【注意】避難所・避難生活の衛生・感染症対策(その29)
【保健師活動】仮設住宅に飛来する虫などの対処
①ブユ(ブヨ、刺される)
②アブ(刺される)
③ヘビ
④ネズミ
元文京区文京保健所・環境衛生監視員で、『災害時・避難所の衛生対策のてびき』著(根本昌宏監修、一般財団法人日本環境衛生センター)、避難所衛生対策・レジオネラ症対策の研修講師をしている「オフィス環監未来塾」中臣昌広です。
地震の地域の皆様へお見舞い申しあげます。
次のとおり、【保健師活動】仮設住宅に飛来する虫などの対処について、これまでの被災地での避難所衛生対策活動の経験を基に、保健所・環境衛生監視員の視点でまとめています。
全国保健師長会に情報提供しています。
ご活用ください。
能登半島地震被災地の石川県保健所の保健師のかたから、仮設住宅に飛来する虫、現れるヘビ、倒壊がれきに生息するネズミなどへの対処のご質問がありました。
有用な内容ですので、ご紹介します。
専門家の一般財団法人日本環境衛生センター・環境生物・住環境部長の橋本知幸氏のご意見を参考にしました。
①ブユ(ブヨ、刺される)
ブユは吸血性昆虫です。
幼虫は、水質がきれいで流れのある河川・小川から発生します。
成虫は、明け方、夕方の薄暮時に、野外作業している人に向かって飛来します。
成虫の発生は、11月頃まで続くと考えられます。
発生源が広大で幼虫駆除が難しいので、野外で活動しなければならない人が、忌避剤を露出部に塗って吸血被害を抑えることしかないかもしれません。
忌避剤を肌に直接、塗る場合、成分の確認や、自分自身の皮膚に影響がないかをチェックしてから使用しましょう。
また、窓・扉を開け放しにしないことが大切です。
室内では、蚊取り線香やワンプッシュ蚊取り剤などを使うと、侵入を防ぐことにつながります。
ただし、化学物質過敏症の方は、目や鼻・喉の粘膜への刺激、息苦しさなど症状が出る可能性がありますので、使用について慎重に検討したほうがいいでしょう。
②アブ(刺される)
アブは、ブユと同様に広大な面積から発生します。
家畜から吸血します。人からも吸血します。
アブは、種類により昼間でも多く集まってきます。
特徴的なのは、車の排ガスなどに誘引されて集まることです。
車の排ガスは、二酸化炭素など多種類の物質が放出されています。
二酸化炭素は、呼気に含まれていて、動物の存在の手がかりになるもので、アブが寄ってくる誘因物質になります。
アブが車の近くまでくれば、熱にも誘引されるので、排ガスの排熱やボディー、エンジン、タイヤが熱くなっていることも、アブが集まってくる要因と考えられます。
車の排ガスが強力な誘引源になるため、なるべく住宅から離れた場所に駐車することが大切です。
住宅の窓の開放を避けることも大切です。
③ヘビ
ヘビのなかで、アオダイショウなどは建物内に侵入する性質が強いと考えられます。
住宅内や倉庫などで見つかることがあります。
侵入対策は難しいかもしれません。
建物周囲の地面に、帯状に殺虫剤の粉剤や木酢液を散布することで、忌避できる可能性があります。
また、ヘビよけ剤がいくつか販売されているようです。
④ネズミ
倒壊した建物では、内部にネズミの潜伏にちょうど良い空間が生じて、居着いてしまう可能性があります。
内部に餌となるようなものがなくても、周辺から餌は調達できることが多いので、がれきの撤去が基本的な対策となります。
駆除の方法としては捕獲か毒餌かの二択になってしまい、どちらも周辺のペットや動物への影響が懸念されるので、ためらわれるところです。
東日本大震災の場合、その年(2011年)から、いくつかの災害ごみの仮置き場で、ネズミが大量発生していることが報告されました。
住宅地から離れていたため、市民への被害はあまりなかったようです。
しかし、福島の立入制限された地域の住宅内では、あまり餌がないと思われるような室内でも多数のネズミが生息していました。
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【実績】
・2023年、令和5年度 兵庫県・北播丹波ブロック市町保健師協議会・研修会で、「災害時の避難所の衛生、感染症対策」の講師をつとめました。
・2023年、第54回 沖縄県衛生監視員研究発表会及び研修会で、特別講演「災害時・避難所の衛生対策について」の講師をつとめました。
・2022年、国立保健医療科学院、令和4年度 住まいと健康研修で「災害時の公衆衛生活動」(オンライン)の講師をつとめました。
・2022年、東京都特別区職員研修所、令和4年度専門研修「地域保健」(主に保健師対象)で、「災害時の避難所の衛生・感染症対策、保健所・環境衛生監視員の視点から」の講師をつとめました。