【注意】冬季の地震断水時の避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その10)

【保健師活動】ビニールハウス避難の衛生面の注意
①古い石油ストーブは要注意
②プラスチック製ベッド類の活用
③簡易二酸化炭素測定器の設置

ビニールハウス避難の衛生面の注意(チラシ版)

上の画像をクリックすると、pdfが開き、印刷可能です。ご活用ください。

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簡易二酸化炭素測定器(イメージ写真)
(乾電池の使用可能)

元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。

次のとおり、ビニールハウス避難の健康と衛生について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。

全国保健師長会に情報提供しています。

ご活用ください。

テレビニュースで、農業用ビニールハウスで避難生活をする10人余りの方の映像を拝見しました。

生活者の方は、指定避難所とは違い生活環境がよくないと話していました。

当初の1~2週間を超えて、ビニールハウス避難をするのは、健康・衛生上、好ましいとは言えないでしょう。

映像から、指定避難所の集団生活になると感染症リスクを感じたり、気ごころが知れた人たちでいるのが安心だったりして、ビニールハウスでの避難を選んでいるのが伝わってきました。

ビニールハウスの自主避難所は、以前に、中越地震の被災地でもありました。

保健所・環境監視員の視点から、命・健康をまもるために、環境改善ができないかを考えてみます。

狭い空間で多数人が生活しているので、インフルエンザや新型コロナなど感染症が発生すると、ほかの施設へ移動せざるを得ないかもしれません。

私は、以前に参加した避難所・避難生活学会で、海外の災害時の避難所の写真を見ました。

そのひとつでは、軍が野営に使用するような比較的大きなテントが、避難スペースに使われていました。

テント内は、ベッドが4人分、置けるスペースがありました。

そうした大型テントの避難スペースがあると、環境整備がしやすいと推測します。

現実のビニールハウス避難での命・健康をまもるための環境整備を考えます。

1 古い石油ストーブは要注意

命をまもるため、20年以上経過するような石油ストーブ、石油ファンヒーターは、使用を見合わせて、新品と交換するか、専門業者に点検・整備をしてもらうことが大切です。

部品・装置の劣化で、不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒の可能性があります。

開放型の石油ストーブ(イメージ写真)

製造年は、たとえば、暖房器具の脇にシールで貼られています。

一例では、「99年製」と書かれています。

石油ファンヒーターの脇の製造年表示
(イメージ写真)

現在でしたら、2004年以前のものは、要注意です。

倉庫や物置から、使い古して廃棄していない石油ストーブ・石油ファンヒーターを持ち出して使っているときは、要注意です。

別ページに、一酸化炭素中毒の注意ほか「石油ストーブの衛生面の注意」について詳しい説明があります。
こちら https://kankan-mirai.com/3286/

※ 災害時の衛生対策、避難所・避難生活の衛生対策のご質問、ご相談など、お気軽にお問い合わせください

2 プラスチック製ベッド類の活用

スペースが許せば、プラスチック製ベッドの活用が望ましいと思います。

ビニールハウス内は、映像から、土が湿った状態であるのがわかりました。

中に湿気がこもりやすい要因があります。

・雨漏りがある。

・雨や雪の影響で、中に水が流れる可能性がある。

・中で、燃焼器具の石油ストーブやカセットコンロが使われ、水蒸気が発生する。

・中で、洗濯物が干される。

・ビニールの内側に結露がつく。

したがって、室内の湿気により、段ボールベッドが適していないように見えました。

段ボールベッドの弱点は、湿気をもつと強度がさがり、変形しやすくなります。

実際に、2016年の熊本地震被災地の熊本市の避難所で使われていた段ボール仕切りが、梅雨に湿気をもって、変形して傾いている光景を見ました。

ベッド類を入れるとすれば、プラスチック製が適していると思われます。

3 簡易二酸化炭素測定器の設置

ビニールハウスの狭い空間で、換気ができて空気の動きがあるのかないのか、すき間から外気が入り込んでいるのか、映像だけでは不明です。

実際の数値を身近で見るための、簡易二酸化炭素測定器の設置が望ましいと思います。

簡易二酸化炭素濃度測定器(イメージ写真)
(乾電池の使用可能)

デジタル簡易二酸化炭素濃度測定器(イメージ写真)

映像からは、室内に燃焼器具として、石油ストーブが複数置かれ、調理用のカセットコンロが置かれていました。

燃焼器具を使用したとき、二酸化炭素濃度が高くなります。

調理のときは、かならず換気が必要になります。

狭い空間で換気がされないと、外気の二酸化炭素濃度410~440ppmに比べて、30分以内に2,000~3,000ppm以上になる可能性があるかもしれません。

室内の二酸化炭素濃度の空気環境基準は、次のとおりです。

・建築物衛生法:1,000ppm以下

・学校環境衛生基準:1,500ppm以下が望ましい

厳冬期の気温を考えると、頻繁に換気すれば、室内が寒くなってしまいます。

石油ストーブ使用では、1,500~2,000ppm以上となったときが、換気のサインと考えていいと思います。

※ 避難所のアセスメントについて、『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著・根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)P165~P172にチェックリスト一覧表があります。こちらからご覧いただけます。現場でお使いください。

チェックリスト一覧表

画像をクリックすると、pdfが開きます。

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【実績】

・2011年、東日本大震災被災地で地元自治体に協力して避難所衛生対策活動、その後、2016年に熊本地震、2018年に西日本豪雨、2019年に令和元年台風19号被災地でも地元自治体に協力して避難所衛生対策で活動しました。

・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。

・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。

・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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