環監のためのレジオネラ症対策【入門】浴槽オーバーフロー水の再利用のリスク
【私の視点】
A自治体の現場研修会のとき、浴槽オーバーフローの再利用水がたまる回収槽の中を点検したところ、水面が上下するあたりの壁に、黒色のバイオフィルムが付着していました。
現場検査の体験から、オーバーフロー水の再利用は、レジオネラ属菌の検出リスクが高いと肌で感じています。
2022(令和4)年9月中旬、さいたま市で開催された「レジオネラ対策専門講座、循環式浴槽設備管理士認定講習会」(主催:レジオネラ対策推進協議会)の一コマの講師をつとめました。
1時間10分の講義内容は、「浴槽水消毒剤の種類と特長」「自主管理体制を構築しよう」でした。
受講者のかたは、設備管理会社、行政の関係者など約20人です。
講義のあと、受講者のおひとりから質問がありました。
「年に1回、配管洗浄をした場合でも、浴槽水からレジオネラ属菌が検出されることはありますか?」
私から、こうお答えしました。
「私の経験から、浴槽のオーバーフロー水の再利用をする施設では、菌発生のリスクがあると言えるでしょう」
文京区公衆浴場施行条例には、こう書かれています。
<浴槽からあふれた湯水を再利用しない構造であること>
オーバーフロー水の再利用が、水面の汚れを運んでレジオネラ属菌検出のリスクを高めてしまう可能性があることから、認められていないのです。
遡ると、平成15年に、前年の宮崎県日向市のサンパーク温泉のレジオネラ症集団感染を背景に、東京都条例がレジオネラ症対策の観点で大きく改正されたのです。
ただし、暫定措置として、条例改正前にオーバーフロー水の再利用設備を設けていた場合、浴槽、回収槽等の毎日の換水、清掃をすることで使用が継続されています。
【私の視点】
自治体のご依頼を受けて、レジオネラ症対策の講習会や環監向け現場研修会の講師をつとめることがあります。
その際に当該自治体の条例を調べると、オーバーフロー水の再利用をする場合、1週間に1回以上の換水、清掃を求めるような内容が多かったように感じています。
A自治体の現場研修会のとき、公衆浴場施設の機械室を見学しました。
オーバーフローの再利用水がたまる回収槽の中を点検したところ、水面が上下するあたりの壁に、黒色のバイオフィルムが付着していました。
こうした状況を複数、見てきました。
現場検査の体験から、オーバーフロー水の再利用は、レジオネラ属菌の検出リスクが高いと肌で感じています。
前記のように、暫定的に、オーバーフロー水の再利用をする場合、浴槽、回収槽等の毎日の換水、清掃をしている施設でも、ヘアキャッチャー付近にバイオフィルムが着きやすいと感じています。
オーバーフロー水の再利用施設では、リスクが高いことを認識して、衛生管理していくことが大切です。
オーバーフロー水の再利用施設の望ましい具体的な衛生管理と考えるのは、次のとおりです。
①年に1回以上の配管洗浄
②毎日、浴槽・回収槽等の換水、清掃
③3カ月に1回程度のレジオネラ属菌水質検査
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【実績】
・2021年、国立保健医療科学院、令和3年度・環境衛生監視指導研修で「現場での衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。