【環監・保健師入門編】防災・車中避難の注意点
【私の視点】
冬の車中避難の健康被害の可能性として、①一酸化炭素中毒、②低体温症、③エコノミークラス症候群が挙げられます。
特に、短時間で死亡の可能性のある一酸化炭素については、車の排ガス、自家用小型発電機などから発生することを知っておくことが重要です。
2023(令和5)年2月中旬、「震災・災害シンポジウム2022、第9回新潟県中越大震災シンポジウム~災害支援と市民社会保護~」(オンライン1日開催、主催:エコノミークラス症候群予防・検診支援会)に参加しました。
オンラインで約70人が参加しました。
主な発表プログラムから、私が注目したのは「避難場所としての車中泊の条件」です。
私がお聞きした主な内容は、次のとおりです。
「車中泊を分散避難場所にするために」 新潟大学医歯学総合研究科特任教授 榛沢和彦 氏
「弾性ストッキング協会の取り組み」 福助(株)菊池勝 氏
「やむをえない車中泊避難のリスクと備えについて」トヨタ自動車(株)社会貢献推進部 諸留逸 氏
「災害用弾性ストッキングの自動販売機」 大塚ウエルネスベンディング(株) 内藤慎一 氏
「厳冬期車中泊の問題点と対策」日本赤十字北海道看護大学教授 根本昌宏 氏
【ご講演から私の理解した点】
・エコノミークラス症候群は20年後にも健康影響の可能性がある。
・長野県には、車中避難場所の一覧表がある。
長野県ホームページ「車で避難・安全確保、避難場所マップについて」で、避難場所名、住所、収容可能台数、トイレ・自動販売機の設備等の一覧が閲覧可能。
・新型コロナ影響前の南海トラフ地震想定で、避難所外約420万人避難として、半数が車中避難した場合、全国で約210万人が車を使う。約90万台となる。
・車中避難に向かない人。
例:3カ月以内に手術を受けた。感染症に感染している。過去にエコノミークラス症候群と診断された。妊娠中など。
・エコノミークラス症候群の予防
①水分をとる(トイレの問題解決も)
②定期的な運動をする
③弾性ストッキング、着圧ソックスを利用する
④車の中で寝る姿勢を工夫する
・トヨタ自動車が『車中泊避難ヘルプBOOK』pdf版を作成している。
・トヨタ自動車が、車中泊避難のポイントを動画で作成している。
・冬の車中泊で、健康被害のキーワードは、次のとおり。
①一酸化炭素中毒
②低体温症
③エコノミークラス症候群
・根本氏の講演中の動画から、車の排ガスの排気口近くで、一酸化炭素濃度は、500~600ppmとなった。
・根本氏の講演中の動画から、自家発電機の排気の一酸化炭素濃度が、40~50秒後に、1,000ppmとなった。30分以内で死亡の可能性がある。
・根本氏から、日本テレビ制作の『実証「車中泊」なに必要?"最強寒波"』が紹介された。
【車中避難のポイント】
自著『災害時・避難所の衛生対策のてびき』根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター)の、P81に車中避難で必要な避難用品を、P82に車中避難の注意点を挙げて、解説しています。
◎車中避難で必要な避難用品の例
・携帯電話、スマホ(非常連絡用)
・水(脱水予防)
・弾性ストッキング、着圧ソックス(エコノミークラス症候群予防)
・寝具、寝袋
・バスタオル(車内シートの凹凸解消)
・ウインドーネット(防虫、日よけ用)
・断熱シート(車内の高温化防止)
・すべての窓を隠す暗幕カーテン類(プライバシー、安眠用)
◎車中避難の注意点
・トイレ対策(携帯トイレ等の用意)
・エコノミークラス症候群を予防する(水分補給、体操など)
・日陰をつくる(夏)
・エンジンをかけっぱなしにしない(排ガスによる一酸化炭素中毒に注意、囲われた場所に駐車しない)
・座席をフラットにする(睡眠時)
・人気のない場所を避ける(防犯上)
・傾斜地に駐車するとき、ストッパー等を置く
・近隣の店を把握する
・マナーを守る(駐車ルール、まわりに迷惑をかけない)
・虫対策(夏、ウインドーネット等)
・寒さ対策(冬、毛布、寝袋等)
【私の視点】
車中避難には、リスクがあることを知っておくことが大切です。
冬の車中避難の健康被害の可能性として、①一酸化炭素中毒、②低体温症、③エコノミークラス症候群が挙げられます。
特に、短時間で死亡の可能性のある一酸化炭素については、車の排ガス、自家用小型発電機などから発生することを知っておくことが重要です。
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【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。