【環監・保健師入門】災害時の衛生・避難所での低体温症のリスク
【環監の視点】
気温の低い時期に避難所では、壁から離れた位置での避難スペースの確保、段ボールベッド類の利用が必要だと思います。
こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、避難所の衛生対策、レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
2023(令和5)年8月はじめ、環監未来塾私塾・無料講演会をオンライン開催しました。
テーマは、「災害時の避難所の衛生、津波災害の溺水と低体温症」です。
講師は、日本赤十字看護大学附属災害救護研究所・災害救助技術部門客員研究員の栗栖茜氏です。
全国の保健所・環境衛生監視員のかたが参加しました。
私の質問に、栗栖氏から回答していただきました。
ご回答から、私が理解したのは次のとおりです。
【低体温症の症状】
ひとにより違いがあります。
①深部体温が35℃以下のときの低体温症
次のような症状が現れると、低体温症の可能性があります。
・さもないところで転ぶ
・くつひもがうまくむすべない
・無口、まわりに無関心
・普段と違う態度
例:ばかに攻撃的、ぐずる、文句が多すぎる
・震え
②深部体温が32℃以下のときの重症の低体温症
・寒さから身を守ることに無関心
例:手袋を取ってしまう、ファスナーが開いたまま
・精神の変調
例:思考力の低下、錯乱状態
・意識の低下
・震えが減るか止まる
③深部体温が28℃以下のときの最重症の低体温症
・こん睡状態
・脈や呼吸が減りほとんど呼吸をしていないように見える
・生存しているにもかかわらず体は死んだようにこわばっていることが多い
【深部体温の測定法】
私たちが、ふだん体温と呼んでいるのは深部温度を指します。
日本では腋下(わきのした)で測定することが多いのですが、外国では口腔内で測定することの方が多いようです。
口腔内の方が腋下よりも精度は高いと考えられます。
より正確に測定するには食道や直腸に測定用のプローブ(測定器の先端)を挿入して測ります。
手術やICUではそうされています。
鼓膜で測る方法もあります。
【深部とは】
深部はcoreの略で体表から2.5cmより深い部分を指します。
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【避難所での低体温症のリスク】
2019年11月下旬、令和元年台風19号被災地の長野市で、地元保健所に協力して避難所の衛生対策活動で巡回していました。
(『災害時・避難所の衛生対策てびき』中臣昌広著(一般財団法人日本環境衛生センター、税込1,500円)のP157~P164に、避難所の衛生対策活動の詳しい説明があります)
午後に外気温が11.3℃のとき、避難所になった室内テニスコート場は、冷えを感じました。
とくに、床面から窓までの壁部分がコンクリートになっていて、赤外線放射温度計で室内側の壁の表面温度を測定すると、9.9℃でした。
ちなみに、コンクリート壁の外側の表面温度は、6.4℃でした。
懸念したのは、壁に接して寝る人がいたことです。
外気温が零度を下回ったとき、蓄熱体のコンクリート壁が冷凍庫と同じような温度を持ちつづけて、冬の登山での遭難時と同様な低体温症にならないのか心配になりました。
【環監の視点】
前記のケースは、低体温症の可能性があったことから、避難所の運営者と担当保健師に伝達して、対応をお願いしました。
気温の低い時期には、壁から離れた位置での避難スペースの確保、段ボールベッド類の利用が必要だと思います。
前述の実際のケースは、人との交流を避けたい。たばこ場所との近接を希望しているために、その場所を希望されたようでした。
本人のつよい希望がある場合、断熱用のつい立て、段ボールベッドの使用を勧めたいと考えました。
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【実績】
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。