環監・保健師のための防災【入門】水害後の床下の乾燥
【私の視点】
水害後の床下の乾燥
水に浸かった、床下の土が露出した部分や土台などの建材の乾燥にかかる日数は、最低1カ月といわれています。
効率的な乾燥のために、サーキュレーターや扇風機の活用は有効です。
2022(令和4)年9月中旬、地区防災計画シンポジウム(第40回研究会、オンライン、主催:地区防災計画学会)をYouTube視聴しました。
テーマは、「コロナ禍でのコミュニティの複合災害対策」です。
視聴時、令和4年台風14号の進路予想で、九州付近を北上し、そのあと本州を縦断する可能性がありました。
約240人が視聴しました。
シンポジストは、次のとおりです。
室﨑益輝氏
神⼾⼤学名誉教授‧地区防災計画学会会⻑
⽮守克也氏
京都⼤学防災研究所教授‧地区防災計画学会副会⻑
加藤孝明氏
東京⼤学⽣産技術研究所教授∕社会科学研究所特任教授
酒井明⼦氏
福井⼤学名誉教授
磯打千雅⼦氏
⾹川⼤学IECMS地域強靭化研究センター准教授
⻄澤雅道氏
元福岡⼤学法学部准教授
【私の理解した内容】
◎酒井氏(福井大学)のご講演から
・令和4年8月豪雨災害の被災地でのコミュニティの話が紹介されました。
・ある地区の場合、なぜ、住民は避難所へ行かないのか。
→指定避難所の中学校:地区から6キロ離れているからです。
→悪臭のある断水した自宅の2階や納屋で寝泊まりをするかたが多くいました。
・衛生、感染症、健康の観点から、私は、2階での避難生活の問題点を考えました。
・湿気、悪臭、熱中症、断水によるトイレ排泄物の保管・衛生、ハエ・カ等の虫やねずみの侵入、階段昇降の回数増加によるケガの可能性、カビの発生・・・・・・
・水に浸かった床下部分を、サーキュレーター2台で乾燥させている写真がありました。
◎磯打氏(香川大学)のご講演から
・岡山県津山市・城西地区の取組で、密をさける避難所の防災訓練の様子が紹介されました。
・受付を地区ごとに分けたことです。
【私の視点】
(1)水害後の床下の乾燥
水害で水に浸かった、床下の土が露出した部分や土台などの建材の乾燥にかかる日数は、最低1カ月といわれています。
効率的な乾燥のために、サーキュレーターや扇風機の活用は有効です。
できるだけ早い時期に乾燥作業を進めるのがポイントです。
なぜなら、濡れた部分のカビの増殖が進んでしまうからです。
カビの発生は、臭気やカビの飛散による呼吸器系疾患への影響の可能性があります。
壁の内側の断熱材が濡れてしまうと、断熱材にカビの増殖が進み、廃棄せざるを得ないケースがあります。
(2)水害後の床下の消毒
水に浸かった床下に、消毒用で白色粉末の消石灰を使った現場を見てきました。
消石灰は消毒に効果がある半面、健康上のデメリットがあります。
消石灰の主成分は、水酸化カルシウムで強いアルカリ性です。
皮膚、口、呼吸器等を刺激して、炎症を起こしたり、目に対して腐食性があり視力障害を起こす場合があります。
使用時は、保護メガネ、保護手袋、保護マスクを着用して取り扱うことが大切です。
水害後、落ち着いた時期に、家の改築をするとき、床下の消石灰の取り扱いをどうしたらいいのか、相談を受けたことがあります。
取り除く。被覆する。どちらにしても、取り扱いに困ったと感じました。
最近では、殺菌消毒剤として、塩化ベンザルコニウム液(逆性せっけん液)を使用するケースも増えたように感じます。
床下に侵入した土砂を取り除いたあと、水に浸かったところを可能なかぎり水で洗浄し、そのあと、塩化ベンザルコニウム液で消毒するやり方です。
方法は、噴霧するか、布に含ませて拭くかです。
0.1%液で使用する場合、原液の10%液を100倍希釈して使います。
塩化ベンザルコニウム液は、使用時の安全性、使用後の取り扱いを考えると、現時点では、使いやすい消毒剤だと感じています。
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【実績】
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。