環監・保健師のための新型コロナ対策【入門】トイレ空間のエアロゾル対応
【私の視点】
トイレの床の清掃後、排水口に密閉蓋をつけることがあります。
密閉蓋の利用は、臭気対策とともに、排水管の封水がきれた場合のウイルス飛散防止に有効です。
ビル衛生検査など環監の現場検査の際には、感染症予防の観点から、トイレ床の排水口にも注目して点検することが大切です。
2022(令和4)年11月下旬、都内で開催された、病院レジオネラ関係の第4回HWH(Hospital Water Hygiene)研究会学術集会に参加しました。
会場では約30人が出席し、多くの人がオンライン参加しました。
まず、特別講演がありました。
建築物における給排水衛生設備とトイレ空間での感染対策とその動向
大塚雅之氏(関東学院大学、建築・環境学部教授)
【ご講演から私の理解した点】
◎トイレの便器まわり
・便器洗浄時のエアロゾルは、便座から10~30cmの高さまで、1mm程度の粒子径のエアロゾルが上がる。
・SARSのとき、排水口からのエアロゾル上昇で感染発生の事例があった。
※トイレを使用するとき、マスクをすることが大切である。
・トイレ使用後の洗浄時にふたを閉める場合、5回使用すれば、ふた裏面にウイルス付着が認められる。
・ふた裏面の消毒が望ましい。
・投影写真から、便座の座面にもウイルス付着がある。
・男子小便器トイレ使用後の洗浄で、便器の壁付近から水平に40cm、便器下部から高さ80cmまで飛沫が上がる。
※小便の際にも、マスクをすることが大切である。
※トイレ空間では、マスクをすることが大切である。
◎手洗い
・手指衛生の観点で、石けんが無い場合、10回こすり洗いする。
・ハンドソープ使用時には、10~15秒洗う。
・石けん手洗いの前後の菌数を比較すると、一例で、菌数が700→100に減少した。
・手洗い後、ペーパータオル等で拭き取ると、菌数減少に効果がある。
※手洗い後、拭き取ることが大切である。
・センサー感知の自動水栓が、2020年以降に普及率高まっている。
◎トイレの床の排水口
・トイレ床の排水口から伸びる排水管の封水がきれると、ウイルスが上がってくる可能性がある。
・トイレの常時換気扇使用の場合、ウイルスを含んだエアロゾルが下層から上層へ引かれる可能性がある。
・対処として、掃除後に密封の蓋をする。
・2020年、広州の高層マンションでの新型コロナ感染経路として、床の排水口からウイルス飛散があった可能性がある(大塚氏の話より、日本ではあまりないと思いますがとのこと)。
【私の視点】
・トイレ空間ではエアロゾル発生があり、感染リスクを下げる観点からは、マスク着用でのトイレ使用が望ましいとわかりました。
・トイレ使用後の手洗いが、手指に付着した可能性のあるウイルスの殺菌・除去に大切だと再認識しました。
・トイレの清掃者の注意点として、便器まわり、便器のふたの裏面など、ウイルス付着の可能性があることを意識することが必要だと思いました。
・トイレの床の清掃後、排水口に密閉蓋をつけることがあります。
・密閉蓋の利用は、臭気対策とともに、排水管の封水がきれた場合のウイルス飛散防止に有効です。
・ビル衛生検査など環監の現場検査の際には、感染症予防の観点から、トイレ床の排水口にも注目して点検することが大切です。
【ご案内】
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。
【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。
・2022年、かながわ疫学勉強会(主催:元神奈川県食品衛生監視員・小池剛氏)で「感染症と空気環境」(オンライン)の講師をつとめました。