【環監・保健師向け】レジオネラ・オゾン殺菌を知る
【レジオネラ・オゾン殺菌を知る】
1 質問内容
2 公衆浴場の衛生等管理要領の記述
3 オゾン殺菌の方法
4 オゾン殺菌のメリット・デメリット
5 オゾン殺菌の使用例・報告例
6 環監の視点(回答、新たな知識を得る)
7 研修講座の案内

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『レジオネラ症対策のてびき』著(倉文明監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、レジオネラ症対策・災害時の避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
2025(令和7)年12月上旬、B自治体で公衆浴場・ホテル・旅館等の施設向けレジオネラ対策研修会の講師をつとめました。
参加者のかたから、オゾン殺菌の効果についてご質問がありました。
環監業務に有用な話ですので、ご紹介します。
下記の記述は、株式会社ヘルスビューティ・シニアテクニカルアドバイザーの藤井明氏のご意見を参考にしました。
1 質問内容
次のとおり、ご質問がありました。
「オゾン発生器を使用することによってレジオネラ属菌等の菌は消滅できますか」
「効果はどこまで効きますか」
「効果のある使用方法は」
以上のご質問に、お答えする内容を考えました。
2 公衆浴場の衛生等管理要領の記述
厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」では、浴槽水の消毒について、塩素系薬剤とともに、オゾン殺菌の消毒方法の記述があります。
要領の抜粋は、次のとおりです。
・オゾン殺菌、紫外線殺菌、銀イオン殺菌、光触媒などの消毒方法を採用する場合には、塩素消毒を併用する等適切な衛生措置を行うこと。
・オゾン殺菌による場合は、高濃度のオゾンが人体に有害であるため、活性炭による廃オゾンの処理を行うなど、浴槽水中にオゾンを含んだ気泡が存在しないようにすること。
要領のなかで、塩素消毒の併用が書かれているのは、オゾンが浴槽の湯に残留して殺菌効果を上げるものではないと推察できます。
オゾンが湯水と接触している箇所のみで、殺菌がされるからです。
私の経験から、入浴施設でのオゾン殺菌の使用実態が十分に把握されていないこともあり、使用施設数や消毒の程度、試験紙など、正確にわからない点があります。
今後、保健所からの実態報告が出てくることを期待しています。
3 オゾン殺菌の方法
東京都水道局のホームページに、オゾン処理の解説ページがあります。
オゾン発生装置の写真が載っています。
次のURLをコピーして検索すると当該ページに行きます。
https://www.waterworks.metro.tokyo.lg.jp/suigen/topic/13
当該ページを読んで、私が理解した内容は次のとおりです。
(1)オゾンとは
・オゾンは、3つの酸素原子からできています。
・不安定な物質で、人工的に作るものです。
・特有の臭いがあり、微青色の気体です。
・強い酸化力があります。
・様々な分野で、殺菌、脱臭、脱色、有機物の分解に用いられています。
・大気汚染について、オゾンを含む光化学オキシダントの健康被害では、目がチカチカする、喉が痛い、息苦しいなどの症状を聞いたことがあります。
(2)オゾンの生成
・オゾンは、高エネルギーの電圧をかける無声放電や紫外線照射によって、酸素または空気から作られます。
・東京都の浄水場では、無声放電のオゾン発生装置が使われています。
・無声放電とは、火花や音が発生しない放電のことです。電極の一部を覆い、電極間を放電したとき、微細な放電が発生することを利用しています。
(3)オゾンの注入
・東京都の主な浄水場では、オゾン接触池の底部に設置した装置からオゾンが放出されています。
・ホームページの写真では、オゾンが水中で泡をあげて上昇しているのがわかります。
(4)オゾン処理
・オゾンの強い酸化力で、水中にある有機物が分解されます。
・浄水場では、分解された有機物は、オゾン処理の工程後の生物活性炭処理によって、除去されています。
入浴施設のオゾン殺菌処理で、分解された有機物は
、ろ過器あるいはフィルターで除去されると考えられます。
・水中に残ったオゾンは、生物活性炭処理で、活性炭と反応して酸素に戻るので、水道水中にオゾンが残ることはありません。
