【注意】地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その19)
【保健師活動】避難所の室内アレルゲン低減と呼吸器系疾患予防
①布団干し
②掃除・風通し
③月に1回、大掃除を
④布団の洗濯(コインランドリー、洗濯支援)
⑤空気清浄機の活用
上の画像をクリックすると、pdfが開き、印刷可能です。ご活用ください。
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元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。
次のとおり、【保健師活動】避難所の室内アレルゲン低減と呼吸器系疾患予防について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。
全国保健師長会に情報提供しています。
ご活用ください。
【室内アレルゲンの種類】
・ダニ:体、死骸、抜け殻、糞
・カビ:クロカビ、アオカビなど
・ハウスダスト:ダニ、カビなど
・ペット(動物アレルゲン):犬、猫、小鳥などの上皮、アカ、排泄物、毛など
・花粉:スギ、ヒノキなど
・その他:羊毛、絹、ソバガラ、昆虫(ゴキブリ)など
【ダニの増える条件3つ】
次の内容は、『「水」の安心生活術』中臣昌広著(集英社新書)を参考にしました。
室内でいちばん数が多いのは、体長0.3~0.4mmで乳白色のチリダニです。
1匹ずつを肉眼で確認することはできません。
チリダニの増える条件は、次のとおりです。
➀温度20~30℃くらい、湿度60%以上
②餌があること
人のフケ・アカ、食べかすなどです。
③ダニが卵を産む場所があること
もぐって卵を産むので、わら床の畳やカーペット類が産卵場所になります。
最近の畳は、中がポリスチレンや発泡スチロール、段ボールを固めたものなどで、ダニが増えにくい材質になっています。
【布団のダニの数】
敷布団1m2あたりのダニの量を調べたことがあります。
きれいな敷布団 :ダニ 1~10匹
汚れのある敷布団:ダニ 100匹以上
【ダニアレルゲンと呼吸器系疾患】
ダニアレルギーのほとんどの原因は、室内にいるチリダニの体・死骸・糞などです。
チリダニとは、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニの総称です。
わら床の畳、カーペット、布団にいます。
人のフケやあかなどを食べ、室内のほこりの中に多くみられます。
チリダニの死骸や糞は、呼吸器系疾患のぜんそくやアトピー性皮膚炎の大きな原因といわれています。
微細な死骸の一部や糞は、皮膚や気管支を刺激して、アレルギー反応を引き起こす原因となります。
糞の大きさは、0.01~0.04mmです。
1 布団干し
湿度を下げることは、ダニを減らすために大きな効果があります。
布団を敷きっぱなしにしないことが大切です。
布団を干して湿気を取ることです。
布団干しのあと、布団の表面を表裏で、それぞれ20秒以上、掃除機がけすると、ダニアレルゲン量を1段階下げることができます。
そのとき、ホースの先につける、掃除機付属の布団用ノズルを使うといいでしょう。
2 掃除・風通し
ダニを取り除くため、掃除機で室内を掃除しましょう。
カーペット類は、1m四方あたり20秒以上かけて、掃除しましょう。
週に1~2回、掃除機をかけるのが効果的です。
空気を入れ換えて、室内の湿度を下げることは、ダニを減らすために大きな効果があります。
3~5月には、2時間に1回程度、3~5分間、窓を開け、室内の風通しをよくしましょう。
3 月に1回、大掃除を
月に1回、段ボールベッド、段ボール仕切りなどをいったん移動させて、掃除機を使い室内の大掃除をしましょう。
東日本大震災被災地の避難所では、月に1回、大掃除の日を設けているところがありました。
※生活スペースのブルーシートの撤去を推奨します
ブルーシートは、静電気をもちやすく、埃を集めてしまいます。
吸入性アレルゲンのハウスダストがつきやすく、呼吸器系疾患に影響する可能性があります。
4 布団の洗濯(コインランドリー、洗濯支援)
シーツ類など洗えるものは、定期的に洗濯しましょう。
ダニ由来のアレルゲンは水溶性です。
水洗いで、ついているダニの90%近くを減らすことができます。
布団で水洗いできるものは、2~3カ月に1回程度、洗濯しましょう。
5 空気清浄機の活用
空気清浄機を活用して、空気清浄機のまわりに浮遊するアレルゲン粒子を取りましょう。
スギやヒノキの花粉が室内に入ってくる時期には、空気清浄機を活用できます。
空気清浄機は、機種により性能の違いがあります。
家庭用の空気清浄機は、まわりの1.5~2m程度の範囲をカバーするイメージだと思います。
HEPAフィルター(高性能フィルター)と同程度の除去能力がある空気清浄機は、新型コロナウイルスの除去にも補助的に有効とされています。
避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。
上の画像をクリックすると、pdfが開きます。
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【実績】
・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。