【環監・保健師向け】巨大地震注意のとき衛生視点で用意する物
【衛生視点で用意する物】
①避難所へ避難するとき:お尻ふき、他
②在宅避難するとき:水道水のくみ置き
③車中避難するとき:断熱シート類
元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著(根本昌宏監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
8月8日(木)16時43分頃、日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。
地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。
気象庁の発表では、南海トラフ地震の想定震源域で、大規模地震の発生可能性が平常時に比べて相対的に高まっていると考えられるとありました。
世界の事例では、同じ領域で、大規模な地震が7日以内に発生する頻度が数百回に1回程度となっています。
政府や自治体などからの呼びかけ等に応じた防災対応をとってくださいとのことです。
テレビでは、津波浸水ハザードマップなどの確認も呼びかけられました。
巨大地震注意のとき、衛生視点で用意する物を、考えてみたいと思います。
【衛生用品の備蓄】
東京都のホームページに「東京備蓄ナビ」があります。
「東京 備蓄」で検索すると、ヒットします。
このページで、人数、性別・年代、住まいの種類、ペットの有無を入力すれば、水、食品、衛生用品など、7日分の備蓄の目安がわかります。
集合住宅に暮らす単身の男性高齢者の場合、衛生用品の例は次のとおりです。
・除菌ウェットティッシュ:70枚
・アルコールスプレー:1本
・マスク:7枚
・口内洗浄液:630mL
・救急箱:1箱
・常備薬:1箱
・使い捨てコンタクトレンズ:1人1カ月分
・携帯トイレ・簡易トイレ:35回分
・歯みがき用ウェットティッシュ:70枚程度
・ウェットボディタオル:7枚
【重ねるハザードマップ】
国土地理院のホームページに重ねるハザードマップがあります。
「重ねるハザードマップ」と検索すると、ヒットします。
津波、洪水・内水、土砂災害、高潮などの災害種別で、地図上に色で示されます。
たとえば、津波を選択すると、浸水高さで、濃い紫色が20m以上、薄い紫色が10~20m、朱色が5~10mなどと地図に色がついて表示されます。
津波と地形分類と二つ選択すると、津波の浸水地域に重ねて、低地、丘陵、山地などが色別で表示され、どこが低い土地か、どこへ逃げれば標高が高くなるのかがわかります。
【衛生視点で用意する物】
ライフラインが止まったとき、どこで避難生活を送るかを考えて、衛生視点で用意する物を挙げてみます。
集団生活のときは、呼吸器系疾患の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、消化器系疾患のノロウイルス感染症への注意が必要です。
①避難所へ避難するとき
・消毒剤
・石けん類
・マスク
・体温計
・上履き
・タオル(共用しないため)
・紙、ノート類(健康状態記入用)
・ボールペン(健康状態記入用)
・ごみ袋(使用済みティッシュ等入れ)
※お尻ふき
『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)のP71に、避難用品の例の一覧表があります。
猛暑日がつづくようなとき、ライフラインが止まればエアコンや扇風機を使うことができません。
指定避難所の小中学校の避難スペースは、断熱性の劣る屋根や窓面積が大きい体育館より、校舎1階を使うのが、いいかもしれません。
熱中症対策として夜間に寝るのは、室内より、屋外の車中泊やテント泊を選択するのがいいかもしれません。
※能登半島地震発災当初に被災地で活動した保健師のかたが、簡易トイレ・携帯トイレの使用がつづき、「赤ちゃん用のお尻ふきを持ってくればよかった」と話していました。
お尻ふきは、手ふき、体ふきとしても使用ができます。
②在宅避難するとき
水道水を、飲み水用にポリタンクなどに用意することが有効です。
水道水には、浄水場で消毒に有効な塩素剤が添加されています。
通常、末端蛇口で、消毒に有効な遊離残留塩素濃度として、0.3~0.4mg/L 程度があります。
雑菌の繁殖を抑えてくれます。
塩素は、紫外線にあたって分解したり、温度の影響や水の汚れにより消費されたりして、濃度が下がっていきます。
東京都水道局のホームページには、水道水をくみ置く際の留意事項が書かれています。
内容を理解すると、次のとおりです。
・清潔でフタのできる容器に、口元まで一杯に水道水を入れます。
(注意)浄水器の水のくみ置きは、塩素が除去されていますので、雑菌の繁殖につながります。
・塩素の消毒効果は、直射日光を避けて常温で保存すれば3日程度、冷蔵庫で保存すれば10日程度持続します。日付をメモしておくと便利です。
個人的な経験では、常温で2日程度、冷蔵庫で5日程度を目安にするといいと思います。
③車中避難するとき
車中避難で用意する物
・携帯電話、スマホ(非常連絡用)
・水、スポーツドリンク(脱水予防)
・弾性ストッキング、着圧ソックス
(エコノミークラス症候群予防)
・寝具(タオルケット類)
・バスタオル類(車内シートの凸凹解消)
※ウインドーネット(防虫、日よけ用)
※断熱シート類(車内の高温化防止)
・窓を隠すカーテン類
(プライバシー、安眠用)
『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)のP81に、車中避難用品の例の一覧表があります。
※車内に熱がこもらないように、日光を車内の座席シートやプラスチック部分にあてないことが大切です。
昼間、車をシートで覆うのも選択肢のひとつです。
なぜなら、車体の金属に比べて、車内の布やプラスチックの熱容量が大きく、一度、熱くなると熱が冷めにくいからです。
夏季の猛暑日の屋外の車中避難では、安全が確保されれば、扉を開けて、寝るのがよいでしょう。
(注意)車の冷房を使うとき、車庫や閉鎖空間は絶対に避けましょう。エンジンをかけて冷房をすると、排ガス中の高濃度の一酸化炭素が車内に入り、一酸化炭素中毒の死亡事故につながることがあります。
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【実績】
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました