【注意】冬季の地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その12)
【保健師活動】避難所の衛生環境をアップさせる布団干しの方法
①布団乾燥機を使う
②専用部屋で除湿器を使う
③晴れた日に車のボンネットに干す
上の画像をクリックすると、pdfが開き、印刷可能です。ご活用ください。
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元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。
次のとおり、「避難所の衛生環境をアップさせる布団干しの方法について」、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。
全国保健所長会・全国保健師長会に情報提供しています。
ご活用ください。
【布団干しのメリット】
①ダニ・カビの抑止
布団をいったん移動させて、寝るスペースの掃除をすることができます。
布団と、寝るスペースに置かれた物を一時移動させることで、空気を通し、湿気を抜くことができます。
カビの発生抑止になります。
掃除機を使えば、床面や寝ているまわりの、ダニ、ダニの死骸・糞、ほこり、塵、食べかすなどを取ることができます。
ダニが増えるのを抑止できます。
②寝るスペースの掃除
掃除をすることで、清潔を保ち、健康維持につながります。
③癒やしの時間
2016年の熊本地震の被災地では、NPO団体がボランティアで避難所をまわり、晴れた日に屋外のブルーシート上にパイプ椅子を並べ、布団干し大会を開いていました。
布団を干す約1時間に、避難者のかた向けに、ハンドマッサージのサービスがありました。
避難者のかたの癒やしの時間になっていました。
今後、ボランティアの方の活動が広がっていくと、癒やしの時間をつくることができるかもしれません。
【備品調達の日数】
布団乾燥機、除湿器など、早ければ、1週間以内に調達可能だと思います。
2011年に東日本大震災被災地の気仙沼市唐桑町で、保健師チームの一員として避難所の衛生対策活動をしたとき、避難所に必要な備品の提案として「掃除機」を挙げました。
提案は、市の統括保健師から災害対策本部へあげられ、1週間以内に未設置の避難所に掃除機が送られて、唐桑町内の8避難所すべてに掃除機が配置されました。
【布団干しの頻度】
1~2週間に1回以上、布団干しをしましょう。
1 布団乾燥機を使う
家庭用の布団乾燥機を使うことで、湿った布団の乾燥ができます。
布団の中の温度が50℃以上になると、ダニは死にます。
ただし、吸入性アレルゲンのダニ死骸やダニの糞は残るので、布団乾燥後、掃除機で布団の表面を吸い取るといいでしょう。
そのとき、掃除機の付属品の布団用ノズル(ホースの先)を使うと便利です。
布団の表・裏、それぞれ20秒以上、掃除機がけするのがポイントです。
布団中のダニ・アレルゲン量を1段階、減らすことができます。
※布団乾燥は、ふだん寝るスペースとは違う場所ですることがポイントです。
なぜなら、布団をいったん他へ移すことで、寝ている場所の掃除機がけができるからです。
布団をそのままにしていると、ダニやカビが増えてしまう可能性があります。
食べ物カスが布団に落ちると、それがダニの餌になるかもしれません。
次の内容は、『「水」の安心生活術』中臣昌広著(集英社新書)を参考にしました。
(ダニが増える条件3つ)
室内でいちばん数が多いのは、体長0.3~0.4mmで乳白色のチリダニです。
1匹ずつを肉眼で確認することはできません。
チリダニの増える条件は、次のとおりです。
➀温度20~30℃くらい、湿度60%以上
②餌があること
人のフケ・アカ、食べかすなどです。
③ダニが卵を産む場所があること
もぐって卵を産むので、わら床の畳やカーペット類が産卵場所になります。
最近の畳は、中がポリスチレンや発泡スチロール、段ボールを固めたものなどで、ダニが増えにくい材質になっています。
2 専用部屋で除湿器を使う
仕切られた部屋に、椅子を並べ、椅子に布団をかけて、除湿器を使用すると、布団の乾燥ができます。
同時に、扇風機の首ふりで布団に風を当てると、効率的な乾燥ができます。
除湿器は、洗濯物の乾燥にも活用できます。
仕切られた部屋でするのは、通常、除湿をすると、室内に熱が出て、室内が暑くなってしまうからです。
冬季の避難所では、布団乾燥後に除湿器使用で温かくなった部屋を、有効利用できる可能性があります。
3 晴れた日に車のボンネットに干す
晴れた日に、温まった車のボンネットに布団を置いて、乾燥するのも選択肢のひとつです。
2011年の東日本大震災被災地の避難所で、保健師の健康教育の場に同席したとき、保健師から提案されたのが、車のボンネットを使う布団干しでした。
最初は、本当にできるのかと思いました。
支援から戻って、自宅近くを歩いたとき、車のボンネットに布団を干す人の姿を見ました。
実践できることを知り、避難所でもできると改めて確信しました。
このやり方のほか、過去の避難所では、体育館の2階の手すりに布団をかけて乾燥するのを見ました。
日が差し込む体育館の2階の歩くスペースに、パイプ椅子を並べ、布団を干すやり方も選択肢のひとつです。
※ 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。
画像をクリックすると、pdfが開きます。
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【実績】
・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。