【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・配管洗浄後の菌検出

【環監の視点】
配管洗浄後に菌検出の場合、作業の詳細を把握したうえで、原因の可能性を考えます。
可能性①洗浄の不十分
可能性②消毒工程の未実施
可能でしたら、環監が配管洗浄に立ち会い、作業を理解したうえで水質検査結果を評価できるといいと思います。

消毒用の次亜塩素酸ナトリウム(イメージ写真)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年9月下旬、私が企画構成しました、第10回保健所環境衛生監視員講座(主催:一般財団法人日本環境衛生センター、半日オンライン)が開催されました。

全国・保健所環境衛生監視員62名のかたが参加されました。

テーマは、「公衆浴場等のレジオネラ症対策」です。

講座終了後、受講者のかたから、配管洗浄について質問がありました。

配管洗浄は、公衆浴場等の入浴施設のレジオネラ症対策として、年に1回程度、洗浄薬剤を用いて、配管内を物理的にきれいにするものです。

循環ろ過、かけ流し、いずれの施設も配管洗浄は衛生管理上、必要になります。

質問の要旨は、次のとおりです。

なお、回答及び解説については、専門家のお二人、株式会社ヘルスビューティー・シニアテクニカルアドバイザーの藤井明氏、NPO浴衛協・理事・九州支部長の新道欣也氏のご意見を参考にしました。

【配管洗浄後の菌検出】

(質問)
かけ流しの温泉施設で、浴槽に入る直前の温泉水からレジオネラ属菌が検出されました。対処として、配管洗浄(洗浄剤:過酸化水素)と源泉水槽内の清掃を実施しました。ところが、10日後の水質検査で、再び菌が検出されました。
原因は何でしょうか?

(回答)
菌が出た原因の可能性を考えてみます。

可能性①:洗浄の不十分

可能性②:消毒作業の未実施

詳しくは、次のとおりです。

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【可能性①洗浄の不十分】

以前、私は、シャワー水が患者発生の感染源となった公衆浴場施設で配管洗浄をしたとき、現場に立ち会いました。

施設にとって、配管洗浄は初めての作業でした。

方法は、シャワーの給湯系の配管を、洗浄剤の過酸化水素を使い洗浄しました。

循環する配管のポンプを稼働して、循環を約1時間おこないました。

その後、次亜塩素酸ナトリウムによる消毒作業を経て、水質検査用のシャワーの採水をしました。

翌日の、死菌まで確認できる迅速法の検査で、陽性となったのです。

施設と洗浄業者の相談の結果、1回目の配管洗浄が不十分と考え、2回目の配管洗浄が実施されました。

2回目の水質検査では、迅速法及び、生きた菌を検査する培養法の両方で陰性となり、配管洗浄が無事におわったのです。

今回の相談事例でも、配管洗浄が不十分の可能性があるのではないかと考えました。

【可能性②消毒作業の未実施】

以前、私は、高齢者施設の大浴場の浴槽水の検査をしたところ、わずかにレジオネラ属菌が検出された事例を経験しました。

施設に確認すると、10日前に、配管洗浄の作業をしたばかりという回答でした。

配管洗浄の作業報告書を確認させていただきました。

わかったことは、過酸化水素による洗浄作業の後、消毒の工程がなかったのです。

過酸化水素は、有機物を分解するとともに殺菌作用があり、発泡の力で洗浄するといわれています。

ただし、一定時間でレジオネラ属菌すべてを殺菌できるかは不確実かもしれません。

私が見てきた現場では、洗浄工程の後、次亜塩素酸ナトリウム10~100mg/L程度で30~60分の消毒工程を加えていました。

消毒工程を加えることで、確実に殺菌するわけです。

今回の相談内容から、消毒作業の工程が実施されないことで、菌が検出された可能性を考えました。

【配管洗浄の例】

配管洗浄の工程例の説明を、別ページでご覧いただけます。

こちらからどうぞ https://kankan-mirai.com/2215/

【かけ流しの配管洗浄の実際】

かけ流しの配管洗浄の一例です。

かけ流しの場合、温泉や湯の流れは浴槽に向かって一方通行の配管になります。

循環していない配管を洗浄するときは、配管の先端を塞ぎ、洗浄剤を入れて、管内に漬け置きすることになります。

例えば、過酸化水素を使う場合、漬け置きする配管の容量に対して1~3%濃度にして注入し、60分程度の時間をかけて漬け置きします。

このとき、細かく発泡する可能性があり、状況によってはガス抜きをする必要があります。

漬け置き後は、排水の汚れの量や、排水の濁りなどを目視で確認して、状況に応じて漬け置きをくり返すことになります。

次に、水を流して十分なすすぎを実施し、最後に、消毒工程で次亜塩素酸ナトリウム10~100mg/L程度を30分前後、漬け置きします。

最後に、水ですすいで終了です。

【環監の視点】

配管洗浄後に菌検出の場合、作業の詳細を把握したうえで、原因の可能性を考えます。

可能性①洗浄の不十分

可能性②消毒工程の未実施

可能であれば、環監が配管洗浄に立ち会い、作業を理解したうえで水質検査結果を評価できるといいと思います。

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・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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