環監・保健師のための新型コロナ対策【入門】デパ地下クラスターとパーティション
【私の視点】
環監の視点から、売り場のパーティションは飛沫感染防止の必要最小限の面積(横幅で顔の3倍程度)が望ましい。
なぜなら、空調吹き出し口から吸い込み口までの空気の流れを妨げないからです。
2022(令和4)10月上旬、かながわ疫学勉強会(事務局、小池剛氏)のオンライン勉強会「疫学調査の基本ステップ」に参加しました。
全国から、保健師、食品衛生監視員、環境衛生監視員など約40人が参加しました。
講師は、国立感染症研究所実地疫学研究センターの八幡裕一郎氏です。
【私の理解した点】
・アウトブレイク調査のステップ
◎調査
①聞き取り調査:客観性
キーワード収集:行動歴、接触歴
②関連する検体の採取
③観察調査
施設内の作業・環境等観察
フロア内の感染の広がり
・ラインリスト:表
個人ごとに入力する:発症日、症状等
男性:1、女性:2、
例:発熱あり:1(数字入力が集計しやすい)
・流行曲線:棒グラフ作成
横軸:発症日時
縦軸:新規患者発生数
2次感染があるか、わかる。
・人:性別、年齢、行動等で分類:円グラフ作成
◎デパートのアウトブレイク事例
・バックハードでの感染
・店舗の中の伝播(狭い空間での調理など)
・市中での増加→バックヤード感染
【私の視点】
デパートのクラスター感染での空気環境を考えてみました。
クラスター発生直後に、地下売り場のパーティションを見ました。
店舗のなかには、透明ビニールシートが下がっていました。
天井から約30cm、ショーケースやカウンター上部から15〜30cmの隙間がある以外は覆われていて、ビニールシートが前面の8割くらいの面積を占めていました。
パーティションの奥にいる店員の多くは、飛沫感染対策でマスクとともに、フェイスシールドや防護メガネを身につけていました。
環監の視点から、売り場のパーティションは飛沫感染防止の必要最小限の面積(横幅で顔の3倍程度)が望ましいと思いました。
なぜなら、空調吹き出し口から吸い込み口までの空気の流れを妨げないからです。
パーティションで大きく覆ってしまうと、内側の店員のいるスペースで空気がこもりやすくなると考えました。
かりに店員に感染者がいれば、内側の空間で感染リスクが高まると考えたのです。
いずれにしても、空気環境の測定が不可欠だと思いました。
はじめに、フロア図を格子状にして、数多くの測定ポイントを設定します。
次に、測定器を使い、各測定ポイントで風量、二酸化炭素濃度、温度、湿度を測り、空気がよどむ場所がないかをチェックすることが大切です。
保健所・環境衛生監視員は、百貨店について建築物衛生法で接点をもっています。
床面積3,000平方メートル以上の事務所、店舗、百貨店などが、建築物衛生法の特定建築物に該当するからです。
建築物衛生法には、空気環境基準があります。
行政と百貨店とが協力して、調査が進み、今後の改善策につながるといいと思いました。
最後に、友人の感染症専門家の言葉をご紹介します。
「メディアの報道では、売り場のフロアばかりに目が行っていますが、裏側にあって密になりやすい食堂や休憩室、更衣室などにリスクがあることを考慮しなければならないと思っています」
彼の言葉から、クラスター調査の基本を感じました。
【ご案内】
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など最新情報をメールで真っ先にお届けしますので、ご希望される場合、①所属、②担当者名、③メールアドレスを、「お問い合わせはこちら」までお送りください。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。