡市清水区を調査で訪れました。
JR清水駅から徒歩10分くらいの、巴川の流域です。
調査の目的は、水害被災地の泥のなかに、感染症の一つの原因菌であるレジオネラ属菌の存在を調べることです。
これまでも、厚生労働科学研究・レジオネラ症対策研究班の活動のなかで、水害被災地の泥のなかに、肺炎の原因菌のレジオネラ属菌が存在するのかを調べて、感染予防の注意喚起につなげてきました。
2019(令和元)年には、令和元年台風19号被災地のいわき市での調査の泥から、レジオネラ属菌が検出されました。
詳細な報告は、IASR(国立感染症研究所、病原微生物検出情報)Vol.41 No.11(2020.11)に掲載されています。
タイトルは、「令和元年台風19号被災地の泥から検出されたレジオネラ属菌について」です。
これまでの東日本大震災に関連するレジオネラ症の報告のうち、がれき撤去作業や浸水建造物清掃が感染経路と考えられるものが4例ありました。
津波と同様に、河川氾濫や堤防越水等の水害被災地では、市街地等に広がった浸水に伴い、河川の底や堤防付近等の泥が多量に運ばれた後、乾燥して土埃となって空気中に舞いレジオネラ肺炎を引き起こす可能性があります。
水害被災地での注意点として、土壌、泥等の土埃からのレジオネラ症感染予防のため、マスクの着用が重要です。
今後も、水害被災地の泥に生息するレジオネラ属菌の調査を継続し、被災地での注意喚起、健康管理につなげていきたいと思います。
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【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。