【環監・保健師入門】防災・『災害時・避難所の衛生対策のてびき』活用法と冬季の避難生活
【私の視点】
訓練で、実際の避難所の小中学校の体育館や教室に立ち、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』を活用して、設定された課題に取り組むことができれば、より実践に近づきます。
そのことが、市民の命・健康をまもることにつながっていきます。
2023(令和5)年1月下旬、オンラインで開催された第9回保健所環境衛生監視員講座(主催:一般財団法人日本環境衛生センター)で、講座の企画・運営・講師をつとめました。
全国の保健所・環境衛生監視員、保健師、自治体・防災危機管理担当者の皆様19人が参加しました。
今回のテーマは、災害時・避難所・避難生活の衛生対策(保健所・環境衛生監視員の視点から)でした。
2022(令和4)12月に出版の、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』中臣昌広著、根本昌宏監修(一般財団法人日本環境衛生センター、1,500円税込)を広く活用していただくための内容です。
【講座内容】
1 冬季の避難所の衛生・感染症対策
講師:根本昌宏氏(日本赤十字北海道看護大学・教授)
2 災害時のトイレの衛生管理
講師:加藤篤氏(NPO法人日本トイレ研究所・代表理事)
3 災害時・避難所の衛生対策のてびきの解説(保健所・環境衛生監視員の視点から)
講師:中臣昌広
【ワークショップの一例】
私の70分の講義では、体験型ワークショップの形で、個人ワーク、グループワークをしました。
テキストに、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』が使われました。
設定は、首都直下地震の発災直後の避難所です。
あなたは、保健所・避難所衛生対策チームの一員です。
A避難所の小学校は多くの人で混乱していて、体育館は早い者勝ちで場所をとった人たちがブルーシートの上に座っています。
よく見ると、ブルーシートの脇に土足が並んでいます。
地元の自主防災組織の会長が、あなたに言いました。
「体育館に土足で入って衛生的に大丈夫でしょうか。対応をアドバイスしてください」
『てびき』のチェックリストを点検して解説を読み、アドバイスを考えてください。
あなたは、どのようにアドバイスをしますか?
【冬季の避難生活】
真冬の避難生活を理解するため、講師の根本氏から、テレビで放映された「真冬の避難所生活”見えた課題」がご紹介されました。
北海道北見市でおこなわれた厳冬期避難所演習の様子も、映像で紹介されています。
【質疑応答】
講座のなかで、受講生から質問がありました。
私は、質問内容と講師からのご回答を次のとおり理解しました。
有益な内容ですので、ご紹介します。
【質問1】
保温用のアルミシート(エマージェンシーシート)が避難所での使用にふさわしくない理由をおしえてください。
(回答)
屋内使用の場合、ビニール袋をかぶるような状態になり、体からの水蒸気で結露が起こってしまいます。また、ガサガサするので、騒音になってしまいます。
屋外使用の保温の場合、適しているでしょう。
【質問2】
箱マスクについて、おしえてください。
(回答)
段ボール箱の蓋をとって、頭からかぶるイメージです。新型コロナウイルスの飛沫が飛散しないように、寝るときに箱に頭を入れて使います。
【質問3】
FF式といわれる暖房器具のジェットヒーターは、屋外に置いて、外気を燃焼させて温風を室内へ送るものを見ました。屋内に置くことがあるのでしょうか。
(回答)
暖房器具でお勧めするのが、ジェットヒーターです。
今年の厳冬期避難所演習では、ジェットヒーターを室内に置きました。
室内空気を燃焼させて熱交換させると、34~35℃の温風を送ることができ、室内温度をより高めることができました。
排気は煙突から外へ出されますので、室内空気は汚れません。
ただし、ヒーターの近くは音がうるさくなります。
【質問4】
避難所の開設当初、携帯トイレ、簡易トイレの排泄物をどこに保管するのかで悩みます。過去の現場でいい方法がありましたでしょうか。ちなみに、避難所の小中学校で、屋外の使用していない動物飼育小屋はどうかと思いました。
(回答)
同じように、以前に使っていて、いま使われていない鳥小屋を、排泄物保管場所として勧めたことがありました。
これまでの被災地では、携帯トイレ排泄物の大量ごみを見ていません。屋外に排泄したり、屋内で便器を詰まらせたりしたことが多くありました。
排泄物の保管は、臭いが問題になりますので、袋の口をしっかり閉められて、臭いを抑えられる防臭型の袋の使用がいいでしょう。
携帯トイレは2種類あります。
用を足したあとに粉末状の凝固剤を入れるタイプと、吸収シートが入っているタイプです。
住宅の排泄物保管場所としては、庭やベランダが考えられます。
【私の視点】
受講生の皆様の真剣なまなざしを拝見して、『てびき』を活用して、設定された課題に取り組むのは、机上トレーニングとして一つの有効な方法と感じました。
次の段階として、訓練で、実際の避難所の小中学校の体育館や教室に立ち、『てびき』を活用して、設定された課題に取り組むことができれば、より実践に近づくと思いました。
そのことが、市民の命・健康をまもることにつながっていくと思います。
『てびき』ご購入をお考えのかたは、こちらから注文ができます。
【ご案内】
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。
【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。