環監のためのレジオネラ症対策【入門】シャワーのバイオフィルム形成リスクはあるのか
【私の視点】
毎日営業後の、枝管の部分・シャワーヘッドの滞留水の存在が長期間継続すると、シャワー末端部分でのバイオフィルム形成の可能性があります。
使用頻度が低いシャワーで、配管の末端での湯の滞留時間が長くなるケースでも、バイオフィルム形成の可能性があります。
2022(令和4)年9月下旬、横浜市で5日間、開催された第10回レジオネラ国際会議2022に出席しました。
3日目の会場のホールでは海外からを含めて、研究者、行政関係者など約80人が参加し、オンラインでも国内外の参加がありました。
新道欣也氏(NPO法人入浴衛生管理推進協会)から「温泉施設の入浴施設におけるバイオフィルム形成、洗浄方法と対策」が報告されました。
【私の理解した点】
◎画面で、多くの現場の写真が紹介されました。
・ステンレス製の温泉タンク内に付着したバイオフィルム
・配管の内側のバイオフィルム
・過酸化水素による配管洗浄で、かけ流しの浴槽落とし口から流れる、バイオフィルムを含んだ茶色の水
・シャワーヘッドの内側に着いた茶色のバイオフィルム
・木製風呂:目に見えないところの隙間で成長するバイオフィルム
・石・タイル構造の浴槽の内側で、壁の表面タイル裏側で成長するバイオフィルム
【私の視点】
A公衆浴場のシャワー水からレジオネラ属菌が検出されたとき、どこにバイオフィルムがあるのかを推測するための調査をしました。
調査用の採水をしました。
シャワー水は、湯と水を混合してシャワー水をつくる調節箱から、ポンプで送湯管を通して男湯・女湯の浴室へ送られ、再び調節箱へ戻ってきます。
各シャワーの末端は、送湯管から一つひとつが枝分かれしています。
複数の末端シャワー水、シャワー水を供給する調節箱の湯、配管からの戻りの湯を採りました。
検査結果は、それぞれの箇所からレジオネラ属菌が検出されました。
調節箱の湯、配管戻りの湯と比べて、シャワー末端の数値が高くなりました。
それらの検査結果から、次のとおり考えました。
・毎日営業後の、枝管の部分、シャワーヘッドの滞留水の存在が長期間継続され、シャワー末端部分でのバイオフィルムの存在の可能性がある。
・使用頻度が低いシャワーで、末端での湯の滞留時間が長くなり、バイオフィルムが形成される可能性がある。
◎過去の患者聞き取り調査から、開店直後の入浴で、シャワーのファーストフラッシュを使用しての感染が疑わました。
すなわち、シャワーヘッドの末端近くにバイオフィルムが堆積していると、ファーストフラッシュの水圧の急激な変化でバイオフィルムが剥がれて放水され、入浴者の体にあたってエアロゾルとなり、口から吸入された可能性があると考えました。
◎過去の経験から、シャワーヘッドの内側に茶色の汚れがあっても、必ずしも微生物汚染がされているわけではありません。
茶色の付着物を調べて、ATP値が低い。レジオネラ属菌が不検出のケースがありました。
検査により正確な数値を把握することが大切です。
【ご案内】
・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など最新情報をメールで真っ先にお届けしますので、ご希望される場合、①所属、②担当者名、③メールアドレスを、「お問い合わせはこちら」までお送りください。
【実績】
・2021年、国立保健医療科学院、令和3年度・環境衛生監視指導研修で「現場での衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。