環監・保健師のための新型コロナ対策【入門】デパ地下のクラスターはなぜ発生したのか①

【私の視点】
空調設備に着目しました。
地下売り場を歩いてみて、天井の吹き出し口から髪の毛が揺れるくらいに強烈な風が出ている一方で、吹き出し口からほとんど風を感じない場所がありました。
その現象は、空調機からのダクトの距離と設備の老朽化が関係していると思いました。

ビル衛生検査の器材

2022(令和4)年8月下旬、かながわ疫学勉強会(事務局:元神奈川県職員 小池剛氏)のオンライン打合せ会に出席しました。

出席者は、疫学研究者、保健師、食品衛生監視員、環境衛生監視員など6人です。

打合せのテーマは、次回以降の勉強会の内容検討です。

打合せのなかで、「新型コロナと空気環境」について、話が私にふられました。

理・美容室、公衆浴場の脱衣場、地下鉄車内、航空機内、デパートの地下階、室内大型野球場など、具体的な空気環境の実態について言及しました。

そのなかで、関心をひいたのがデパ地下の空気環境でした。

1年前、2ケタの感染者が出た都内デパートの地下食料品売り場のフロアを歩きました。

地下通路からのデパート入り口は、関所のようになっていて、体温センサーをチェックする従業員と、マスク着用を確認する従業員とが配置されていました。

店内アナウンスが流れていました。

「不織布のマスクの着用をお願いします」

私が注目したポイントのひとつが、天井の空調吹き出し口です。

適切な風量の空気が送られているかです。

吹き出し口から出る空気は、空調機からダクトで運ばれています。

外気と、室内からの戻りの空気を混ぜて、埃を除去するフィルターを通し、冷却してからファンで室内へ送られています。

地下売り場を歩いてみて、吹き出し口から髪の毛が揺れるくらいに強烈な風が出ている一方で、吹き出し口からほとんど風を感じない場所がありました。

【私の視点】

私の建築物衛生法に基づく、年間20~30件のビル衛生監査の経験からの推測です。

空調設備に着目しました。

吹き出し口の風量の差は、空調機からのダクトの距離と設備の老朽化が関係していると思いました。

吹き出し口の風量は、一般に、空調機に近ければ強く、離れた場所では弱くなる傾向があります。

この傾向は、空調設備が老朽化して能力が下がると、顕著になると考えられます。

したがって、フロアの部分部分で、換気のための空気量に差があるのではないかと思いました。

空気のよどみをつくる可能性があると感じたのです。

実際に、比較的に奥のスペースに足を運んだとき、空気の動きがほとんどないように感じました。

場所による換気の空気量の差、空気のよどみが、クラスター発生の一因になった可能性があるかもしれません。

詳しい解析をするためには、実態把握が欠かせません。

フロアを図面上で格子状にして、測定点をプロットし、細かく空気環境測定をすることが大切だと思います。

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・2021年、一般財団法人日本環境衛生センター主催、第6回保健所環境衛生監視員講座(オンライン)で「生活衛生営業六法と新型コロナウイルス対応」の講師をつとめました。

・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

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