介護施設・事業所のための感染症・災害時のBCP【入門】防災の原点は自宅の耐震化対策

【私の視点】
2000年以降の現行耐震の建物で、室内の家具や家電などに転倒防止の対応をしていれば、家の中の安全性が高いといわれています。
自宅の耐震化対策は、介護施設・事業所の職員のかたの行動を含め発災後の行動すべてに影響してくると思います。

発災時に帰宅する車などによる渋滞(東京都内、2011年3月11日)

2022年9月上旬、木耐協オンラインセミナー「天気予報を聴くコツ&帰宅困難者対策」(主催:木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合))をYouTube視聴しました。

約120人が視聴しました。

プログラムは、次のとおりです。

1 『知って得する!天気予報を聴くコツ』

講師:伊藤みゆき氏

気象予報士/防災士講習会講師

2 『地震時の帰宅困難者対策』

講師:廣井悠氏

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻 教授
一般社団法人 防災教育普及協会 理事

【ご講演から私の理解した内容】

『知って得する!天気予報を聴くコツ』から

・台風の進行方向右側が左側より風が強い
 強い南風、台風の風が反時計回りなので

・雨雲レーダーをみることが大切である
 台風から離れた北側に雨雲がある場合もある

・注意するキーワード「超大型・動きが遅い・前線」
→同じところで雨が続くので、台風接近前から大雨に注意

・キーワード「満潮の時刻」
→災害発生のリスクが高まる

・記録的短時間大雨情報:稀にしか観測しない雨量
 相次いで2回以上は、危機的状況

『地震時の帰宅困難者対策』から

◎基礎知識

・帰宅困難者の定義

1997年の東京都の定義

「自宅が遠隔なため、帰宅をあきらめる人々や、いったん徒歩で帰宅を開始したものの途中で帰宅が困難となり、保護が必要になる人々」

→10年後、中央防災会議の定義
 帰宅断念者+遠距離徒歩帰宅者

・10km以上の距離になると、帰宅できない人が増える
 20kmでは、すぐの帰宅者ゼロと考える

・首都圏で鉄道利用者が多い。1日約4000万人

・首都圏のバス・路面電車定期利用者:42万人

・多くの人が1時間以上の移動を伴う

・根底に都市構造の問題:
  リモートワークなど:根本的な解決が難しい

・東京都で1100万人が帰宅困難者となる。

◎発生事例

・2011年3月11日の首都圏の被害

・帰宅困難者の大量発生

◎対策の具体例

・2011年にコンビニなど災害時帰宅支援ステーションに水道水、トイレ、情報の提供を要請
 首都圏約15000店:アルバイトが来ない
          認識不足

・当時、都、区市町は一時避難場所として1000カ所避難場所用意

・これ以降、帰宅困難者の避難所の使用が控えられるようになった。

◎これからの重要課題  

・一斉帰宅してしまうと、歩道+発災1時間後
 歩道で1m2あたり6人前後の密集状態があちこちで発生
 人的被害のリスク大:明石事故のようなリスク

・車道は、5時間経っても慢性的な交通渋滞が続く。

※大切な点

◎すぐ帰宅しない。
 帰宅しなくていい環境をつくる。

◎車で「迎え」に行かない。
 迎えに行かなくていい環境をつくる。 

※東日本大震災時の東京の震度5強と、巨大地震の震度6強の問題はまったく違う。

◎帰宅しないための環境づくり

①会社内の備蓄
 水、食料、毛布など。
 ラジオ

②安否確認
 家族同士の確認ができる

③事前に知っておくべき情報
 就業地の災害リスク、一時滞在施設
 帰宅ルール

④家族の理解と家庭の安全

「帰らないでも心配しないよう、家を安全にしておきましょう」

【私の視点】

<自宅の耐震化対策こそが、最大の帰宅困難対策である>

ご講演でいちばん印象に残った言葉です。

たとえば、2000年以降の現行耐震の建物で、室内の家具や家電などに転倒防止の対応をしていれば、家の中の安全性が高いといわれています。

家の中で命を失う確率が低いということです。

家の中の安全性が高い状態ならば、比較的こころの余裕をもって、外出先から、災害用伝言ダイヤル、メール、LINEなどで、家にいる家族の安否確認をすることができるでしょう。

そのことは、発災後の行動すべてに影響してくると思います。

家族の無事を心配して、無理に帰宅する必要がないこと。

災害時にひとの命・健康をまもるために尽力する介護施設・事業所の職員のかたは、目の前の仕事に集中できること。

自宅の耐震化対策が、防災の原点といえると思いました。

【ご案内】

・介護施設・事業所の感染症・災害時のBCP作成で、お悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。

【実績】

・東日本大震災、熊本地震、西日本豪雨、令和元年台風19号の被災地で地元自治体に協力し、災害時の避難所の衛生対策活動に携わりました。

・管内のレジオネラ肺炎患者発生をきっかけに、公衆浴場等のレジオネラ症対策に重点的に取り組みました。生活と環境全国大会で「文京区における公衆浴場等シャワー水のレジオネラ症発生防止対策の成果」が最優秀賞を受賞。『レジオネラ症対策のてびき』(一般財団法人日本環境衛生センター)を出版しました。

・2021年、東京都特別区職員研修所、令和3年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「新型コロナウイルスを踏まえた避難所の衛生対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。

・2021年、国立保健医療科学院、令和3年度 環境衛生監視指導研修で「現場での衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、熊本市西部環境工場(清掃工場)内の避難所BCP作成の監修をつとめました。

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