【注意】冬季の地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その9)

【保健師活動】在宅避難の衛生面の注意
①古い石油ストーブは要注意
②段ボールベッド・仕切りの活用(巡回健康相談で助言を)
③トイレ後(排泄物袋に触れた後は手指消毒を)

在宅避難の衛生面の注意(チラシ版)

上の画像をクリックすると、pdfが開き、印刷可能です。ご活用ください。

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段ボールベッド(イメージ写真)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、在宅避難の衛生面の注意について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

これまで、水害被災地で、浸水被害の1階が使用できないため、2階で在宅避難する実態を見たことがあります。

家の一部損壊により、外から冷たい外気が入ってくることが、何より健康影響の可能性があると思いました。

今回の地震断水時では、一部損壊のなか、冷気が家の中へ入ってくることに加えて、水道水が使えない状況が、健康面、衛生面に影響を与えていると考えられます。

1 古い石油ストーブは要注意

命をまもるため、20年以上経過するような石油ストーブ、石油ファンヒーターは、使用を見合わせて、新品と交換するか、専門業者に点検・整備をしてもらうことが大切です。

部品・装置の劣化で、不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒の可能性があります。

開放型の石油ストーブ(イメージ写真)

製造年は、たとえば、暖房器具の脇にシールで貼られています。

一例では、「99年製」と書かれています。

石油ファンヒーターの脇の製造年表示
(イメージ写真)

現在でしたら、2004年以前のものは、要注意です。

倉庫や物置から、使い古して廃棄していない石油ストーブ・石油ファンヒーターを持ち出して使っているときは、要注意です。

別ページに、一酸化炭素中毒の注意ほか「石油ストーブの衛生面の注意」について詳しい説明があります。
こちら https://kankan-mirai.com/3286/

※ 災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください

2 段ボールベッド・段ボール仕切りの活用(巡回健康相談で助言を)
段ボールベッド(イメージ写真)

在宅避難でも、段ボールベッド・段ボール仕切りの活用が環境改善につながります。

避難所で、段ボールベッドが使われる場面があります。

在宅避難でも、スペースがあれば、段ボールベッドの活用をお勧めします。

テレビでは、自治体により、段ボールベッドの希望者は申し出てほしいとの紹介がされていました。

在宅避難での段ボールベッドのメリット

①床面からの冷えの防止

高さが約35cmあるので、床面からの冷えを抑えられます。

②床面からの埃の吸込の抑止

床から舞い上がる埃の吸い込みを抑えられます。

細菌・ウイルスを含む可能性のある埃を吸い込まないことで、感染症予防にもつながります。

③低体温症の予防

段ボールは空気層があるので、体からの放熱をうけて温まりやすくなります。

段ボールベッドとともに、ベッドまわりの3方に高さ約90cm程度の段ボール仕切りで囲うと、保温性が高まり、低体温症の予防につながります。

※保健師の皆様が巡回健康相談をするとき、段ボールベッドの大きさをメモしておくと、室内に設置可能かを判断できると思います。

※巡回健康相談のとき、携帯用メジャーを鞄に入れておくといいでしょう。

(段ボールベッドの一例)

 縦(幅)194cm × 横(奥行)90cm × 高さ 35cm

※ 災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください

3 トイレ後(排泄物袋に触れた後は手指消毒を)

断水時の在宅避難のトイレは、二つあると思います。

①自宅での携帯トイレ

自宅トイレの便器に携帯トイレをセットして使用する方法です。

別ページに、災害時の防災トイレ4種類の詳しい説明があります。
こちら https://kankan-mirai.com/3207/

②避難所の仮設トイレ

指定避難所や自主避難所などに仮設トイレが設置された場合、在宅避難場所から近ければ、仮設トイレを使うことが考えられます。

①の場合、排泄物の袋を持って、自宅敷地内の保管場所へ置くことになります。

②の場合、共用する仮設トイレのドアノブやトイレ内の箇所に触れることがあります。

いずれも、間接的に手に便付着の可能性がありますので、ノロウイルス感染症を防ぐため、手指消毒あるいはウェットティッシュでの十分な拭き取りが必要だと思います。

トイレに使用した履き物を、室内の生活スペースに持ち込まないことも大切です。

※電動式簡易トイレは、電気が使える状況になるとトイレの衛生確保に有効です。

電動式簡易トイレ(イメージ写真)

避難所に電動式簡易トイレがあれば、それを利用することで、感染症リスクが下がります。

電動式簡易トイレは、排泄後のボタン操作で、便袋の口が自動的に閉まり、切り離されて下に落ちるしくみです。

手の汚染が減り、衛生改善につながります。

テレビの映像から、避難所の責任者の声として、手を汚さずに衛生環境のアップになったと聞きました。

※ 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

画像をクリックすると、pdfが開きます。

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『災害時・避難所の衛生対策のてびき』ご購入をお考えのかたは、こちらから注文ができます。

【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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