入浴施設のオゾン殺菌処理で、オゾンは、処理装置に組み込まれた活性炭に接触することで無害化されると考えられています。
※この方法のほかに、水を電気分解して、オゾンをつくるやり方があります。電解生成オゾンといわれるものです。
この電解オゾン水は、水中にオゾンが存在している状態です。
オゾンは水中で短時間で酸素に戻ると考えられています。
4 オゾン殺菌のメリット・デメリット
(1)メリット
・酸化力が強く、有機物の分解効果があります。
酸化力は塩素より強く、理論的に殺菌力があると考えられます。
殺菌の面では、次亜塩素酸ナトリウムより効果があるということです。
・浴槽水を、より清浄にすることができます。
・水の電気分解で生成する電解オゾン水を利用するやり方があります。
・工程により、ろ材を含めて殺菌ができます。
・工程により、逆洗浄の効果を上げることができます。
(2)デメリット
・装置が高額で、既存の施設では工事を伴い、手軽につけるのが難しい点です。
・浴槽水は、オゾンに触れたときのみ殺菌がされます。
紫外線殺菌と同様です。
・浴槽での殺菌を考えると、オゾンが浴槽水に残留しないので、塩素剤等の併用が必要になります。
・健康被害を起こさないため、発生させたオゾンの回収・分解等が必要になります。
5 オゾン殺菌の使用例・報告例
オゾンの利用については、次のとおりです。
(1)入浴施設
報告例があります。
令和3年度厚生労働科学研究(健康安全・危機管理対策総合研究事業)の報告書「オゾンを用いた温浴施設循環式ろ過器の消毒・洗浄試験」があります。
オゾン生成装置の写真を見ることができます。
週に1回の高濃度塩素洗浄に替わる方法として、あるいは毎日のろ過器逆洗浄に追加する方法として、電解オゾン水の実験例が報告されています。
次のURLをコピーして検索すると当該ページに行きます。
https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/report_pdf/3.%20%E3%82%AA%E3%82%BE%E3%83%B3.pdf
最近の担当者の話では、比較的に小規模な施設で、オゾンが有効に作用して効果を上げる半面、大規模な施設ではオゾン使用のとき効果が十分に上がらないケースがあったと聞きました。
また、報告書を読んで理解した内容では、電解オゾン水の安全性について、工程上、オゾンのほとんどがろ過器内で消費され、わずかにろ過器内に残留しても逆洗浄により排水されるため、機械室まわりへオゾンが漏れるのはゼロに近いレベルとのことです。
(2)浄水場
上記のように、東京都の浄水場でオゾン処理を使うケースでは、ニオイ物質などの分解に利用しています。
(3)プール
私の見たプール施設は、プールの循環ろ過でオゾン処理を使い、水の透明度を上げている施設がありました。
この施設では、オゾン処理のあと、塩素剤を加えて、プール水中の遊離残留塩素濃度0.4mg/L以上を保っていました。
6 環監の視点(回答、新たな知識を得る)
最初のご質問について、私からの回答は次のとおりです。
「オゾン発生器を使用することによってレジオネラ属菌等の菌は消滅できますか」
(回答)オゾンに接触した菌は死んだとしても、浴槽・配管等に生物膜(バイオフィルム)があれば、完全な菌の消滅とはなりません。
「効果はどこまで効きますか」
(回答)オゾンの殺菌力は高いと考えていいと思います。ただし、浴槽水の殺菌を考えると、塩素剤等の併用が必要でしょう。
「効果のある使用方法は」
(回答)報告例にあるように、ろ過器の前にオゾン生成装置をつけ、週に1回の高濃度塩素洗浄に替わる方法として、あるいは毎日のろ過器逆洗浄に追加する方法として使えば、ろ過器内の殺菌をすることができて効果的と言えるかもしれません。
私の32年の環監経験のなかで、管内でオゾン殺菌を見たのは、20年以上前、プール水の循環ろ過をする1施設のみでした。
当時、テレビ番組で紹介された別施設のオゾン殺菌では、プール水の清浄度が上がり、透明度がよくなったと記憶しています。
遊泳者による汚れが分解され、プール水の濁りが改善されたと理解しました。
今回、オゾン殺菌を調べ直して、あらためてオゾン殺菌の原理や方法などを再認識しました。
新たな知識を得た部分もあります。
こうして新たな知識を得て、自分の知識・スキルの引き出しを増やすことが、環監の業務に役立つと考えています。
