環監・保健師のための防災【入門】新聞紙面から何を切りとるか
【私の視点】
読み手が、軸になる視点をもつことが大切だと思います。
ノロウイルス記事の小見出しに「水不足の避難所」の文字がありました。
水が十分に供給されていないときに、感染症発生のリスクが高まることが読みとれます。
2022(令和4)年8月下旬、第129回げんさいカフェ「温故知新・伊勢湾台風後の報道から都市防災の未来を考える」(主催:名古屋大学減災連携研究センター、会場・オンライン)に参加しました。
講師は、災害情報学者の倉田和己さん(名古屋大学減災連携研究センター特任准教授)です。
今回の企画・ファシリテータは、隈本邦彦 さん(江戸川大学教授/名古屋大学減災連携研究センター客員教授)でした。
隈本さんは、私にとって大学の同級生であり、NHKの科学文化部の記者を長年つとめました。
◎ご講演から私が理解した点
・伊勢湾台風とは
1959年(昭和34年)9月26日夕刻に紀伊半島先端に上陸した台風15号(伊勢湾台風)によって、台風災害としては明治以降最多の死者・行方不明者数5,098名に及ぶ被害が生じた。(内閣府ホームページより)
・伊勢湾台風では、2カ月間、水が引かなかった地域があった。
・新聞紙面から振り返る。
・『災害情報論入門』弘文堂、中川2008より
新聞紙面:ニュース性(珍しさ)に依存
社会の動向、空気感の移り変わりを新聞紙面から感じとれる。
・14日かかって死者の全体把握がほとんどできた。
・3日目くらいでは、全体が見えていなかった。
・新聞広告から社会の動向を感じとる。
・電力会社の広告
台風翌日の27日夕刊で、
<広範囲、且つ長時間に亘って配電不能の状態に陥り・・・・・・>
・ガス会社の広告
27日に、
<電力が停まりましたのでガスの製造が困難になりました>
・鉄道会社の広告
台風2日後に、
<減水の見通しも困難で開通遅延の事情下にあり>
・四日市の工場の広告
1週間後の2日朝刊、
<お蔭をもちまして工場内は被害もなく・・・・・・>
・デパートの広告
1カ月後、
<七五三支度>
・なぜ、いまさら、伊勢湾台風なのか。
・きょうの話は、未来予測ではない。
・災害後の社会はこんなにもままらないという事を実感してほしい。
・「ままならない」世の中を、賢く上手に生きる。
【私の視点】
新聞紙面は、ニュース性(珍しさ、新しさ)に依存するので、現場で継続する問題がそのまま紙面に投影されているわけではないことを知りました。
ご講演で、広告の内容から社会の動向を見る視点は面白いと思いました。
新聞から何を切りとるか。
読み手が、軸になる視点をもつことが大切だと思います。
私の手元に、『平成28年熊本地震1カ月の記録』熊本日日新聞特別縮刷版(熊本日日新聞社)があります。
発災直後からの1カ月の主な紙面が印刷されています。
私の視点から記事に色別に付せんを貼ってあります。
避難所、避難生活に関係する記事に目をとめたのです。
そのなかで、付せんにキーワードを書いたものがあります。
「ノロウイルス」「拠点避難所」「食中毒」「断水」「車中泊」「仕切り」
多くは、衛生、健康に関係する内容です。
ノロウイルス保有者の汚物や吐物を感染源に、多数の感染者を発生させる可能性のあるノロウイルス感染症は、避難所で注意すべき感染症のひとつです。
ノロウイルス記事の小見出しに「水不足の避難所」の文字があり、水が十分に供給されていないときに、感染症発生のリスクが高まることが読みとれます。
軸になる視点をもっていると、新聞紙面から読みとれる、感じとれるものがあります。
【ご案内】
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・環監のための、防災、レジオネラ症対策、仕事術、講座情報など最新情報をメールで真っ先にお届けしますので、ご希望される場合、①所属、②担当者名、③メールアドレスを、「お問い合わせはこちら」までお送りください。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。