【環監・保健師入門】レジオネラ症対策・営業者との信頼関係の構築

【環監の視点】
レジオネラ症対策は、広範な知識・スキルが必要なため、営業者(施設)のみの力、環境衛生監視員(保健所)のみの力では、対応が難しいと感じています。
施設・営業者と保健所・環境衛生監視員との信頼関係の構築、協力が、何より大切だと考えています。

公衆浴場施設の現場で(イメージ写真)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年9月上旬、下関市保健所主催「レジオネラ属菌汚染防止対策講習会」で講師をつとめました。

会場には、高齢者福祉施設(介護施設)関係者24人、公衆浴場・旅館業施設関係者26人、ほか計52人のかたが参加されました。

質疑応答がありましたので、ご参考までにご紹介します。

【質問回答】
【介護施設の留意事項】

(質問1)
特養等、高齢者施設の入浴・浴室に関わる留意事項は

(回答)
免疫力が下がった高齢者のかたは、レジオネラ肺炎への感染リスクが高いと考えていいと思います。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ほかの感染症と同じですね。

免疫力が極端に下がったときは、土埃を吸い込むだけで、日和見感染の可能性があります。

浴槽水、給湯水でレジオネラ属菌による汚染がある場合、バイブラ・ジェット水流など気泡発生装置がある浴槽、シャワー水などで、細かい水滴のエアロゾルが空気中に舞い、それを吸い込むことで発症につながる可能性があります。

公衆浴場施設と同等、あるいはそれ以上のレジオネラ症対策の徹底が必要となるでしょう。

※レジオネラ症対策の詳細は、『レジオネラ症対策のてびき』中臣昌広著、倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)に説明があります。

【水質管理】

(質問2)
水質管理について

(回答)
自治体の条例で、浴槽水などの水質基準がきめられています。

たとえば、文京区の条例をみると、浴槽水でレジオネラ属菌が検出されないこと、シャワー水からレジオネラ属菌が検出されないことになっています。

レジオネラ以外に、大腸菌群数、濁度、有機物量の項目があります。

【菌検出時の対応】

(質問3)
レジオネラ属菌が検出された施設の管理例

(回答)
自主検査でレジオネラ属菌が検出された場合、すぐに管轄の保健所に相談するのがいいでしょう。

菌の数によって、自治体ごとに対応が異なることがあります。

相談して、保健所から適切な対応の助言をもらうことが大切です。

たとえば、文京区の場合、比較的に菌数が多い100 CFU/100mL以上のときは、主に次の手順になります。
①菌検出の浴槽系統の一時使用停止
②配管洗浄実施
③水質検査による菌不検出の確認
④改善報告書・維持管理計画書の提出
⑤保健所による安全確認
⑥再開

対応の詳しい内容は、『レジオネラ症対策のてびき』中臣昌広著、倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)P44~P45に説明があります。

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【換水の規定】

(質問4)
湯の入れ換え年2回の一件から考える、原因と対策。何が法令、条例に対する違反になるか、ご教授いただきたい。

(回答)
自治体の条例に換水規定が書かれています。

単純にいえば、この規定が守られていなければ、条例違反になる可能性があります。ただし、すべてが罰則につながるわけではありません。

たとえば、文京区公衆浴場法施行条例ではこうなっています。

〈 浴槽は、毎日完全に換水し、清掃すること。 〉

福岡県の条例では、循環ろ過の浴槽水は7日に1回以上の換水が求められています。

また、虚偽報告の件が問題になりました。

こちらは、報告については公衆浴場法に規定があります。

その主旨に、行政が、営業者その他の関係者から必要な報告を求めることができるとあります。

私は、原因と対策として、何より、施設・営業者と保健所・環境衛生監視員との信頼関係の構築、協力が大切だと考えています。

なぜなら、レジオネラ症対策は、レジオネラ肺炎発症の臨床学的知識、細菌・アメーバなど微生物学の基礎知識、消毒剤の種類と効果、配管洗浄剤の種類と効果、循環ろ過設備の仕組み、レジオネラ属菌抑止のための衛生管理など、幅広く、深い知識・スキルが必要だからです。

営業者(施設)のみの力、環境衛生監視員(保健所)のみの力では、対応が難しいと感じています。

詳しい内容は別ページでご覧いただけます。
こちらhttps://kankan-mirai.com/2086/

【ほかの菌】

(質問5)
他の菌について(大腸菌群等)

(回答)
浴槽水の水質基準に、大腸菌群数があります。

レジオネラ属菌に注目が集まる前は、大腸菌群が水質検査のターゲットと言ってもよかったでしょう。

私の経験からは、薬湯の浴槽水から大腸菌群が検出されることが時々ありました。

原因は、薬湯の消毒の遊離残留塩素濃度の維持がやや難しいことと、入浴者が浴槽につかる前に臀部を洗わないことがあるのではないかと推測しています。

大腸菌群の場合、浴槽水中の遊離残留塩素濃度が、0.1mg/L以上あれば、ほとんど検出されることはありませんでした。

【浴槽の管理】

(質問6)
循環式浴槽及び循環式浴槽以外の浴槽の管理

(回答)
過去の報告では、浴槽水のレジオネラ属菌の検出率について、循環式浴槽、かけ流し浴槽、いずれもほとんど変わらなかったと聞いています。

温泉についてみると、温泉を汲み上げてから、浴槽に運ばれ、場合によっては循環利用される配管中で、営業時間外を含めて滞留する箇所や時間があれば、レジオネラ属菌が増えるリスクがあると考えられます。

温泉については、温泉の汲み上げ場所から旅館・ホテルなど施設へ配る配管が、1km以上になることがあります。

その場合にも、滞留する箇所や時間があれば、同様です。加えて、温泉成分によっては成分が配管内に付着して、菌が着きやすい環境になる可能性も考えられます。

循環式浴槽、かけ流し浴槽、いずれも適切な衛生管理が必要なのです。

詳しい衛生管理の内容は、『レジオネラ症対策のてびき』中臣昌広著、倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)に説明があります。

【環監の視点】

先日、係長対象の無料体験セミナー「環監の現場の指導・助言に活かすコミュニケーション・スキル講座」を開催し、12名の係長の皆様が参加しました。

ステップ1は、営業者との信頼関係をつくるです。

レジオネラ症対策に欠かせないのが、営業者と環境衛生監視員との信頼関係と協力です。

それは、なぜですかと聞かれたことがあります。

レジオネラ症対策は、レジオネラ肺炎発症の臨床学的知識、細菌・アメーバなど微生物学の基礎知識、消毒剤の種類と効果、配管洗浄剤の種類と効果、循環ろ過設備の仕組み、レジオネラ属菌抑止のための衛生管理など、幅広く、深い知識・スキルが必要です。

営業者(施設)のみの力、環境衛生監視員(保健所)のみの力では、対応が難しいと感じています。

施設・営業者と保健所・環境衛生監視員との信頼関係の構築、協力が、何より大切だと考えています。

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『レジオネラ症対策のてびき』の概要はこちらから確認できます。ご購入をお考えのかたも、こちらから注文ができます。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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