【注意】冬季の地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その2)
【避難所・避難生活の衛生面の注意】
①食事(食べ残しは捨てる)
②仕切り(段ボールは断熱性がいい)
③水道の取り扱い(元栓を閉める)
上の画像をクリックすると、pdfが開き、印刷可能です。ご活用ください。
元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。
次のとおり、冬季の地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策の注意点(その2)を、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。
お役立てください。
1 食事
(1)食べ残しは捨てる
以前、災害時の避難所の衛生シンポジウムでファシリテーターをつとめました。
その際、報告者の保健所・食品衛生監視員が繰り返した言葉があります。
「提供される食品はすぐに食べてください。残したものを後で食べるのは、だめです。もったいないと思わず、廃棄してください」
食中毒を出さないための、いちばん大切な注意点です。
(2)食品等の保管場所は日が差し込まない所に
食品衛生法では、保存方法が定められている食品があります。
食品の表示例では、「直射日光を避け、常温で保存してください」「要冷蔵(10℃以下)」「10℃以下で保存すること」があります。
表示された保存方法のとおり、保管場所へ振り分けます。
冷蔵・冷凍設備がなく食品の適切な温度管理ができない場合、できるだけ速やかに調理し、食べることが大切です。
(3)消費期限・賞味期限を確認する
生鮮食品は、消費期限を確認し、期限を過ぎたものを使用しないことです。
賞味期限が切れた食品は、同様に使用しないことが望ましいです。
(4)搬入後すぐに食べる
市販品以外で、避難所以外の場所で調理された食品については、原材料、調理行程等の履歴が不明のため、搬入後ただちに食べるのが原則です。
過去の例で、食品類を冷めないように保温した状態で保管して、細菌類を増やしてしまったことがありました。
搬入後の保管方法は、たとえば、10℃以下もしくは60℃以上で保管するとし、2時間以上経過したものは廃棄するのが望ましいです。
(5)調理従事者は手袋を着用する
調理従事者は、手袋を着用して作業を行います。
作業工程が変わるごとに手袋の交換あるいは洗浄・消毒をします。
手袋の入手が困難な場合、手指に傷のある作業者は、原材料の処理や下膳された食器類の洗浄作業をします。
(6)体調不良者は調理に従事しない
過去5日間、下痢や嘔吐等の消化器症状がある場合、調理作業への従事を控えることが重要です。
※ 災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください
2 仕切り(パーティション)
冬季の保温に、段ボール製仕切り、段ボールベッドが有効です。
仕切りは、複数のメリットがあります。
・プライバシーの空間をつくることができる。
・保温効果がある。
・飛沫感染予防ができる。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大時には、飛沫感染予防に高さ140~150cm 以上のパーティションが推奨されました。
新型コロナの前は、高さ90cm 程度のパーティションが使われる現場を見ました。
高さ90cm は、昼間には通路を歩く人から中の避難スペースが見え、夜に段ボールベッドで寝るときにはお互いが見えなくなる高さです。
犯罪防止とプライバシー確保の両面から利点があります。
保温の点からは、高さがあるほうがいいかもしれません。
家族単位で、防災テント状の仕切りを使う方法もあります。
私が主宰する自主研究「環監未来塾私塾」でご講演いただいた、日本赤十字看護大学附属災害救護研究所・災害救助技術部門客員研究員の栗栖茜氏のご意見を理解すると、次のとおりです。
冬季の避難所では、体からの放熱を使い、体のまわりを暖めるには、段ボール製パーティションができるかぎり接近しているほうがいいとされます。
体の放熱により、パーティションを温めることができるからです。
段ボールは、空気層があり、熱が逃げやすく温めやすい構造になっています。
パーティションの壁は温まりやすく、低体温症になりにくい環境をつくることができます。
『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)のP124~P129に、段ボール製パーティションの詳しい説明があります。
そのとき、床面に断熱材を置いたり、就寝時に天井に覆いをつけたりすることが暖かさの確保に有効です。
さらに、段ボールベッドが使用されれば、伝導により熱が奪われることを抑えることができます。
3 水道の取り扱い
断水時に、水道元栓を閉めることで、水道本管から泥水・濁水などの流入を抑えることができます。
断水後の通水では、当初、泥水や濁水が混じることがあります。
私は、保健所・環境衛生監視員の仕事で、ビルやマンションで水道水を貯める受水槽の衛生管理指導をしていました。
マンションの住民から、濁り水の相談があり現地調査をしたことがあります。
濁り水の原因は、歩道下の公共の水道管工事でした。
工事のお知らせは、事前にあったようでした。
実際には、マンションの水道元栓が閉められなかったために、工事の泥水・濁水が受水槽へ入り込み、水道蛇口から濁り水が出てしまったのです。
マンションでは、水を安全に飲むため、専門清掃業者による受水槽の清掃をおこない、水質検査で適合してから使用再開しました。
同じようなことが、断水後の水道復旧の当初に、起きる可能性があります。
断水時に水道元栓を閉めておくことで、泥水・濁水の流入を抑えることができます。
※ 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。
画像をクリックすると、pdfが開きます。
【ご案内】
災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください
災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策の講師ご依頼につきまして、お気軽にお問い合わせください
『災害時・避難所の衛生対策のてびき』ご購入をお考えのかたは、こちらから注文ができます。
【実績】
・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。