【環監向け】レジオネラ症対策・浴槽水の二酸化塩素消毒

【環監の視点】
・二酸化塩素の濃度管理は、プールと同じでいいと思われます。
・二酸化塩素の特徴は、次亜塩素酸ナトリウムより酸化力が強いことです。有機物(汚れ)の分解力が強いと考えられます。    
・アルカリ側で効果があるとされています。
・酸化力が強いため、鉄分のスケールが余計につきやすいかもしれません。

塩素濃度測定器(イメージ写真)

こんにちは。元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『レジオネラ症対策のてびき』著(倉文明監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、レジオネラ症対策・避難所衛生対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。

2024(令和6)年7月下旬に、「保健所・環境衛生監視員向け、レジオネラ症対策を学ぶ講座1(オンライン半日コース)」を開催しました。

今回の主なテーマは、公衆浴場の構造設備、衛生監視の視点・レジオネラの基礎知識を学ぶでした。

県保健所、中核市保健所から10名の保健所・環境衛生監視員のかたが受講されました。

受講者の声をご紹介します。

「公衆浴場でのレジオネラの懸念点について、他の自治体の方と話し合いができ、意見交換をすることができてよかったです」

「採水方法も映像で分かりやすく、先生のこれまでの経験のお話もお聞かせいただき有意義でした」

「個別で相談させていただきました、二酸化塩素の消毒について悩んでいたので見解をお聞かせいただけてすごく勉強になりました。本当にありがとうございました!!」

受講者からのご質問にありました、浴槽水の二酸化塩素による消毒について、有用な内容ですので、ご紹介します。

以下の説明につきまして、専門家の株式会社ヘルスビューティ・シニアテクニカルアドバイザーの藤井明氏のご意見を参考にしました。

【質問】二酸化塩素による浴槽水の消毒

①二酸化塩素の濃度管理

 プールの衛生管理と同じ0.1~0.4mg/L でいいのか。

②二酸化塩素消毒が、不向きな泉質があるのか。

③二酸化塩素消毒の使用上の注意点

【回答】

①二酸化塩素の濃度管理

プールと同じで濃度管理でいいと思われます。

二酸化塩素の特徴は、次亜塩素酸ナトリウムより酸化力が強いことです。

有機物(汚れ)の分解力が強いと考えられます。    

アルカリ側で効果があるとされています。

酸化力が強いため、鉄分のスケールが余計につきやすいかもしれません。

②二酸化塩素消毒が、不向きな泉質があるのか。

イオウ泉、硫化水素泉は向かないと考えられます。

二酸化塩素の消費が大きくなるためです。

イオウのニオイがしなくなる可能性があります。

別の臭いになるかもしれません。

③二酸化塩素消毒の使用上の注意点

機械式の場合、施設と、メーカーや機械メンテナンス会社との協力のもと、管理がされていると推測します。

機械式の維持管理がしっかりされていれば、安全性が担保されていると思われます。

◎その他

鉄分が多い温泉の場合、モノクロラミン消毒を使うケースが多いと思われます。

モノクロラミンは、通常の次亜塩素酸ナトリウムが使いづらい状況で使用されることがあります。

酸化力が弱く、鉄との反応が少ないので、採用されているようです。

【二酸化塩素とは】

『レジオネラ防止指針 第4版』(公益財団法人日本建築衛生管理教育センター)に、二酸化塩素の記述があります。

私が理解した内容は、次のとおりです。

二酸化塩素は、次亜塩素酸ナトリウム、モノクロラミン、ブロム剤などとともに、酸化性殺菌剤のひとつです。

二酸化塩素(ClO2)の形で水中に存在して、酸化力で殺菌します。

残留性が高く、低濃度で消毒効果があるとされています。

アンモニウムイオンと反応することがなく、結合型塩素になりません。

このため、殺菌による強いアンモニア臭を抑えられるといわれています。

アルカリ側のpH10程度まで作用します。

反応生成物で、亜塩素酸イオンができます。

この濃度管理が必要とされています。

二酸化塩素を使用するとき、亜塩素酸イオンや塩素酸イオンが蓄積されていくので、浴槽水の換水を必ず1週間に1回以上することが求められます。

二酸化塩素は、不安定な物質であり、配管洗浄時には現場で、亜塩素酸ナトリウムと塩酸や次亜塩素酸を反応させて作ります。

浴槽水の消毒用としては、自動的に製造する機械式が採用されることがあります。

【遊泳プールの二酸化塩素の使用条件】

二酸化塩素濃度:0.1~0.4 mg/L

亜塩素酸イオン濃度:1.2 mg/L 以下

【配管洗浄と二酸化塩素】

定期的な配管洗浄や、レジオネラ属菌検出後の配管洗浄で、二酸化塩素が用いられることがあります。

その時、現場で薬剤を混合して、二酸化塩素を作ることがあります。

【二酸化塩素の測定器】

二酸化塩素の測定器が市販されています。

メーカー仕様ページを参考にすると、DPD試薬を使って比色し、吸光光度法により数値を出す測定器です。

一例では、0.05~5 mg/L の測定範囲になります。

現場で、手のひらで測定可能な大きさです。

【二酸化塩素の装置】

浴槽水の循環処理に組み入れる二酸化塩素の製造・注入装置が市販されています。

装置では、2液が混合されて、二酸化塩素がつくられます。

一例では、ろ過器の手前の配管に注入されます。

浴槽水の殺菌での使用、高濃度塩素消毒に相当する換水前の高濃度消毒での使用が可能とされています。

【環監の視点】

・二酸化塩素の濃度管理は、プールと同じでいいと思われます。

・二酸化塩素の特徴は、次亜塩素酸ナトリウムより酸化力が強いことです。有機物(汚れ)の分解力が強いと考えられます。    

・アルカリ側で効果があるとされています。

・酸化力が強いため、鉄分のスケールが余計につきやすいかもしれません。

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【実績】

・2022年、厚生労働省のレジオネラ対策のページに掲載される「入浴施設の衛生管理の手引き(令和4年5月13日)」の作成ワーキンググループのメンバーに、国立感染症研究所・倉文明先生らと共になっています。

・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度・環境衛生監視指導研修で「環境衛生監視指導の実際、公衆浴場のレジオネラ症対策」(オンライン)の講師をつとめました。

・2021年、高知県、令和3年度入浴施設におけるレジオネラ属菌汚染防止対策講習会・環境衛生監視員を対象とした現場研修会「循環式浴槽立入検査の実際について」の講師をつとめました。

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