7 研修講座の案内
レジオネラ症対策を学ぶ連続講座を、年4回オンラインで開催しています。
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【ご案内】
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・環監業務の悩み、課題がありましたら、ご相談をお受けしています。
・課題の解決につながる講座をご用意しています。
・保健師の皆様への研修のご相談、避難所の衛生対策活動等のご相談をお受けしています。
月に数回、環監のための、レジオネラ症対策、防災、仕事術、講座情報など、最新情報をメールで真っ先にお届けします。ご希望される場合、こちらにご記入ください。
【活動実績】
(書籍・図書)
・2024年、専門誌『設備と管理』(オーム社)に「冷却塔の清掃方法とレジオネラ症 保健所・環境衛生監視員の視点から」を執筆しました。
・2023年、専門誌『設備と管理』(オーム社)に「老舗旅館の大浴場、湯の入れ換えが年2回 レジオネラ症対策を再考する」を執筆しました。
・2015年、専門誌『生活と環境』(一般財団法人日本環境衛生センター)に「公衆浴場・温泉・旅館業・スポーツ施設・介護保険施設のための 続・よくわかるレジオネラ症対策」を連載しました。
・2013年、『レジオネラ症対策のてびき』倉文明監修(一般財団法人日本環境衛生センター)を出版しました。
(活動)
・2024年、厚生労働科学研究費補助金(健康安全・危機管理対策総合研究事業)「公衆浴場の衛生管理の推進のための研究」の研究協力者として活動しました。
・2024年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載されている「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」改定検討の研究協力者として、元神奈川県衛生研究所・黒木俊郎先生らと共に活動しました。
・2022年、「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になりました。
・2017年、広島県三原市の公衆浴場施設で起きたレジオネラ症集団感染事例において、現地の三原市で次のとおりご協力しました。
①行政の対応強化(職員研修会の開催、対策指針・対策事業の提案など)
②管内施設の衛生管理徹底(レジオネラ症対策講習会の開催、講習会後の個別相談など)
③事故発生施設への対応(現地調査・事故の原因究明の協力、改善方法の検討など)
(講師)
・2025年、石川県南加賀保健所、入浴施設衛生管理研修会「公衆浴場、旅館、ホテル等入浴施設のレジオネラ症対策」
・2025年、鹿児島市保健所、レジオネラ症感染防止研修会「入浴施設におけるレジオネラ症感染防止対策」
・2025年、港区みなと保健所、衛生講習会「レジオネラ症対策について」
・2024年、大分県 レジオネラ症発生防止対策研修会「入浴施設のレジオネラ症発生防止対策について」
・2024年、宮崎県・宮崎市、施設向け令和6年度レジオネラ属菌汚染防止対策講習会「公衆浴場・旅館・ホテル・福祉施設・医療施設等の入浴設備の衛生管理」
・2024年、(公財)青森県生活衛生営業指導センター、公衆浴場・旅館・ホテル等施設向けレジオネラ症発生予防対策研修会「レジオネラ症対策の基礎知識と入浴施設の衛生管理の方法」
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)
・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」
(学会)
・2024年、第83回日本公衆衛生学会総会で、「レジオネラ症対策現場研修会の公衆衛生人材育成の成果」を発表しました。
・2023年、日本防菌防黴学会・第50回年次大会で、「令和4年台風第15号による大雨被災地の泥から検出されたレジオネラ属菌について」を発表しました。
・2021年、日本防菌防黴学会・第48回年次大会(オンライン開催)で、「令和元年東日本台風(台風19号)被災地の泥から検出されたレジオネラ属菌について」を発表しました。
・2012年、第56回生活と環境全国大会で、「文京区における公衆浴場等シャワー水のレジオネラ症発生防止対策の成果」を発表し、最優秀賞を受賞しました。






