【環監・保健師入門編】レジオネラ症対策・配管洗浄でのATP測定の活用法

【私の視点】
配管洗浄でのATP測定の活用ができることがわかりました。
3回のすすぎ工程では、回が進むごとに数値が低くなり、すすぎの効果が出ていることがわかります。
最終的に、水質検査時のATP測定により、配管洗浄の効果を評価することができます。

ATP測定器(イメージ写真)

こんにちは 元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2023(令和5)年4月中旬、都内の公衆浴場施設の配管洗浄を、オフィス環監未来塾(中臣昌広)が作業しました。

今回の配管洗浄作業は、過炭酸ナトリウムを使いました。

洗浄するのは、地下水を沸かし循環ろ過する白湯の系統です。

洗浄工程は、次のとおりです。

【配管洗浄の作業工程】

① 洗浄剤による洗浄工程

浴槽水は、反応が進みやすいように38℃にしました。

その浴槽水に、白色粉状の過炭酸ナトリウムを投入しました。

浴槽水の容量の割合で、0.5~1%になるように浴槽水に投入したあと、循環ろ過を約1時間行いました。

最初に30分間、循環させたあと、気泡発生装置を間欠的に稼働させて、装置内の配管の洗浄をおこないました。

具体的には、5分間、気泡発生装置を稼働させたあと、約3分間おいて、再び5分間、気泡発生装置を稼働させました。

気泡発生装置については、合計3回の間欠稼働をしました。

間欠的に動かすのは、スイッチを入れた瞬間に装置内の配管に大きな圧力がかかり、配管内の汚れが外に排出されやすくなるためです。

② すすぎ1回目

排水後、浴槽のジェット水流の吐出口の上まで、地下水をためて1回目のすすぎをしました。

すすぎは、1回あたり10分程度おこないました。

循環ろ過のポンプを稼働すると、濁りが出ました。

③ すすぎ2回目

水を入れ換えて、2回目のすすぎです。

循環ポンプを稼働させても、水は透明度が上がっていました。

④ すすぎ3回目

水を入れ換えて、3回目のすすぎです。

水の透明度が上がりました。

⑤ 殺菌作業

浴槽水に次亜塩素酸ナトリウムを加えて、10mg/L程度の濃度にして、循環ろ過、気泡発生装置を稼働させました。

約30分間、殺菌作業をしました。

⑥ 水質検査

排水後、水をため、通常の塩素濃度1.0mg/L程度の状態にして、循環ろ過を行いました。

約15分間、稼働したあと、依頼した検査機関が水質検査用の採水をしました。

水質検査は、培養法及び迅速法(LAMP法)です。

【配管洗浄でのATP測定の活用法】

今回の配管洗浄では、作業ごとにATP測定をおこない、作業ごとの効果を評価することができました。

【工程ごとのATP測定値】

① 洗浄剤による洗浄工程
   
最初にたまる浴槽水(前日の残り湯):127 RLU

洗浄20分経過(気泡発生装置稼働前):15 RLU

洗浄剤により有機物が分解された。

洗浄50分経過(気泡発生装置稼働後):236 RLU

浴槽に浮かぶ汚れ・気泡発生装置内の汚れの有機物が分解される前に、ジェットやバイブラにより攪拌されて、数値が高く出たと考えられた。

② すすぎ1回目

浴槽に入った水:13 RLU

すすぎ1回目:131 RLU

浴槽水に濁りが見られたので、循環ろ過、気泡発生装置の稼働により、配管中に残った汚れが、すすぎにより出てきたと考えられる。

③ すすぎ2回目

浴槽に入った水:17 RLU

すすぎ2回目:65 RLU

浴槽水にやや濁りが見られた。循環ろ過、気泡発生装置の稼働により、配管中に残った汚れが、すすぎにより出てきたと考えられる。

④ すすぎ3回目

浴槽に入った水:12 RLU

すすぎ3回目:27 RLU

浴槽水が透明になり、すすぎの効果が表れている。すすぎを繰り返して、ATP値が下がっている。

⑤ 殺菌作業

殺菌作業20分経過:22 RLU

消毒剤の次亜塩素酸ナトリウムが投入された。有機物の分解が進み、ATP値がより下がったと考えられる。

⑥ 水質検査

入れ換え後の浴槽水(循環ろ過稼働後):18 RLU

循環ろ過を約15分間、稼働させた後のATP値は浴槽水の原水と同等の数値であり、配管中の汚れが取れたと評価できる。

【私の視点】

配管洗浄でのATP測定の活用ができることがわかりました。

3回のすすぎ工程では、回が進むごとに数値が低くなり、すすぎの効果が出ていることがわかります。

また、次亜塩素酸ナトリウムによる殺菌工程では、さらに数値が低くなる傾向にあり、清浄度が増すと考えられます。

最終的に、水質検査時のATP測定により、配管洗浄の効果を評価することができます。

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・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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