環監のためのレジオネラ症対策【入門】日向サンパーク温泉事故20年①
【環監の視点】
報告書の汚染原因の推定に目をとおすと、当時の施設が、衛生管理の知識・技術が十分ではなかっただけではなく、公衆衛生の現場の公衆浴場で、利用者の命・健康を守るという根本の意識を感じられないように思えました。
2022(令和4)年5月下旬、月刊『公衆衛生情報』6月号(一般財団法人日本公衆衛生協会)の原稿で、「公衆浴場施設でのレジオネラ症集団発生事例」を書きました。
20年前の2002(平成14)年に宮崎県日向市で起きた、日向サンパーク温泉「お舟出の湯」レジオネラ事故を振り返り、今後のレジオネラ症対策を考える内容です。
私と日向サンパーク温泉とは、一つのつながりがありました。
過去に、私は、2回、見学する機会がありました。
設備と衛生管理のすばらしさに驚きました。
私が描いた一つの思いがありました。
わが国最大の事故施設でありながら、その後、衛生の面で再生した温泉施設を、全国の保健所・環境衛生監視員のみなさんに自分の目で見てほしかったのです。
原稿の冒頭で述べたように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響がなければ、2020(令和2)12月に、私は、日向サンパーク温泉施設で現場研修会を開催する予定でした。
今回は、数回にわたり、20年が経つ日向サンパーク温泉レジオネラ事故を振り返り、今後のレジオネラ症対策を考えることにしましょう。
1回目は、事故がどのようなものだったかを振り返ります。
2002(平成14)年7月の施設のオープン当初に集団感染が発生しました。
疑い患者を含めて295人の利用者に健康被害があり、うち7人の方が亡くなられました。
私が驚いたのは、浴槽水のレジオネラ属菌検査で最大150万cfu/100mLの菌が検出されたことです。
『レジオネラ症防止指針 第3版』では、100cfu/100mL以上で患者発生の複数の事例が挙げられています。
私の経験でも、患者発生のときの浴槽水の菌数は100cfu/100mLのオーダーでした。
ですから、その1万5千倍の値がどれほど高いかの想像がつきました。
宮崎県が作成した報告書では、汚染原因の推定がされています。
主な点は、次のとおりです。
①源泉タンクの適切な清掃や消毒などの衛生管理が不十分だったこと。
②高温タンクの温度管理が不十分で、設定された58℃以上の温度を維持できなかったこと
③浴槽水の残留塩素濃度の測定が適切に行われなかったため、消毒に必要な塩素濃度の維持ができていなかったこと
【環監の視点】
報告書の汚染原因の推定に目をとおすと、当時の施設が、衛生管理の知識・技術が十分ではなかっただけではなく、公衆衛生の現場の公衆浴場で、利用者の命・健康を守るという根本の意識を感じられないように思えました。