【環監・保健師向け】レジオネラ・温泉の飲用
【レジオネラ・温泉の飲用】
1 温泉の飲用
2 温泉の飲用許可
3 温泉利用基準(飲用利用基準)
4 温泉法関係の環境省関連ページ
5 温泉のレジオネラ属菌検出の原因
6 温泉スケール
7 環監の視点
こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『レジオネラ症対策のてびき』著(倉文明監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
2024(令和6)年12月上旬に、第44 回「レジオネラ対策シンポジウム」(主催:NPO入浴施設衛生管理推進協議会)が都内で開催されました。
全国の行政関係者、浴場設備・消毒剤等会社関係者、研究者など、会場12名、オンライン120名の皆様が参加されました。
シンポジウム内容は、次のとおりです。
① 特別講演 温泉施設における微生物の調査事例とその特徴
公益財団法人中央温泉研究所 研究部長 滝沢 英夫 氏
② 講演1 現場におけるレジオネラ症対策のリスク認知
~リスクコミュニケーションと温泉等レジオネラ属菌検出ハザードマップへ~
NPO 浴衛協 理事 小彈正 公彰 氏
③ 講演2 現場活動からの報告
~山形県で継続中のレジオネラ症感染予防への取組み~
NPO 浴衛協 東北支部長 玄地 学 氏
④ 講演3 分析試験(者)現場からの報告
~レジオネラ属菌汚染事例と新発行第5 版レジオネラ症防止指針の着目点~
NPO 浴衛協 関西支部 福原 千佳子 氏
⑤ パネルディスカッション、質疑応答、まとめ
貴重な内容ですので、シンポジウムに参加して私が理解した内容を、温泉の飲用を中心にご紹介します。
1【温泉の飲用】
環境省のパンフレット『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』(監修:一般社団法人日本温泉気候物理医学会)に、温泉の飲用の注意点が載っています。
主な内容は、次のとおりです。
・療養として飲む場合:専門医の指導を受ける。
・飲泉許可済みの新鮮な温泉を、清潔なコップで飲む。
・飲む量:1回100~150mL、1日200~500mL
飲用許容量が、ひ素、銅、ふっ素、鉛、水銀、遊離炭酸の項目で示されています。
・原則、16歳以上。
・持ち帰って飲むのはやめましょう。
・食前30分前くらいに飲みましょう。
また、国の通知では、「飲用する際には、誤嚥(ごえん)に注意すること」と書かれています。
2【温泉の飲用許可】
温泉を公共の浴用・飲用にするとき、都道府県知事または保健所設置市(区)長の許可が必要です。
飲用の許可申請には、温泉の温度・成分、その分析及び検査を行つた登録分析機関の名称・登録番号が必要です。
温泉に含まれる一般細菌・大腸菌群の数・有機物の量について、検査結果を記載した書類が必要です。
3【温泉利用基準(飲用利用基準)】
環境省のホームページに、温泉利用基準(飲用利用基準)が載っています。
主なところを見てみましょう。
微生物学的な衛生管理は、次のとおりです。
< 飲用に供する温泉は、飲泉口において採取したものについて、年 1回以上、一般細菌及び大腸菌群の検査を行い、別表の基準値に適合していることを確認すること。また、着色が認められる場合等必要に応じて、全有機炭素を検査すること。
検査の結果、不良の判定を得たときは、直ちに飲泉を中止し、その原因を排除すること。>
<一般細菌、大腸菌群等の検査結果を記録し、都道府県知事等から測定結果について報告を求められたときは、直ちに提出できるようにその記録を保管しておくこと。>
検査項目と基準値は、次のとおりです。
・一般細菌: 集落数 100 以下/1ml中
・大腸菌群: 検出されないこと
・ 全有機炭素(TOC) :5mg/L 以下
なお、大腸菌群とは、大腸菌のようなもので、大腸菌そのものより広く捉えています。
臭気、味、色度、濁度については、異常でないことを確認することとしています。
レジオネラ属菌の項目は、ここには入っていません。
しかし、水質検査をして、レジオネラ属菌検出時には、誤嚥・感染の可能性を考え、飲用見合わせにするのが望ましいと考えます。
◎飲泉用コップの管理
自身専用、または使い捨てコップなど衛生的なものを用いることになっています。
4【温泉法関係の環境省関連ページ】
環境省ホームページに、「温泉の保護と利用」ページがあり、温泉法、温泉法施行令、温泉法施行規則、温泉利用基準などの資料を調べることができます。
「温泉の保護と利用 関連資料」と検索すると、該当ページがヒットします。
5【温泉のレジオネラ属菌検出の原因】
ある飲泉場の水質検査では、レジオネラ属菌が 20 CFU/100mL 検出されています。
温泉井戸は、鋼管のまわりを保護するために、地表近くでセメンチングと呼ばれる、セメント施工をしています。
こうした浅い部分のセメント化が省略されると、地表の水や土壌が入りこみ、レジオネラ属菌を含む微生物が検出される可能性があります。
微生物の芽胞形成菌は、耐熱性、耐薬性をもっています。
こうした菌が固まりとなり、アメーバの住処(すみか)となり得ます。
最終的に、培養体のアメーバがレジオネラ属菌を増やしてしまう可能性があります。
レジオネラ属菌の有無の確認は、温泉井戸の出口で採水して、水質検査をおこないます。
6【温泉スケール】
ご講演のなかで、温泉成分のスケールが付着した写真が紹介されました。
・温泉井戸から温泉を運ぶ配管の内部(茶色、乳白色等)
・温泉水槽の天井から水面下まで伸びた塩ビ管の外側(薄茶色)
こうしたスケールが、前記のように、培養体のアメーバの住処となり、最終的にレジオネラ属菌を増やしてしまう可能性があります。
7【環監の視点】
かけ流し温泉の浴槽水からも、循環ろ過の浴槽水と同様に、レジオネラ属菌が検出されることがあります。
温泉井戸の不十分な構造や配管内部のスケール付着などが原因で、アメーバ、レジオネラ属菌の増殖の可能性があります。
安全な温泉の飲用のためにも、定期的に水質検査を実施して、レジオネラ属菌の不検出を確認するのが大切だと思います。
【ご案内】
【2024(令和6)年度講座】
2024(令和6)年度のオフィス環監未来塾の講座一覧表をご覧いただけます。
【2025(令和7)年度講座】
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【実績】
(書籍)
・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載されている「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。
・2013年、『レジオネラ症対策のてびき』倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)を出版しました。
(活動)
・2017年、広島県三原市の公衆浴場施設で起きたレジオネラ症集団感染事例において、現地の三原市で次のとおりご協力しました。
①行政の対応強化(職員研修会の開催、対策指針・対策事業の提案など)
②管内施設の衛生管理徹底(レジオネラ症対策講習会の開催、講習会後の個別相談など)
③事故発生施設への対応(現地調査・事故の原因究明の協力、改善方法の検討など)
(講師)
・2024年、宮崎県・宮崎市、施設向け令和6年度レジオネラ属菌汚染防止対策講習会「公衆浴場・旅館・ホテル・福祉施設・医療施設等の入浴設備の衛生管理」の講師をつとめました。
・2024年、(公財)青森県生活衛生営業指導センター、公衆浴場・旅館・ホテル等施設向けレジオネラ症発生予防対策研修会「レジオネラ症対策の基礎知識と入浴施設の衛生管理の方法」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。