【注意】冬季の地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その17)

【保健師活動】加湿器とレジオネラ肺炎の予防
①加湿器は4つのタイプ
②毎日、新鮮な水道水を容器に入れ換える
③週に1回、清掃・消毒を

加湿器とレジオネラ肺炎の予防

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避難所での加湿器の清掃・消毒(2019年撮影)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、【保健師活動】加湿器とレジオネラ肺炎の予防について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

(レジオネラ症とは)

レジオネラ症は、レジオネラ属菌を原因菌として起こる感染症です。

レジオネラ症の一つ、レジオネラ肺炎は、高熱、全身倦怠感、筋肉痛、吐き気、下痢、意識障害などがおもな症状です。

症状が重くなれば死に至る可能性があります。

潜伏期間は2~10 日間です。

レジオネラ属菌は土壌中や池、沼、水たまりなどの環境中において、どこにでもいる常在菌です。

加湿器の衛生管理が不十分な場合、水容器のなかでレジオネラ属菌が増殖することがあります。

レジオネラ属菌は、肺に侵入して病気を引き起こします。

菌は、ミスト状の細かい水滴であるエアロゾルとともに空気中に舞うため、人がそれを吸い込んでしまうことによって発症の可能性があります。

(過去の加湿器の事故例)

①大分県の高齢者施設の集団発生事例

厚生労働省の平成30年度生活衛生関係技術担当者研修会で、「加湿器を原因とした老人福祉施設でのレジオネラ集団発生事例」が報告されました。

資料は、こちらからご覧いただけます。

その1 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000483754.pdf

その2 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000483755.pdf

②新潟市の家庭用超音波式加湿器が感染源と考えられたレジオネラ症

購入して1カ月の超音波加湿器が使われていました。

浄水器の水が使用され、加湿器本体の水の交換はされていなかったようです。

1 加湿器の4つのタイプ

<家庭用加湿器の種類>

引用元:神奈川県 病院におけるレジオネラ症防止対策の指針(発行元:神奈川県健康医療局)

加湿器の種類には、主に建築物の空気調和設備に組み込まれているものと、家庭などで使用されるものがあります。

そのうち、レジオネラ症防止対策の観点から十分に注意を払う必要があるものは、家庭用の超音波加湿器です。

空気清浄機に、加湿装置が組み込まれているものがあります。

空気清浄機の加湿装置には、気化式が多く使われています。

加湿器では、タンク内などにおいて生物膜が生成されることによって、レジオネラ属菌をはじめとする微生物が増殖しやすくなるので、加湿器のタンク内などに付着する生物膜の生成を抑制し、その除去を行うことが必要です。

<加湿器のレジオネラ属菌が増殖しやすい場所>

家庭用の加湿器については、タンクの汚染が起こりやすく、長期間水を貯めたまま放置される可能性が高く、またタンク内に生成される生物膜も保持されるため危険です。

超音波式は、水を気化させずに常温のまま粒子を放出するため、タンクの水にレジオネラ属菌が含まれていると、そのまま吸引することになります。

2 毎日、新鮮な水道水を容器に入れ換える

毎日、残留塩素を含んだ水に入れ替えることが大切です。

避難所に置かれた加湿付き空気清浄機(2019年撮影)

<使用水>

・ 水道法の水質基準51項目に適合していること。

・ 湯水やミネラルウォーター、井戸水など、残留塩素が含まれない水を使用しないこと。

水道水には、浄水場で入れられた消毒の塩素が残留していて、通常、蛇口末端で、0.4mg/L 程度の遊離残留塩素濃度があります。

水道水を使うことで、レジオネラ属菌の増殖を抑制することができると思われます。

3 週に1回、清掃・消毒を
避難所での加湿器の清掃・消毒(2019年撮影)

< 容器の洗浄方法の一例>

①週に1回、中性洗剤を含ませたスポンジで容器の内側や外側を洗い、水で流します。

②洗浄後、容器の材質で可能な場合、次亜塩素酸ナトリウムの濃度5 ~10mg/L の液に、約1時間、浸して殺菌します。

③殺菌後、容器を水洗いして乾燥させた後、再使用します。

加湿器は取扱説明書があります。

過去に、水を貯める容器の材質や容器の取り出し方法、洗浄消毒方法など、説明書の内容と現実的な衛生管理とにギャップを感じる場面がありました。

※ 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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