【環監・保健師入門】病院施設とレジオネラ症対策・給水系

【環監の視点】
病床数が200超の病院施設や、大規模な高齢者施設などで、築年数が20~30年を超え、水を送る給水管の交換がされていない場合、給水管末端でレジオネラ属菌が検出される可能性があると考えられます。

残留塩素測定器

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年9月下旬、私が企画構成しました、第10回保健所環境衛生監視員講座(主催:一般財団法人日本環境衛生センター、半日オンライン)が開催されました。

全国・保健所環境衛生監視員62名のかたが参加されました。

テーマは、「公衆浴場等のレジオネラ症対策」です。

講義のなかで私が注目したのは、「病院レジオネラ症防止対策指針」(神奈川県生活衛生部生活衛生課 関戸沙織氏)です。

私が指針について理解した内容と、私の経験などを含めてご紹介します。

テーマ別に、「給水系」「冷却塔」「加湿器」を、3回に分けて見てみたいと思います。

今回は、給水系をご紹介します。

【神奈川県の指針】

引用元:神奈川県 病院におけるレジオネラ症防止対策の指針(発行:神奈川県健康医療局)

<給水系>

<レジオネラ属菌が増殖しやすい場所>

・ 貯水槽:使用頻度が低く、貯水槽の容量が大きいもの。

・ 配 管:配管内で長時間滞留している場所。サビが発生し、微生物の付着が起こりやすい場所。

・ 給水栓:使用頻度が低い場所。給水末端。

出典元:神奈川県 病院におけるレジオネラ症防止対策の指針 P7(発行:神奈川県健康医療局)

<衛生管理のポイント>

◎定期的な給水設備の点検・清掃

点検:貯水槽・貯湯槽(月1回)、水栓のコマ・シャワーヘッド(6か月に1回以上)

清掃:貯水槽・貯湯槽・水栓のコマ・シャワーヘッド(年1回以上)

(※水栓のコマとシャワーヘッドは分解して洗浄する)

◎給水の管理

・ 消毒効果の確認のため、給水末端で残留塩素濃度を週1回程度測定し、0.1mg/L 以上であることを確認する。

・ 給水管内の溜まり水を排出するため、使用する蛇口で定期的にフラッシングを行う。

(※フラッシング:給水又は給湯を蛇口から一定時間放流し続けること)

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【給水系の菌検出事例】

過去の病院での菌検出事例につきまして、第19回環監未来塾私塾・講演会で、国際親善総合病院・看護師長(感染防止対策室副室長)の中村麻子氏からご報告いただきました。

ご報告の要点は、次のとおりです。

①病院の末端給水栓から、レジオネラ属菌が検出されました。

②原因は、不十分な遊離残留塩素濃度と、使用頻度が低い給水栓・不要配管の存在でした。

③対応として、不要配管の除去、次亜塩素酸ナトリウムの添加、使用頻度の低い末端給水栓の毎日6分間放流、病室洗面台の毎朝1分間放流がされました。

④自動水栓でタイマー式自動排水装置を設置して、検証をしています。

中村氏は、給水系のレジオネラ症対策として、給水管の滞留水の防止、末端遊離残留塩素濃度0.9mg/Lの維持が有効だと強調されました。

【医療福祉施設のレジオネラ症対策】

私は、専門誌『病院設備』(2020年10月号、一般社団法人日本医療福祉設備協会)の特集「病院における水と水回りの安全性」で「医療福祉施設におけるレジオネラ症対策」の原稿を書きました。

詳細を、ご覧いただけます。
こちらをクリックすると、ご覧いただけます。 病院設備2020年10月号(病院レジオネラ症対策).pdf

【環監の視点】

病床数が200超の病院施設や、大規模な高齢者施設などで、築年数が20~30年を超え、水を送る給水管の交換がされていない場合、給水管末端でレジオネラ属菌が検出される可能性があると考えられます。

その理由は、次のとおりです。

詳しくは、上記の『病院設備』の原稿をご覧ください。

① 滞留水の存在

② 配管内のサビつき

③ 一定温度の維持

根本的な解決には、定期的な給水管の交換が必要になります。

このような考えは、マンションの大規模修繕計画と通じます。

大規模修繕計画の一例では、20~25年に1度の給水管の更新工事の実施があります。

病院施設、高齢者施設等は、マンションや事務所ビルと同様に、建物が衛生上支障なく維持管理されていくために、給水管の交換等の中長期的な修繕計画の策定・実施が必要だと考えます。

また、新築・改築の建物設計時には、図面に将来の定期的な配管交換を前提として、容易な配管の交換作業を可能とするように建物内のダクトスペースを確保することを提案したいと思っています。

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2024(令和6)年度のオフィス環監未来塾の講座一覧表ができました。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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